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医療報道を斬る

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2012.04.21
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カテゴリ:医療
 日本の救急医療の多くは宿直医によって行われている「なんちゃって救急医療」です。特に救急医療に詳しいわけでもない医師が、当日の勤務の引き続きとして宿直し、翌日も平常勤務する状況での救急医療です。あまり多くを求められても困るでしょう。もちろん国民からしたら「もっと救急医療を充実させろよ」と思うでしょうが、医療体制を整えるのは政治家の仕事であって、医療現場の仕事ではありません。そもそも宿直医に救急患者を診させること自体労働基準法違反なんですけどね。

 そんななか、救急車で何も問題のなさそうな患者が搬送されてきて、本人に聞いても何が起きたのか分からず、救急隊員の報告でも「小銭を落としたらしいんです」くらいの情報だったら、どうするでしょう。切迫感を感じられないとき、重大なことだと考えられないことは往々にしてあります。以下の事例がそうだったとは限りませんが。

損賠訴訟:70代女性の脳梗塞前兆見落とし、医療法人に440万円賠償命令--福岡地裁

◇当直・主治医、専門外でも「発症防げた」
 医師が前兆症状を適切に診断、治療しなかった結果、脳梗塞(こうそく)を発症して後遺症が残ったとして、福岡市の70代女性が同市西区で病院を開設する医療法人に8053万円の損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁(増田隆久裁判長)が医療法人に440万円の支払いを命じたことが分かった。医師は脳梗塞の専門医ではなかったが、判決は「前兆症状の診断基準を認識し、適切な治療を開始しておけば、発症を防げた可能性がある」と過失を一部認めた。

 原告側代理人の緒方枝里弁護士は「脳梗塞の前兆症状について、専門医でなくても、一般的な医学文献に記載された事項は認識して診断すべきだとした判断で、全国的にも珍しい」としている。

 判決は3月27日付。原告、被告双方が控訴せず確定した。

 判決によると、女性は09年3月、飲食店での支払時に左手で小銭をつかめず何度も落とすなどの異常が見られ、店員の通報でかかりつけの病院に救急搬送された。女性は脳梗塞の前兆とされる一過性脳虚血発作(TIA)が疑われる症状だったが、病院の当直医は脳卒中は専門外でTIAではないと判断。翌日、主治医も専門は循環器科で同様の判断をした。女性は2週間後に脳梗塞を発症し、手足のまひなどの後遺症が残った。判決は「医師の知識不足が原因で、詳細な問診などが行われず、診断を誤った」と判断し、慰謝料などの支払いを命じた。【遠藤孝康】
毎日新聞 2012年4月17日


 飲食店の店員は「ただごとではない」と感じたのでしょうし、救急車を呼んだのはGJと言えるでしょう。でも、おそらくは救急車には同乗していないですよね。そうすると、一過性脳虚血発作(TIA)の症状から回復して無症状の患者と、又聞きで切迫感に乏しい救急隊員の報告だけが残ることになります。後からならなんとでも言えるけど、切迫感を感じなかったらTIAとは考えなかったかも知れません。他の報道によれば、このときの当直医の専門は消化器だったようです。

 ここで気になるのは主治医の存在です。主治医は循環器科ですから、脳梗塞に関してはかなりの知識があるはずです。もちろんTIAについてもよく知っているでしょう。なぜなら、心疾患を原因とする脳梗塞があるからです。

 もし、救急外来受診の翌日の診察時に十分な情報を得ていながら座視したのであれば、これは問題かも知れません。病院側が控訴しなかったのは、賠償金額が請求額の5%ほどで実質勝訴とも言える内容だったこともあるでしょうが、ここら辺りを突っつき回されたくなかったこともあるのかも知れません。私自身は十分な情報が主治医に伝わっていなかったと思っていますが。
 
 今回は毎日新聞を引用しましたが、共同通信の方だとTIAであることが書かれていません。そうすると、最初から脳梗塞が続いていたのを2週間後に他の病院で診断されたのだと誤解する人がいます。と言うより、誤解させようとしているとしか思えない書き方ですね。





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Last updated  2012.04.21 14:41:04
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