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カテゴリ:アート
この日曜日、そごう千葉店で開催されていた『四代 徳田八十吉 襲名記念展』に足を運びました。昨夏急逝された、三代徳田八十吉先生は、九谷焼の陶芸家として「彩釉磁器」の人間国宝の認定を受けられ、あの独特の碧、そして“耀彩”で世界観を確立し、世界中で愛され、賞賛されてきた、文字通り“宝”でした。かつて取材させていただくご縁があり、工房まで出かけていき、その多芸多才さ、豪放磊落で飾らないお人柄と生き様(「アートも大事だが、陶芸は日用の美を疎かにしたらいけない」、「日本人が正座から椅子に変わった時点で、伝統も変わらなくてはいけない」といった、地に足の着いた、地位に胡坐をかかない、大御所ぶらないお言葉を思い出します)、三代目としての重圧への苦悩と、それを跳ね除ける情熱と負けん気、そうでありながらどこか飄々とした洒脱な佇まいに惹かれ、また工房の作品群に囲まれ、圧倒されたことを今でも忘れられません。原稿を書いている間も、ずっとあの碧が瞼の裏に結露してしまって、胸騒ぎがしたことを昨日のことのように思い出します。
三代には濃やかなお心遣いもいただき、原稿が完成しますと、「言いたいこと、頭の中で整理できていなかったことを、うまくまとめてくれましたね」と喜んで下さったり、どうしても気に入ってしまった作品を求めましたら、「取材のときに企画中だった碗ができたので」といって、箱書付けて送って下さり、あまりに勿体ないことでしたので、ちょうど米寿を迎えた祖父にそのまま贈りましたと報告したら、とても喜んで下さったり。私などからすれば、あまりに遠い世界の大先生ですので、頻繁にコンタクトを取るということはありませんでしたが、ご縁をいただいて後、短い期間にも私にとって思い出深いエピソードがいくつかあります。最後にお目にかかったのも、やはり千葉で展示会を開いた際のレセプションでした。 三代の長女に当たる徳田順子先生のことは、雑誌などの記事からその活動について存じ上げるのみでしたが、三代の遺志を受けて2010年3月7日、四代徳田八十吉を襲名されたと知りました。 その記念として催された展示会では、それまで私が見知っていた四代の作品とは違い、九谷焼の古典・伝統復活に心血を注いだ二代のトラディショナルなニュアンス、初代・二代を徹底的に学ぶことで独自に編み出した三代の色を、より繊細で理知的にした「官能よりも透明感」を極めた凛とした色づかい、そして四代がこれまで築き上げてきた新しい時代の作風(模様の取り方に独自の世界観が顕著でした)が絡み合い、襲名した時点で、すでに強固な作風・作品世界を持っておられる方なのだな、と感じた次第。三代との出会いやつかの間のコミュニケーションを思い出しながら(四代の新作の中に、三代に捧げた哀悼と誓いのメッセージがこめられた作品も多々ありました)、その面影を残しつつ、新たに強く主張する四代の作品をしみじみと眺めていると、親子だからこそ、美しく受け継がれるものもちゃんとあるものだ、と“いのちのつながり・つらなり”を感じずにいられませんでした。児孫のために、残す美田もあるのです。 さて当日。たまたま時間を見つけて、ちょっとでも寄れたらラッキー、というくらいに、ラフな格好で訪れたところ、四代もいらして、ご挨拶することかないました。三代との出会いの経緯などお話しまして、非礼な格好を詫びましたが、きりりと着物を着こなし背筋をぴんと伸ばした四代、その作品に違わず、理知的な雰囲気に、お父様譲りの気さくさも覗かせ声を掛けてくださいました。徳田八十吉の新たな継承者の今後の活躍、ますます目が離せません。(了) 【九谷特選作家】九谷焼 徳田八十吉 11号壷・耀彩鉢・黎明 【限定品】 【九谷特選作家】九谷焼 徳田八十吉 7.5号壷・耀彩遊線文 【限定品】 【九谷特選作家】九谷焼 徳田八十吉 8号花器・九谷三彩 【限定品】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/06/08 11:10:45 PM
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