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2012.02.23
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カテゴリ:暮らし
 「錯覚の科学」と言う本があります。内容は、人間の認知機能のいい加減さや、自信の裏付けの脆弱さを示したものです。明らかに異質で目立つ存在が見えなかったり、9.11多発同時テロのような大事件の際の記憶がでたらめだったり、現に話している相手が入れ替わっても気づかなかったりする実例が示されています。

 もちろん誰もが存在するものを見ていると思っていますし、自分の記憶は正しいと思っています。話している相手が別人に変われば、当然気がつくとも思っています。心理学の講義で実例を示されても、納得しない学生も多いようです。その納得しない学生も、あっさりと騙されます。

 認知機能のテストでは、「見えないゴリラ」が有名です。これは半世紀ほど前から行われている実験で、二チームに分かれてバスケットボールのパスをしている動画を見せます。そして、片方のチームのパスの回数を数えるように指示します。

 動画の途中では、ゴリラの着ぐるみが登場し、胸を叩いた後に退場します。動画が終わり、パスの回数を答えたところで何か変わったことはなかったかを訪ねます。ゴリラに気づいた人は半数くらいと言うことです。

 ネット上には同様の動画がいくつかあります。必ずしもゴリラとは限りませんが、何か出てくることは分かっているのですから気がつくと思いきや、画面が見にくかったり、パスが速かったりする場合には見逃しました。また、ゴリラに気をとられると、パスの回数を正確に数えられませんでした。

 パスがゆっくりで画面も見やすいサイトではパスの回数も正確でゴリラの登場も確認できたのですが、そのほかに二つ変化があったのに気がつきませんでした。私がこのようなブログを書いてミスをした人を擁護しているのは、自分の認知機能に自信がないからかもしれません。皆さんも試してみませんか。

http://www.break.com/index/awareness-test.html
http://www.youtube.com/watch?v=nkn3wRyb9Bk
http://www.youtube.com/watch?NR=1&feature=endscreen&v=1D07neiB7HI
http://www.youtube.com/watch?v=LmnXHYLgp8w&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=vJG698U2Mvo&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=IGQmdoK_ZfY&feature=related

 自分で試すことはできませんが、話し相手のすりかわりはこちら。
http://www.youtube.com/watch?v=38XO7ac9eSs
http://www.youtube.com/watch?v=4-HxtKgKrL8&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=X0PHp-UbHdY&feature=related
相手の性別が変わったり人種が変わったりするケースもありますが、本当に気がつかなかったのだろうか。

 人間の認知機能がいい加減という話だけではなく、自信には裏付けがないと言うこともこの本は示しています。何かあれば気がつくはずだという思いこみも誤った自信ですが、それ以外の能力に対する自信も危ういものです。

 チェスには厳密な順位付けがあるそうなのですが、多くのプレイヤーは自分の順位はもっと高くて当然だと思っています。でも、客観的な実力は順位付けの通りです。私の実感でも、多くの医師は他の医師よりも能力が高いと思っています。医療事故は能力の欠如によって起こり、自分なら起こさないと考える医師は結構います。

 この本を読むと、裁判というものがいかに危険か分かります。気づいたはずだという思いこみ、証言(記憶)の信憑性、私なら出来たという観点からの鑑定、どれも実際には危ういものだからです。

 それなのに客観的な物証や科学的なデータを重視することなく、誤った判断をすることはしばしばあります。もちろん本の中でも冤罪の実例を挙げて論証しています。事故や犯罪の調査に関わる人はもちろん、様々な権限を持つ人にとって、必読の書だと思います。





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Last updated  2012.02.23 17:47:52
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