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カテゴリ:アート
去る6日まで東京都国立博物館(平成館)で開催していた『細川家の至宝』展、行ってきました。歴史好きには、細川幽斎(藤孝)、三斎(忠興)父子が有名ですよね。
細川家のコレクションと言えば、細川護煕元首相(ちなみに同氏は細川家第18代当主です)が理事長を務める永青文庫が有名ですが、細川家に名を連ねる一族ゆかりの至宝がここまで一同に会するのはまたとない機会ですし、同時に、細川家が、日本伝来の学芸・文芸(古今伝授の継承、和歌、能、そしてもちろん茶の湯)の保護者であり、継承者であり、同時に達者な実践者でありイノベーターであったことを、体系的に鑑賞し体感する絶好の場なのです。細川家は、戦国時代から一貫して、文芸を愛し、庇護してきた家柄なので、この展覧会のテーマが「細川家」であることは、400年にわたる日本の文化の醸成を辿る上で、「精度の高さ」という点においても価値があります。 悲劇のヒロイン、細川ガラシャ、剣豪・宮本武蔵、天下人・織田信長など、細川家を彩る関連人物に縁のある展示物もまた、細川幽斎、三斎父子が、群雄割拠する当時の日本において、ポリティカルな面でも、バランサーとして重要なポジションを担っていたことがうかがえます。 圧巻は、歴代当主の甲冑群、そして江戸時代に入ってからの風景図。細川忠興公は甲冑のデザインにも卓越した才能を発揮し、時には同僚(?)から甲冑のデザインを依頼されたともいわれています。“忠興風”に辿り着くまでの同家の美意識の道のりを一望するだけでも、改めて日本古来のデザイン感覚に痺れてしまいます。 風景図は、鮮やかな色使いのみならず、お抱えの絵師に描かせただけあって、領内のディティールや、見どころを、あたかもパノラマ写真のように精密かつダイナミックに描き上げていて、藩主の美への強いこだわり、妥協の余地を残さぬ審美眼に、ただただ圧倒さえてしまいます。 細川家といえば茶の湯、というほどに(忠興公はまた利休七哲の一人でした)、名物の数々にもため息がこぼれました。 一転、16代・護立公(旧熊本藩主、永青文庫の設立者)のコレクションは、既成概念に縛られることなく「いいものはいい」をモットーに集められただけあって、護立公の懐の深い審美眼、パトロンとしての使命感(横山大観や小林古径ら)、公自身の遊び心、数寄心が透けて見える味わい深いコレクション。マティスやセザンヌの作品への着眼は、国内のみならず、海外にも目を向けた開明派の面目躍如たるものがあります。 テーマもぎゅっと絞られていて、名品揃いの本展、足が悪くなって美術館から遠ざかっている祖母にも見せてあげたかったです。(了) 細川家の700年永青文庫の至宝 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010/06/07 06:42:34 PM
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