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カテゴリ:映画/エンタメ
児玉清氏が、去る5月16日に亡くなられた。最近のテレビでのご活躍ぶりも素敵だったが、それが私にとって素敵に見えたのは、子供の頃に抱いた氏への「思い出が素敵」だったことは間違いない。
海外生活から帰国して間もない頃、日生劇場で、はじめて観たミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』(東宝ミュージカル公演)。1982年のことであったか。 素晴らしい名曲、ストーリー、私にとっての、ミュージカルというスタイルの目新しさ。決して忘れられないよき思い出だが、マリア役の方が誰だったか、失礼ながらまったく思い出せない一方で、児玉氏が演じたトラップ大佐だけはいつまでも記憶に焼き付いている。 その後、両親には、国内外でたくさんのミュージカルに連れて行ってもらったが、私にとって、ミュージカルの思い出=トラップ大佐なのである。スラリとした長身、男性として美しい身のこなし、上品で知的なムード。やはり、演目が演目だけに、トラップ大佐の歌声はあまり記憶にないのだが、ミュージカルを見て、歌の記憶に辿りつかないトラップ大佐が印象に残る、というのも稀有なことである。 さて、児玉氏のトラップ大佐は、まさにダンディそのものと呼べるものであったが、それは、氏のたたずまいに、私はどこか、古き良きクラシカルなスタイルを見ていたからかも知れない。 その後、どのような時代にどのような役柄で演技をされても、柔軟ながらブレのない、芯の通ったそのダンディズムに敬服してきた。翳りを愛する私の中で、児玉氏は珍しく、圧倒的な輝度を持ったスターであった。ご冥福を心よりお祈りしたい。(了) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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