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カテゴリ:変則書評:『ローマ人の物語』
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塩野七生著『ローマ人の物語』(8) ユリウス・カエサル ルビコン以前(上)(新潮文庫) 読破ゲージ: ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ *********************************************************** 借金だらけ、女たらし、出世コースからは程遠い道を、非力な名門貴族の期待の星・カエサル驀進。目指すは、動脈硬化し現実への対応力を個人に委ねるしかなくなっていた、皮肉な“元老院制”の解体と、帝政の実現。一つの目的のために行動しない男。すべからく、カエサルの私益は公益に向けられていることを、同じ時代を生きた人たちは知らない。一日の計が、百年の計を決めることを。だとしても、あまりに平凡、あまりに絵にならない三十年。この男は、四十にしてようやく起つのだから、民衆も読者も我慢を強いられる。青年期には、権力とは無縁の職を歴任するが、単に空席を狙ったのではない。大事の前の布石として、むしろ空隙を狙ったといえる。キケロ、大ブレイク。振り返れば、今の世の中は、小キケロや小小カトーが多すぎる。トーガの独りよがりが国政を左右している。どうも昔からキケロは肌に合わない…と学生時代を思い出す。カエサルの金と女。週刊誌のタイトルみたいだ。カエサルは、「強い債務者」となって債権者さえも動かした、と。やって良いことと悪いことがある、と思うのは凡人だからか。お盛ん・カエサル、モテモテの秘密は、「関係したどの女性にも恨まれなかったこと」。参考になるのかどうか。ところで、幼児における母親の愛情が、バランス感覚とゆるぎない絶対の自信を育むと著者はいう。なるほど、母の愛なくして本物の大器は育たないということか。虚仮おどしの張子の虎の過信には、母の愛が不足している。いよいよ、内なる巨大・猛獣ポンペイウス、帰国間近。(了) ローマ人の物語(8) ■「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/09/26 03:50:28 PM
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