癌の治療成績が以前とは比べものにならないほど上がって来ているとしても、やはり根治療法の出来ない患者は居ます。でも、抗がん剤も進歩していて、そのような患者が以前と比べてずっと長生きして居るなあと実感しています。
それでも、癌と診断され、もはや根治療法が不能と言われれば、藁にもすがりたくなるのが人情でしょう。そのような人に高額で藁を売りつけるあくどい商売がまかり通っています。このような商売は単に効果のないものを高額で売りつける詐欺と言うだけでなく、患者を有効な医療から遠ざけると言う意味でも悪質なものです。今回、それを取り上げた2010年12月28日付朝日新聞朝刊の記事の該当部分を紹介します。
ホメオパシーだけじゃない 民間療法規制に壁
◇ 「香りの水」信じて医療拒否 ◇
効果が証明されていない民間療法は多い。国民生活センターには2001年度以降、健康食品の苦情や相談が年間1万数千件寄せられている。
昨年10月に肺がんが見つかった神戸市の女性(61)は「もって2年」と診断された。代替療法の本を書いた福岡県の開業医を受診。「抗がん剤は要らない。3カ月で治る」と、植物の香り成分を入れた水を勧められた。信じて通常の医療を一切受けなくなり、1本0・5リットルが2万円の水を毎月26万円分購入。今春、脳への転移が分かった。
闘病中の女性は「命がけだったのに許せない」と憤る。開業医は取材に「治るとか抗がん剤が要らないなどとは、言っていない」と話した。
販売会社の幹部は「顧客は全国に3万人。米国でエイズやがんへの効果も証明済み」という。
指の開き方で、病気を診断するという療法もある。助手が診断用のカードと一緒に患者の患部を触り、もう片方の手の指で輪を作る。診断者がその輪を引っ張って開けば、がんなどの病気がわかるという。がんの刺激が脳に伝わり、指が開くというのだ。
この療法をめぐり、国民生活センターには「歯科医に『肩こりの原因は金属アレルギー』と、治療済みの銀歯を抜かれ、かみ合わせが悪くなった」「『心臓が悪い』などと、高額な布団やネックレスなどを売りつけられた」といった苦情が寄せられている。
療法を広める協会創始者は「効果は証明済み。著名な医学誌に効果を示す論文が掲載された例はないと思うが、一般の医者が原理を理解できないからだ」と主張した。
我々がいくらネットで警鐘を鳴らしても世の中にはなかなか伝わりません。ホメオパシーの時にも感じましたが、やはりマスメディアの威力は絶大です。今回の朝日新聞の記事は、グッド・ジョブです。
ここで紹介したインチキ治療以外にも怪しげな免疫療法やキノコ関係などもありますが、記事では触れられていません。記事にあるような分かりやすいインチキではないからでしょうが、関連する本の広告が朝日新聞にも載ることがあることと関係があると言われるのも辛いでしょうから、こうした良質の記事を書いたのを良い機会として、関連業界と手を切ることを望みます。