832555 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

快筆紳士

快筆紳士

Calendar

Recent Posts

Category

Archives

2024/09
2024/08
2024/07
2024/06
2024/05
2024/04
2024/03
2024/02
2024/01
2023/12
2009/01/13
XML
テーマ:お勧めの本(7342)
***********************************************************
塩野七生著『ローマ人の物語』(30)
       終わりの始まり(中)(新潮文庫)

読破ゲージ:
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

***********************************************************
立派な人物が、仕事面でも立派な業績をあげるとは限らないところに、哀しみがあるとは筆者の言。マルクス・アウレリウスの時代とはそういう時代。ローマ式を受け容れるならば民族の差異は不問、の伝統を受け継ぐマルクスの治世に、ロンゴバルド、ゴート、ヴァンダルらの滅亡の喇叭が吹き荒れる。陣頭指揮を執ったゲルマニア戦役も、本来が思索的なマルクスの戦争、円柱に模様が残るも、トライアヌスの円柱とは天地の差。リアルであるよりパセティックなマルクスの円柱は、過剰なパトスによる、政治、軍事、芸術における失点と。ドナウ河ではエジプトでの暴動の報。属州総督アヴィディウス・カシウス、三年後には、終わりの始まりの決定的な火種となる男、見事これを平定。一方で、記録少ないゲルマニア戦役では、『グラディエーター』“マクシムス”ことヴァレリウス・マクシミアヌスが大活躍で、皇帝直々に軍功を褒め称えた、と。公平を期すことを最優先した完璧主義の治世は頑健ではないマルクスの健康を消耗させた。侍医ガレヌスは、高名なる秘薬「テリアク」=「オピオン(アヘン)」入り特別調合薬を服用するまでに。ユリウス・カエサル『ガリア戦記』の持つ明るさが、“悲壮漢”マルクスには欠けていたのだ。そして、アヴィディウス・カシウスが皇帝を名乗って謀叛を起こす。それも、マルクス死すの誤報を受けて、幼いコモドゥスよりは、との念からの勇み足で。誤報と知っても後には引けないアヴィディウス、かつてのマルクスの学問上の後輩であり、実力でキャリアを重ねた才気溢れる男、ブリリアントな人間に耐えられないのは平凡な出来の人間に使われること、“上司”ポンペイアヌスとの明るい未来が描けなったからか、四十路、男盛り。これには迅速に動いたマルクス、憂国の武人マルティウス・ヴェルスの処置で被害最少にて謀叛鎮圧。争い好まぬマルクス、さらなる内乱の可能性を回避したく、世襲を決意。息子コモドゥスを、事実上の共同皇帝に。内憂を抑えていよいよゲルマニア戦役に終止符を。第二次ゲルマニア戦役開始。ここでもヴァレリウス・マクシミアヌス鬼神の働き、活動範囲はドナウの北120キロと大奮闘。が、戦役二年目、まさに雌雄を決そうとしていた矢先、皇帝マルクス病に倒れ、返らぬ人に。皇帝コモドゥスを守り立て、ゲルマニア戦役を早く終結せよと遺して。享年59歳、19年の治世。戦争嫌いの皇帝の19年は戦争に終始した皮肉。しかし、コモドゥスの治世こそ歴史家カシウス・ディオが言うように「帝国にとっての災難」。そして謎は、なぜ哲人賢帝は悪帝を後継者に選んだのか、に尽きた。いや、それしか選択肢がなかったのだ。不出来だからこそ、実力主義の可能性を残せば内乱になる。早速、当のコモドゥスがゲルマニア戦役終結を宣言。父の悲願は長期的視野の欠如した安直な講和により幕を閉じる。結果論ではあるが、実はこの判断が、はからずも、少なくともドナウ河での60年に及ぶ平和をもたらすことにはなるのだが。剣闘士との実戦好きな凡人皇帝コモドゥスを豹変させたのは帝位に就いて2年、コモドゥスが慕う実の姉ルチッラ、コモドゥスの妃クリスピーナ懐妊の報に、自らの存在意義の希薄化を疑って皇帝暗殺を計画。かつて、皇帝の娘として皇后陛下の尊称を受けたルチッラ、今では司令官ポンペイアヌスの妻でしかなければ、元老院出身でしかないクリスピーナの部下の妻に格下げされることに我慢ならず。杜撰な陰謀は失敗。だが、コモドゥスには消えない傷を心に植えつけた。父が息子に残した優秀な人材はコモドゥスの猜疑の眼を免れず、粛清はまた元老院の反発を買う。閉じこもった皇帝に代わって近衛軍団長官ペレンニスが帝国を取りしきる。もともと元老院に成り上がり扱いされてきたペレンニス、その仕返しか、5年にわたる実質的統治は元老院軽視主義。これゆえの元老院の反ペレンニス感情を利用して「ペレンニスに叛意あり」と解放奴隷クレアンドロスに吹き込まれた皇帝、ペレンニスを殺害。以後、クレアンドロスが側近政治。クレアンドロスの操り糸は、二度目の皇帝暗殺発覚をお膳立て、これによりマルクス・アウレリウスの有能なる娘婿たちが一斉に粛清される。家庭内の悲劇。皇帝の暴走にチェック機能が働かないほどに元老院も弱っていた。果ては皇帝の陰で私腹を肥やすクレアンドロスに「元老院の父」なる称号を贈る始末。それでも機能はし続けたローマ帝国、その礎がいかに磐石であったか。が、4年の泰平も民衆のデモによりクレアンドロスは殺害される。逃げるように剣闘試合に熱を上げる孤独な皇帝、ついに暗殺さる。理由も動機も謎。31歳の生涯も、治世は12年に及んだ。史上三人目の記録抹殺刑。正統性(レジティマシー)ならば備えていたコモドゥスの死により、実力主義、帝位をめぐっての群雄割拠、つまりは将軍たちの時代へと推移した。(了)


ローマ人の物語(30)

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009/01/14 12:20:13 PM
コメント(0) | コメントを書く


Comments

プラダ バッグ@ gpzqtt@gmail.com 匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_…
バーバリーブルーレーベル@ uqafrzt@gmail.com お世話になります。とても良い記事ですね…
バーバリー マフラー アウトレット@ maercjodi@gmail.com はじめまして。突然のコメント。失礼しま…

Favorite Blog

ペンギンの革人形を… New! 革人形の夢工房さん

新・さすらいのもの… さすらいのもの書きさん
価格・商品・性能比較 MOMO0623さん
抱きしめて 愛の姫.さん
天使と悪魔 ♡ り ん ご♡さん

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X