バベルの図書館－或る物書きの狂恋夢

　スパナチュ、第5話、第6話、行きます。第5話『グリム童話殺人事件』。これはもう、最初から最後まで、「これぞスーパー・ナチュラルっ」的なお話。しばらく、大きな筋で走ってきたこの作品ですが、この第5話で、改めてディーン&サム兄弟が本当に取り組んできた仕事とは何か???みたいなもの、思い出します。
　ニューヨーク州の小さな町で、起こる奇妙な事件。「お前、それ少女趣味の発想だぜ」とディーンに笑われながらも、この一見共通項のない猟奇事件のモチーフに、グリム童話の存在があることを感じるサム…。聞き込みで訪れた病院で出会った医師の、昏睡のまま成長する娘・キャリー（うわぁ）と、何か関係があるのか?そういえば、事件の傍らには雪のように透き通った肌の少女、そして医師が、眠る娘に毎日欠かさぬ罪滅ぼしが、グリム童話の読み聞かせ…。おとぎ話を聞かせる度に、キャリーの霊が飛び出して、事件を起こしてはこの世での怨みを伝えようと、人を操り事件を起こす。果たしてその怨みとは???怨みを聞き届け、許しを請い、愛を伝えた医師の前で、娘が息を引き取ると、少女の霊もまた風のように消えていった…。
　とまぁ、しみじみさせるイイ話。作中でディーンがセルフ・突っ込みしてるように、まさに『シックスセンス』の世なんですけど、このあたりの霊との関係もまたスパナチュの魅力なのでして。最近霊じゃなくて悪魔相手ばっかりだし。。。ところで、「三匹の子豚」モチーフにされたポッチャリ三兄弟、あまりにも可哀相だ（涙）。「ヘンゼルとグレーテル」モチーフのお婆さん、貴女が今までのエピソードで一番怖かった登場人物デス。「赤ずきん」モチーフの狼さん、『X-MEN』映画化でかつてウルヴァリン候補に挙がっていたダグレイ・スコット（MI2の方ね）似なんですけど、意味はないですよね。あ、ウルヴァリンは狼男じゃないしね、どっちにしても。そして気になるのは、この第5話でディーンとの約束を破って悪魔とディーンの契約を反古にしようと交差点の悪魔に掛け合うサム、凶暴です。迷いなし。悪魔が相手だからか。それとも…。
　第6話『幽霊船』。これはトンデモなくクラシカルなモチーフを持ってきたなぁ。シャワールームで“溺死”した女性。彼女が死の前に見たのは、幽霊船。ところでこの町、37年周期で幽霊船が目撃されているという。そして今度は、幽霊船を見た兄弟が、それぞれバスタブと車の中で溺死する。その場にいながら救えなかった落胆のディーン&サム兄弟。この二人をかき回すのが、またも登場元ハンターのベラ。当然ワケありで兄弟に協力するベラだが、彼女もまた幽霊船を目撃してしまう。そして、この犠牲者たちには“家族殺し”の共通点があることが明らかになる。プライドを捨て、救いを求めるベラ。ならば、ベラにも不吉な過去が???真相は聞けないまま、幽霊に遭遇するベラ。彼女を溺死から救おうと闘うディーンとサムの前に現れたのは、弟を殺した船長の霊と、兄に37歳で殺された船員の霊。兄の霊が許しを請うも、二つの霊がぶつかり合って…。
　こちらはヘビーな伏線も匂わせるエピソードなんですが、実は結構笑えてしまう。なんといっても可笑しいのが、生真面目なサムにぞっこんホレ込んだベラのクライントの老婦人。なかなか積極的なアプローチにたじろぐサムとの掛け合いがなんとも…。あるいは、パーティに招かれたフリをして事件の鍵を握る「栄光の右手」（手だけに、鍵、握ってるんだ…）を盗みにいくシーンでは、ディーンとベラが接近するようなしないような。結局、まんまとお宝は盗まれるんですけど（→で結局盗んだベラが事件に巻き込まれるのは今回も同じパターン）。なお、このエピソードには聖書における「カインとアベル」の物語がシーケンスとされているようですが、個人的には、物語の展開やスピード感に押されて、そのあたりのテーマの絡みは消化不良かな、なんて思いました。しかし、サムに肩入れする女悪魔ルビーといい、このベラといい、準レギュラー化してません???（了）


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■「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です：『何のために生き、死ぬの？』（地湧社）。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。