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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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カテゴリ:映画/エンタメ
 久しぶりに、劇場公開間もなく大作を劇場で。『天使と悪魔』。うん、前作『ダ・ヴィンチ・コード』より格段に面白い!!原作の面白さを、きちんと映画の面白さにまとめあげているという印象。ロン・ハワード監督もトム・ハンクスも、突如として話題となった小説の呪縛から自由になったような、のびのびした感じを映画から受けました。まぁ、『ダ・ヴィンチ・コード』の時は、あれだけ売れて話題になって、それほど時間の経っていない小説を映画化するというのは、プレッシャーもあったでしょうし、勇気も必要だったのではないかと。
 話題のみならず、議論まで生んだ小説の映画化だからと小難しくする必要はないワケで。今回、“映画には余計なバックグラウンド”を大きく削いだ(ついでにトム・ハンクス、お肉も削ぎましたね、前作より)ことで、スピード感が何倍も高まっています。
 ただし。この『天使と悪魔』。完全にユアン・マクレガーに持っていかれましたねぇ。原作を読んでいる人は、当然ユアンの役はおいしい、とご存知なワケですが、改めてスクリーンで観ると、見事にやられました。ナイーヴで知的で、イノセント。だからこそ、内に秘めた焔は何にも増して熱く、激しい。そんなあやうい正義感は、少年のような雰囲気を滲ませつつ(実年齢からすれば、スゴいことです)熱演したユアンにピッタリ。法衣を着たカメルレンゴことユアンのほっそりとした姿は、『スター・ウォーズ』EP1のオビ=ワンに見えてしまうのですが(苦笑)。
 一番好きなシーンは、ヴァチカンのアーカイヴへの入室許可を巡って、ラングドン教授=トム・ハンクスと、カメルレンゴ=ユアン・マクレガーが、少ない台詞で多くを語り合う問答シーン。ラングドンの回答も深長だし、察したカメルレンゴの決然としたまなざしがいい。
 そもそも、同じ娯楽性を語るのでも、映画と小説では方法論が全然違うはず。『天使と悪魔』は、久しぶりに両方が面白く成立した希有な例かも知れません。
 果たして、映画化されてしまえば、逆に原作自体も議論を巻き起こすほどデリケートなものではないワケで、きわめてストレートなエンタテイメントであることがよく分かる(どれだけストレートかといえば、謎を解くまでもなく、すぐにゴールに辿り着けるだろうほどにストーリーはベタ。そこがまたスピーディでいいワケです)し、それが一種のパフォーマンスだとしても、作者のダン・ブラウンは、余計な弁明や説明
の手間は必要なかったのでは。要は、上手く映画化されれば、それが他意のない、よく出来た娯楽であることが一目瞭然となるのです。その点、このシリーズ、もしかしたら正統なインディ・ジョーンズの後継者
ではないか、と。つまり、『天使と悪魔』の出来を見て、実は結構、シンプルにジェット・コースター・ムービーじゃないか、ということがよく理解できてしまったのです。そうなると、ラングドン教授はもう少し若い俳優さんの方がよかったのかなぁ、とその点ばかりはいまだにこだわってしまうのですが…。
 あ、そうそう。冒頭タイアップ企画がコマーシャルで流れましたけど、落ち着きのない『ダ・ヴィンチ・コード』もさることながら、ほとんど同じ土地だけで展開する『天使と悪魔』こそ、“究極の観光映
画”ではないか、とも。なんせ、ストーリーの見せ場である、大きな秘密を宿したそこここは、マニアックな場所は一つもなく、誰でも知っているような名所・建築で、こうした場所を思わせぶちに描いて見せたのは、原作者の巧さと認めるべきでしょうね。
 余談ですが、フィクションと分かっていても、新教皇選出のシーンは、ちょっと胸が熱くなってしまいました。さらに余談ですが、ベルニーニ、好きなんですよ、昔から。日本になくて、海外から作品集を取り寄せて楽しんだのは遠い昔。久しぶりに、本棚から取り出して繰ってみようかな。(了)


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天使と悪魔(上)


天使と悪魔(中)


天使と悪魔(下)

「旅から、音楽から、映画から、体験から生死が見える。」 著書です:『何のために生き、死ぬの?』(地湧社)。推薦文に帯津良一・帯津三敬病院名誉院長。





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Last updated  2009/05/21 03:36:01 PM
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