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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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テーマ:お勧めの本(7402)
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塩野七生著『ローマ人の物語』(39)
       キリストの勝利(中)(新潮文庫)

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ディオクレティアヌス、コンスタンンティヌス両帝によって封じ込められたペルシャが黙っている由もなく。コンスタンティウスの専制と、ユリアヌスの快進撃に、四十年の雌伏の時を経て、いま、有能なるシャプール二世によって、ペルシャが待ったをかける。大敗と休戦条約で、溜飲の下がらぬペルシャ王、齢五十にして、悲願に臨む。ふたたび、帝国最後の歴史家、アミアヌス・マルケリヌスの記述によって、戦端を開いたアミダの攻防は詳らかに。ローマ側の、数少なくなった歴戦の勇者ウルシチヌスも、アミダの死守はかなわず。命運を賭けたシャプール二世の本気の大軍の前にはなす術もなし。やがて、守るが有利な攻城戦も、圧しては戻る大軍と、城壁を越える兵器登場、城内には疫病が蔓延し、空いてはならぬ穴が空くことに。件のアミアヌス・マルケリヌス、ここで上司を捨て、逃げに逃げて、公人としてのキャリアと将来を捨ててはやくも隠遁生活に。ペルシャ攻撃から七十三日にてアミダ落城。ここでようやくコンスタンティウス帝、ペルシャ遠征を決意。もはや、完勝にて敵を掃討し、さらには帝国当方の防衛線深くまで取り返して安定を図るところまでいかねば、面子に係る。なにしろ、兵力はあるのだ。その数、ざっと六十万。ペルシャの十万を呑み込むには十分。副帝ユリアヌスも、この一大決戦に参戦せよとの声がかかる。西方で手一杯のユリアヌスに、余裕すらあるコンスタンティウスが命じた兵力の供出は、もはやいじめ。その精鋭の半数近くを、皇帝の指揮下にまわせとのお達し。これには、ユリアヌスの部下が納得しなかった。単に、敬えない主の元へ、はるばる西から東へと移動することが億劫だったのではなく、この職業軍人らにも人情はあった。ユリアヌスを、正帝へ!!突如、兵士らが、ユリアヌスを抱え上げ、「ユリアヌス、アウグストゥス!!」と叫んで胴上げ祭。それは賛同の声となって、遠くセーヌ河の対岸まで轟いたという。ローマ式のアウグストゥス決定の倣いに回帰!!哲学青年、ここまでも人望を勝ち得ていたとは…。しかし、これが謀反と取られては意味がない。冷静だったユリアヌス、まずは兵士の動揺を鎮めるため正帝を受けると宣言。次いで、コンスタンティウスには、東西二人の正帝成り立った「二頭政」を例にひいて、波風立たぬよう自分の正帝就任を認めて欲しいと弁明&嘆願書を送り続ける。理には、かなっていたのだ。しかし当然、あの陰湿なコンスタンティウスから返事が来るはずもなく、俟ち続ける一年を無駄にせず、最悪の事態に備えたユリアヌス、やがて、ペルシャの勝利に目をつぶることでいったん敵を満足させ、また同族争いは大歓迎だろうと見越してシャプール二世と簡単に休戦したコンスタンティウスが、ユリアヌス討伐に軍を動かしたことを知る。もはや、ここにいたっては帝位を受けるか受けないかではない。帝位を守るか、否かの問題である。内線覚悟の決断のとき。相手は、大帝の息子にして、兄弟肉親を殺して帝位に就いた、正統なる皇帝。誰が自分に従うのか…そう、西方での輝かしい勝利と、純粋さに惹かれた歴戦のゲルマン戦士たちが、ユリアヌスを皇帝にすると誓って立ち上がった。次々と、ユリアヌスに投稿するドナウの防衛軍。数においては相変わらず不利も、戦の流れは完全にユリアヌスにあった。命運尽きたか、矛交える前に、コンスタンティウス、病に倒れる。その死を、親子二代の夢の都であったコンスタンティノープルに向かう途上で知ったユリアヌス、一兵も失わず、人望だけを集めて、ただ一人の皇帝となり、その行軍は、皇帝としての入城となった。しかし、コンスタンティスの、父譲りの入念周到な二十四年の治世は、一つの政治基盤を堅固に形成していた。ユリアヌス、前帝の遺した東方の王族的な、豪奢で重厚長大な政治システムおよびヒエラルキーを換骨奪胎するため、矢継ぎ早に政策を発布。リストラ、官僚機構に巣食う帰省中を皇宮から一掃。宦官追放。そして、後に彼が「背教者(アポスタタ)」と呼ばれる所以たる、大帝コンスタンティヌス以前の宗教政策への回帰。辻邦生『背教者ユリアヌス』、ゴア・ヴィダル『ジュリアン』で描かれた、“背教者ユリアヌス”誕生。しかし、その実、寛容を謳いながらキリスト教を道具として支配基盤を作ったコンスタンティヌスよりは、キリスト教の圧倒的な優遇を排して、すべての宗教への寛容=つまり伝統的なギリシャ・ローマの多神教の尊重に戻したという意味では、背教どころか、ミラノ勅令の真の理解者&実行者だったユリアヌス。だが、ウケは良くなかった。なにしろ、政局の安定のために、キリスト教が邪魔だったディオクレティアヌス、そして帝位の神の指名の代弁者が必要だったコンスタンティヌス。どちらも目的は同じ。だが、信じるより疑うことが仕事の哲学者皇帝・ユリアヌスにとって、指示における「神の意志」は有効性を持たなかった。その政策は、コンスタンティヌス、コンスタンティウス父子のとったキリスト教政策すべての反故であるからには、もはやキリスト教への宣戦布告に等しく。そして、キリスト教の牽制のために敷いた、古来からのローマの神祇官の禁欲生活まで規定した日には、行き過ぎた感あり。めまぐるしく、敵を増やすばかりの政策に明け暮れつつ、次に向かうは、コンスタンティスが一旦は休戦に持ち込んだペルシャとの戦闘再開。休戦とて、敵が内側に居座っての休戦である。途上、アンティオキアでは、投機に明け暮れる元老院議員二百人を投獄。次いで、ダフネの街で、アポロン神殿を参拝して顰蹙を買うと、ユリアヌスを押し上げてきた魔法は何処へ、反感は雪だるま式に皇帝を覆った。自著『ミソポゴン』で、この恩知らずで分からず屋な民たちに思いの丈をぶつけるも、なんだかリアクション薄。とはいえ、ペルシャ戦役に突入すれば不人気ムードを一掃するかと思いきや、かつての深謀遠慮どこへやら、近隣諸国への根回し、ロジスティクスのリスク分散蒸無視、ペルシャの亡命王子を切り札として恃みすぎたこと、と三重のミスを重ねてのスタート。しかし戦は、歴戦の精鋭部隊を率い、巧みな戦術眼でローマ有利に進んだかに見えたが、最後の最後、唯一にして決定的な勝利への一手となる場面での追撃に踏み切らず、これがユリアヌスの運命を決定してしまう。次いで、船に頼った兵站は、敵に利用されることを恐れて船を荷ごと焼き捨てる作戦に出たがため、軍務生活の糧と、故郷への足を目の前で、自軍の総司令官の命で失った兵士たちに動揺を与える。背水の陣でもないが、暗雲立ちこめる自軍を鼓舞して、会戦にも勝利、シャプール二世に煮え湯を飲ませて、戦は進む。かつて、ユリアヌスに人望を備えさせた、あの陣頭指揮。八面六臂、獅子奮迅の戦いぶりが、まさか徒になろうとは。紀元363年、胸甲もつけぬままの馬上の皇帝を、どこからともない槍が貫く。その日の戦果は実りありとの報を受けると、三十一年の生涯の幕を閉じる。槍の主、そして胸甲さえ用意してもらえなかった当日のユリアヌス、その死の真相はまたも薮の中。後継者争いの醜さの中で皇帝となったユリアヌス、子はなかったのだからなおさら、後継者は決めずに世を去った。そこで、無難の無名人、ヨヴィアヌスが正帝就任。事後処理のつなぎ役。まずは、勝っていながら被害拡大を恐れてのペルシャとの講和。そして、今度はアンチ・ユリアヌスな法律と政策の大盤振る舞い。そこまでやって、まさかの暴飲暴食のため死去。七ヶ月の治世、果たして、ヨヴィアヌスの登板で得したのは誰?最後に筆者曰く、「宗教が現世をも支配することに反対の声をあげたユリアヌスは、古代ではおそらく唯一人、一神教のもたらす弊害に気づいた人ではなかったか、と思う。(中略)「背教者」とは…(中略)…三十一歳で死んだこの反逆者に与えられた、最も輝かしい贈り名であるのかもしれない。」(了)


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Last updated  2011/05/10 03:10:49 PM
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