不治の病の終末期、もう意識もなく、生命維持のためには人工呼吸などの介入が必要となることは普通にあります。意識だけでもあれば、本人の希望を訊くことも出来ますが、いずれにせよ、一度人工呼吸を始めてしまったら、後から外すことは、少なくとも日本では不可能です。
回復の見込みがないときには人工呼吸を拒否するという意思表示をしていても、人工呼吸をしなかった医師が免責されるとは限りませんが、まあ、実際に罪に問われることはないでしょう。
死が差し迫っていても、濃厚な治療をすれば、かなりの期間生命を維持することは可能です。
でも、医療者から見ても、あまり望ましい姿には見えません。
これば、家族から見ても同様ではないかと思います。
でも、人の考えはそれぞれですから、やはり本人の希望が一番大切です。
とは言え、実際に死が差し迫ったときには意思表示できないことが多いでしょう。
ですから、前もって意思表示をしておいた方が良いのです。
延命治療を拒否するように強要するのであれば問題ですが、意思の確認に問題はありません。
意思表示の前に十分な情報を提供せよとの意見であれば理解できます。
でも、以下の記事で反対している人たちは、見当外れな被害者意識にとらわれているように見えてしまいます。
私はもちろん、すでに意思表示は済ませています。
妻がその通りにしてくれるかどうかは分かりませんが。
「延命治療諾否」冊子が物議 京都市配布に抗議も
京都新聞 4/24(月) 9:00配信
京都市は、人生の終末期の医療に備えて自らの希望をあらかじめ書きとめておく「事前指示書」を市民が作れるよう、関連リーフレットと併せ、各区役所などで4月から配布を始めた。人工呼吸器をはじめ、胃ろうなど人工栄養法や看取(みと)りの場所といった希望を事前に医師や家族らと共有する目的だが、終末期医療に詳しい医師や法律家から「人工呼吸器を使って生きる選択を難しくする」と撤回を求める声が上がっている。
市の事前指示書はA4判1枚で、リーフレット「終活」とともに3万部を配布している。意識のない状態や重度認知機能低下の場合、「家族に延命治療の判断が求められる」とし、胃ろうや「延命のための人工呼吸器」、点滴による水分補給、最期を迎えたい場所など計10項目について希望する・しないなどを選択式で記す。「法的な拘束力はなく、内容はいつでも修正・撤回できる」と注釈を付ける。
「尊厳死法いらない連絡会」の冠木克彦弁護士は「市の配布に大変ショックを受けている。事前指示書の押しつけは、差別や弱者の切り捨てにつながる。尊厳死や安楽死思想と同じ流れだ。胃ろうや人工呼吸器を使って長く生きる人はおり、生きている生命にこそ価値がある」とし、市に近く抗議文を出す構えだ。
終末期医療を巡っては、治療の不開始(尊厳死)を書面で意思表示した場合、医師が殺人罪や自殺ほう助罪などに問われることを免責する法律はない。終末期の定義もあいまいだ。尊厳死の法制化を求める動きもあるが、日弁連は「終末期における医療・介護・福祉体制が十分に整備されていることが必須」で時期尚早とし、日本医師会も慎重意見を表明し、国レベルで決着が付いていない。
■病状説明なしあり得ぬ
厚生労働省の「終末期医療に関する調査等検討会」委員だった川島孝一郎医師の話 意思決定には十分な情報提供が大事。病状と介護支援の説明もない「事前の指示」はあり得ず、京都市のパンフレットは厚労省の終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインと矛盾している。胃ろうで暮らす人への生活支援情報もない一方、「延命治療」など使うべきでない言葉もある。国で決定されたもののように誤解を与える。
■行政が旗振りに違和感
難病や終末期医療に詳しい国立病院機構新潟病院の中島孝院長の話 事前指示書に関し、行政が旗振りするのは違和感がある。「患者のため」「命の尊厳のため」という言い方をするが、実際には医療費削減や家族の負担軽減のため、治らない患者の治療をしない、社会全体で延命させない流れを加速させかねない。患者から医師に一方通行の事前指示書を用いる前に、患者と医師がまず十分に話し合う事が必要で、対話で作りあげる事前ケア計画の導入の方がましだ。