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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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テーマ:お勧めの本(7334)
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塩野七生著『ローマ人の物語』(40)
       キリストの勝利(下)(新潮文庫)

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ユリアヌス、ヨヴィアヌスの死により、ヴァレンティニアヌス帝の時代に突入。蛮族出身の皇帝、実弟のヴァレンスを対等の共同皇帝として治世スタート。ヴァレンティニアヌスの治世とは即ち、アンチ・ユリアヌスで継いだヨヴィアヌスの発展型。ただし、質素な皇宮生活つまり宦官らの追放などは継承。しかし、教養にコンプレックスのあったヴァレンティニアヌス、元老院の三分の二を、反逆罪の汚名を着せて処刑。慌てた元老院の殆どは処刑前に議席返上。無教養を負い目にしていた皇帝、息子のグラティアヌスには西方随一の知識人で教育。治世十一年目、激変は訪れる。蛮族撃退&討伐で戦場を駆け回った蛮族出身皇帝、北の冬で、ゲルマン民族との戦いを前に、突然死。脳卒中か、心筋梗塞か。帝位継承は、順当たるグラティアヌスが、幼い異母弟のヴァレンティニアヌス二世にアウグストゥスの称号を贈って、帝国西方のイタリアの統治のみを任せる形で、帝国の責任を双肩に負う。蛮族仲間も震え上がるフン族登場。怖れたゴート族が、命と生活の保障を求めて、ローマに大移動。兵役も条件であったから、皇帝も受け入れたが、その数は予想を大幅に超え、流入したゴート族で帝国はキャパオーバーに。武装した難民たるゴート族が、約束不履行に不満爆発。弟と言うだけで皇帝になったヴァレンス帝の担当地域で広がる不満は、ついに軍隊の発動を誘う。が、即断できない逡巡の人・ヴァレンスは、甥のグラティアヌスの進言と応援を受けることは面子に関わると、熟慮なく開戦。史上名高い「ハドリアノポリスの大敗」を喫す。ローマ軍は、三分の二の兵士を失う。逃走したヴァレンスは、逃げ込んだ小屋で、皇帝が中にいるとも知らない兵士に火をかけられ死亡。無政府状態と化したヴァレンスの担当地域である東方に、十九歳になってはいたグラティアヌス帝は右腕を求める(イタリアを譲ったヴァレンティニアヌス二世はいまだ七歳)。先帝ヴァレンティニアヌスの元で戦功に輝くテオドシウスを皇帝に迎える。空白の時間に、互いにわだかまりはあった(テオドシウスの父は、讒言により、未熟だったグラティアヌスにより無実の罪で処刑されていた)が、年若い皇帝は働き盛りの軍人皇帝に、ハドリアノポリスの大敗の処理を託す。粋に感じたテオドシウスも偉かった。後に「大帝」の名を戴くテオドシウス、よしと引き受け、馬首をゴート族の居座るトラキアとダキアへ向ける。あらゆる手段で兵力回復、ボーナスもいとわず。世襲制も反故にするとして、文字通り兵士をかき集める。勝たなくても良い。事態を終息するのだ。目の上のたんこぶペルシャのシャプール王の死を追い風に、一気にゴート族の移住を公認し、不満鎮圧。これで、“ローマのゲルマン化”も加速。訪れた小康状態は、帝国を新たな変革に導く。徹底したキリスト教の国教化である。親キリスト教路線復活。元高級官僚。政治の裏も表も知り尽くした、代々の名族出身の男。後に聖人と呼ばれるミラノのアンブロシウス、歴史舞台に登場。またも、アリウス派と三位一体派の抗争勃発の処理を任された高級官僚アンブロシウス四十三歳。キリスト教徒でもなかったのに、司教に選ばれる。最初は辞退するも、無理矢理洗礼、叙階に必要な手続きは一週間でぶっ飛ばして一気に司教座へ。王権は神の意思。それを定着させたい皇帝の帝国ビジョンを受け、能吏は司教の道をひた走る。それもまた、一級の官僚の美学なのか。司教である前に、帝国安泰に身を捧げるアンブロシウスは、着々とキリスト教飛躍の地盤固めに手を打つ。「異教」と「異端」が分離。すなわち前者は、宗教的寛容の中で、多神教として崇められた宗教。後者は、決して許容されない、一神教の敵。ここに、「ミラノ勅令」から発しながらも、宗教の不寛容、それも排他的な不寛容の姿勢が歩みを始める。グラティアヌス帝による、次か次へと打ち出される「異教」廃絶政策。建国以来の女祭司制度の廃止、そして、一千一百三十五年燃え続けたフォロ・ロマーノの神殿の「聖なる火」の消火。神殿のみならず、祠までが閉鎖。コンスタンティウスが言い出して、そのままになっていた元老院会議場の「勝利の女神」も撤去された。たたりがあったか、グラティアヌス、ブリタニアで反乱を起こした司令官マクシムスに殺される。二十四歳の死。それでも、アンブロシウスの手は緩まない。ヴァレンティニアヌス二世も、成人を待たずに暗殺される。さて、「勝利の女神」撤去問題をめぐって、世紀の大論戦が繰り広げられる。クイントゥス・アウレリウス・シンマクス。ガリア系ながら名族中の名族。公職キャリアではアンブロシウスの上を行く、「内閣官房所属秘書官」、アナクロながらも、ノスタルジックな帝国最高の知性の一人。迎え撃つは、司教アンブロシウス。シンマクスの論旨は、とにかく「ローマの象徴、帝国の魂、愛国精神と誇りを喚起させ私心なき宣誓を保証する、伝来の栄光の目撃者たる勝利の女神像の撤去、まかりならぬ」。「異教ローマの誇りの最後の炎」の名に恥じぬ、正論。老獪なりアンブロシウス、反論は、すべて理路整然の一本槍。人情の付け入る隙間もない。ハンニバルが攻めてきた時、戦ったのは兵士で、女神ではない、と。屁理屈ギリギリ。だが、アンブロシウスに勝てる者などローマにはいない。女神像の、その後の行方は知られない。ちなみに、ローマ名物「真実の口」は、二千年前は、下水道に水を落とし込むためのマンホール。形を変えて、女神もどこかで生きながらえているのでは…とは筆者。キリスト教以外の「異教」の意味を「邪教」と変えたテオドシウスに大帝の名が贈られても不思議ではない。事実、キリスト教は勝利したのだ。止まらない神殿破壊。“宗旨替え”したパンテオン、生き残って良かった。コンスタンティウスの時代には、芸術鑑賞の対象としてならば認められた神像は、コンスタンティノープルで生き延びた。フィディアスのアテナ女神像もまた。しかし、テオドシウス時代にはそれも認められず。五年を要したブリタニア反乱鎮圧、マクシムス処刑。テオドシウス、ローマを訪問。凱旋も名所見物もせず、まっさきに元老院の会議場に向かい、「キリスト教を選べ」。この一言で、ついにキリスト教はローマ帝国の国教となる。一神教の時代到来、それはまた、多神教では成立し得なかった、ただひとつ、己の信じる教えのために死ぬという「殉教」を発明した。紀元393年、オリンピック、全廃。ギリシャとローマの文明が公式に終焉した年となる。宗教、皇帝の上座にさらに高く座す事件勃発。ユダヤ教徒のシナゴーグを焼いたキリスト教徒に、政治家としては処罰を下さざるを得ないテオドシウス皇帝、処罰を命じ、シナゴーグ再建をキリスト教会で賄うよう命令。それがアンブロシウスの布石の蜘蛛の巣にかかった。皇帝と言えども、神の前には罪を悔い改めよ、と。八ヶ月の抵抗の後、皇帝、司教の前に膝を折る。羊飼いが、羊を飼いならした瞬間。「カノッサの屈辱」のリハーサルは、700年前に行われていた。懺悔した大帝テオドシウス、死す。操ったアンブロシウスは、キリスト教会の基盤固めに最後の仕上げ。理論武装マニュアルを作成、さらに聖人信仰制度を設け、周到にも自らを聖人として、テオドシウスの死から二年後に帰天。もともと何十万もの神々に相談してきたローマ人たちだ。一神教を守りながら、神にとりなしを行う守護聖人を大量に生産したのは、独創的かつ、その後の中世の歴史における異教の取り込みを考えるにつけ、アンブロシウスの偉業と呼ばざるを得ない。さて、キリスト教国家となった帝国、大帝なのだからテオドシウス、神の意思を取り付けておいたろう、息子二人にスムーズに譲られるが、もはや分担統治の概念は機能せず。アルカディウスとホノリウスの帝国は、それぞれ、帝国東方、帝国西方ではなく、「東ローマ帝国」と「西ローマ帝国」へと分割していくのであった。実質的には、独立した二つの国になった帝国は、最後の世紀である紀元五世紀に突入していくのである。(了)


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Last updated  2011/09/21 04:14:29 PM
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