むかし、あるプロ野球の球団の外国人監督が好成績を残したのに解雇されたときに、日本人が本音と建て前を使い分けることを揶揄して「骨と畳に負けた」と言ったことがあったような記憶があります。一応建前としてルールを決めたりはするけれど、実際の現場では別のルールで仕事をこなすという職場は少なくないのかも知れません。でも、リスクマネージメントの面では、それでは困るのです。
医療安全室がいくら医療事故を防ぐシステムを組もうとしても、手順を無視されては目的を達することは出来ません。たいていはそれでも問題なく仕事をこなすことは出来るのでしょうが、悪条件が重なったときに、やはり事故は起きます。建前であるルールを無視して実際に事故が起きれば、さすがに責任を問われても仕方がないでしょう。
ルールを無視するのであれば、それなりの覚悟をもつ必要があります。以下の記事の当事者は、それだけの覚悟があったのでしょうか。この症例は事故が無くても重症化していた可能性がありますが、人為ミスに由来する事故が起きた以上、重症化の原因がミスによるものだとの見方を覆すのは困難でしょう。もちろん緊迫した状況で時間的余裕がないことも分かります。でも、名前と血液型の確認なんて、数秒で出来ることです。
輸血ミス 男性患者重症、大阪市大病院でパック取り違え
2011年1月26日 提供:読売新聞
大阪市立大付属病院(大阪市阿倍野区、原充弘院長)は25日、血液型B型の男性患者(50)に、誤ってA型の血液製剤を輸血した、と発表した。看護師(22)が別の患者の輸血パック(280ミリ・リットル)を保冷庫から取り出し、輸血前にも別の看護師(26)が氏名などのチェックを怠っていた。男性は重症で、同病院は大阪府警阿倍野署と近畿厚生局に報告。近く、外部委員を交えた事故調査委員会を設置する。
男性は肝硬変と糖尿病などのため、14日に別の病院から転院。18日午後、結腸の静脈瘤(りゅう)の治療中に下血し、輸血が必要になった。看護師が保冷庫から輸血パックを取り出す際、パックが置かれた棚を間違え、別の患者のパックを持ち出した。
同病院のマニュアルでは、輸血開始前に、パックと患者の手首バンドのバーコードで本人確認を行うよう規定。バーコード確認できない場合、パックに記入した患者の氏名と血液型を確認する必要がある。しかし、パックを受け取った別の看護師は、コンピューターの動作が遅かったためバーコードと目視のいずれの確認も怠り、午後3時40分に輸血を開始した。
午後4時すぎ、パックを取り出した看護師が取り違えに気づき、輸血を中止。男性には赤血球が破壊される溶血反応が現れ、集中治療室で治療を続けている。
原院長は記者会見で、「患者、家族にご迷惑をかけ、心からおわびする。再発防止策を早急に作成、実施したい」と話した。