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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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カテゴリ:映画/エンタメ
 松井久子監督第三作を応援する会・マイレオニーから、待望のニュースレター第4号が届いた。表紙には、“今秋公開予定”と大きく見出しが付けられ、右下にはこの映画のサポーターが3274名になったことが報告されている。
 中面には、やはり“角川映画配給決定”と大きく記され、映画の概要と、マイレオニーという頼もしい「松井部隊」の5年間の支援活動の歩みが掲載されている。何しろ映画は足掛け7年というロングスパンの賜物で、試練に耐えてじっくりと作られて来た作品。それとほぼ並走しているのだから、サポーターの情熱は松井監督にとって、心強いセーフティネットであり、テンションを維持し続けるためのよいプレッシャーであったに違いない。何より、このマイレオニーの仲間たちはパッシヴでなく、“行動する衛星”であった。末席を汚しがら、あまり貢献できていない自分を恥じつつ、この紐帯を牽引してきた皆さんに敬意を表したい。ロケ地となった愛知、札幌、高松での試写会も順次開催されるという、“横のつながり”への心配りの報告も嬉しい。
 さて。本来ならば、ことの直後に書くべきだった記事を、大層時間を空けて報告することになり、これはサポーターとしてはなんとも申し訳ない限りなのだが、少し間が空いたが故に、結果としてスポットで貢献することになってくれれば、とムシの良いことを考えながら記事を書いている。ご容赦いただきたい。
 去る2010年4月3日(土)、東京都港区の草月会館にて、 『レオニー』(主演:エミリー・モーティマー/ウディ・アレン監督「マッチポイント」ほか、中村獅童、竹下景子ほか)の完成披露試写会が行われ、サポーターとしてご案内・ご招待いただいた。まさに、待望。待ちに待っての作品とのご対面だ。
 期待と緊張で会場に赴き、監督の挨拶も終わると、映画『レオニー』は始まった。二つの国に、引き裂かれて両親を持つ試練に挑み続け、ついには越境した表現者として自己を統合するにいたった、激情の彫刻家イサム・ノグチの母、レオニー・ギルモアの印象的な生き様を描いた映画である。時代の風習より己の信念に従った母・レオニー(エミリー・モーティマー)と、挑戦的でありながらヴァルネラブルな感受性ゆえに時代に抗えなかった父・野口米次郎(ヨネ。中村獅童)。
 越境することを恐れぬ女性と、夢見る不実な越境者との間に生まれたことは、イサムが宿命の越境者として生き、その生き様の中で、やがて心の疼きのままにそれをまるごとアートへと昇華していくのは必然ではなかったろうか。
 重ね重ね、構想から7年という歳月を経て、ようやく完成した作品は、日米の実力派俳優を得、また主演二人の息も詰まるような名演合戦に牽引されて、上映時間の長さをまったく感じさせないテンポのよい展開。物語そのもののドラマとしての美しさと監督独自の映像美が巧みに相まって、グローバルでありながら、日本的な「あはれ」への回帰も促す、ポエジー溢れる作品であった。ちなみにこの『レオニー』、日米合作映画で日本人がメガホンを取った初めての作品であり、同じく日米合作映画で女性が監督を務めた初めての作品として、映画史の面からも非常に意義深い、重要な作品となっている。
 私は、第一作『ユキエ』を観ていないのだが、非常にデリケートな内容を扱った第二作『折り梅』を初めて観たとき、「コンセプトがそのままメッセージになっている」というのが松井作品の特徴ではないか、という感触を得た。重厚なメッセージを軽やかに描き出し、伝達するのが「松井節」というわけだ。
 一転、最新作では、コンセプトは作品の全体に太く横たえておきながら、前面ではむしろ徹底的にドラマを描いている、という印象を持った。レイヤーの重ね方が、前作とは違うような気がしたのだが、しかしそれも飽くまで表現上の違いでしかない。やはり、強いメッセージ、ぶれないテーマは、軽やかに、涼やかに、鑑賞を終えた私の心に“吹いて”くる。
 そうだ。松井作品には、いつも「風」がある。作品の中に、波風があり、大風があり、突風があり、時に凪ぎがあるが、最後はいつも、どこか上品な微風が吹き寄せて来る。これらの「風」は、撮影中の試練を象徴しているのかも知れないし、あるいはまた、実際に作品に画(え)としても描かれる。『折り梅』のラストにも、そして、『レオニー』のラストにも。千鳥ヶ淵で撮ったという、憤りや恨み、行き違いや無理解、寄り添えて交わらない運命を隔てたヨネとレオニーの間に吹く風に桜舞う時、何か、羨ましい程の“二人の世界”が立ち現れる(そのシーンの美しさよ!!)。それは、所謂ハッピーエンドにはならないが、別の視点から、相当に洗練されてハッピーであるような気がする。幸福感を喚起する、そよ風がそこに在るのだ。
 Divideされねば越境者になれない。引き裂かれるから、そこに境が出来る。そこを越え、あるいは往来するとき、人はそのアイデンティティを、柔軟でしなやか―あたかも世界中のパスポートを持つような感覚―にできるのだろうか。そうして人はまた、自由で普遍の思想、生き方の美学の奥義に近づく。
 では、Divideされなければ、人は美しく、強く生きられないのか。その心配はない。人間は誰でも、本質的に、どこかでつながりながら、実は断絶している。この断絶を転換し、昇華する者が、やがて越境者としてユニバーサルで欺瞞なき理解に満ちた世界を創り出していくに違いない。
 完成披露試写会の後のパーティでは、舞台挨拶に引き続き中村獅童氏も再び駆けつけ、松井監督を中心に広がった縁は、賑やかに、華やかに宴を盛り上げ、またこの日を迎えるまで、引き下がらず、諦めず、前に進み続けたキャスト、スタッフ、マイレオニーの皆さんが労われた。そして、この日早くも、角川映画の共感を得て『レオニー』は、松井作品としては初めて、全国の劇場でのロードショーが決まっており、それに触れる挨拶では、インディペンデントにこだわり続けた監督の新たなステージの幕開けに、出席者の皆さんの気持ちは、はや公開予定の秋へ飛翔していたに違いない。
 4月は、実に難しいひと月だった。いま、しばし落ち着いた時間を得て、これまで折々でメモしていたことを膨らましたり、投げ捨ててみたりしながら、短い感想にまとめた。改めて、この作品が、一人でも多くの人の心に届くことを願ってやまない。完成、おめでとうございます!!(了)





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Last updated  2010/11/02 02:48:26 AM
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