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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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カテゴリ:映画/エンタメ
 メルヴィル・プポー×ジャンヌ・モロー、フランソワ・オゾン監督作品『ぼくを葬る』をDVDで観ました。死生観が一つの私のテーマなので、関心があったのですが、ようやく観ることができました。
この手の作品としては非常にユニーク、というのが一番の感想。その点、この作品につけられた国内流通向けのコピーはまったく的外れなんです。まずもって、余命三ヶ月の主人公、よくある映画のような“残り時間の使い方”はまったくしません。し忘れたことをしたり、人のために尽くしたり、人生を最後まで謳歌する、というような話じゃないんです。
この独自の描き方の根本にあるのはただ一つ、主人公は「自己開示しないで死ぬ」ということ。
 はっきり言って、ここまで自分本位な死に方もあるのか、と。ただ、ただ、淡々と、死にながら傲慢に赦したり赦されたりしながら、主人公は自分本位に死ぬ。フォトグラファーである主人公が、生きていたときの証に、愛おしい風景を切り取るようにスナップを撮影したり、不妊症の夫婦に協力したりするのも、全然意義や博愛主義的な善意を感じさせないんです。ガンと告げられ、仕事も順調な男盛りに余命を三ヶ月残すのみとなった主人公の最期は、静かだけれど独善的。
 ではそれが嫌らしいかといえばそうでもないんです。実はすごく深い。ヒューマニズムに寄らない分、かえって肩肘張らない、聖者でも人格者でもない、また死ぬまでに善人になっておきたいなどという欺瞞も似非の償いもなく、これは実は、ある意味、肩の荷の軽い死に方かも知れない、とさえ思えてくる。と同時に、この主人公のような境遇にいなくても、突然死を告げられれば人間誰しも、どこかで「諦めの境地」「もう何をしても虚しい」「絶望」という気持ちと無縁でいられないのではないか、むしろその方が正直で自然だったりもするのではないか、という気もするのです。確かに、人間が人間である以上、たとえその病は癒えなくとも、命ある限りひたむきに生きなければならない。でも、そうした価値観も人間が作り上げた幻想の一種でもあるわけで、一方では、頑張らないで生命の終焉に身を任せる、その方が本人にとっては苦痛がないのではないか、という視点を携えることも、実はこれからの死生観(裏を返せば生き方であり、病や医療に対するスタンスでもありますが)にはある方がいいのかもしれない、という気がしたのです。
 家族にさえ病を明かさない=見守ることを強いたくない、という主人公の選択は、ドライだがストイックで潔く、同時に遺された者を完全に無視した、つまり関係性を拒絶した死に方で自己中心的な死生観。そう切り捨てることは簡単です。鑑賞者の殆どはおそらく、つけられたコピーが連想させる“余命モノ”に期待する感触は完璧に裏切られることになりますが、この個人主義が最高に達する境地とも言える死に方=葬り方には、得てして無意識的に入り込みそうになる、実は相当に自分本位で独りよがりな欺瞞は招かれていません。どちらが「本当に人間らしい死に方」なのか。その答えはないけれど、少なくともこの作品は、一般常識が締め出してきた選択肢を提示していると思います。(了)


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「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2008/12/29 12:57:46 AM
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