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バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

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カテゴリ:映画/エンタメ
 相変わらず、今さらネタですが『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』、観ました。幼少時代を過ごしたブラジルでは、子供の見るテレビ番組と言えばイコールアメコミでした。無論、当時はそれがアメリカの作品だとは知らず、ブラジルのヒーローだと勘違いしていましたし、日本に帰国してからも、皆が知っているアニメなんだと思っていました。
 いま思えば、スパイダーマン(あ、これは日本版の再放送を日本で見ていた気がします。まったく別物でしたけど…苦笑)、スーパーマン、などメジャーものをアニメで見ていましたが、実は実写ドラマもすごくたくさんやっていましたね。ハルク、バットマン、ワンダーウーマンなどは、実写がファーストコンタクトでした。スーパーマンは、ちょうどクリストファー・リーヴ主演の名作がちょうど公開された時期で、家族で映画館に並んだ記憶があります。そのとき、映画館の看板に立てかけられた、天を指さすスーパーマンの巨大POPに、感動した記憶があります。『スーパーマン』公開時は、とにかくフィグリーニャ(日本で言うところのキャラクターカードのようなもの)をベンダ(スタンドやキオスクのようなもの)で買い、ブックに貼ってコレクションしていました。そのブックは今も手元にあり、なかなかのレアものでないかと思うのですが。
 アメコミといえば、玩具もみんなアメコミ・ヒーローばかりで、小さなゴムのフィギュアのようなもので遊んでいましたが、幼い弟が、キャプテン・アメリカのシールドを飲みこんで病院に運ばれたこともありました。今では、「アメリカを飲み込んだ男」として伝説になっていますが(w)。
 そんなアメコミ歴を持つ私が、大人になってもやっぱりアメコミ・ヒーローの映画を見たいと思うのは、子供っぽいけれど、仕方がないことでして(ちなみに、素顔が露出していてコスチュームも地味なソーは、当時はあまり好きでないキャラクターでした。それが映画化されるなんて…)。 
 X-MEN映画化に貢献したブライアン・シンガーも復帰、監督は『キック・アス』のマシュー・ボーンということで、期待していました『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』。『キック・アス』なんて、もうアメコミ馬鹿によるアメコミ馬鹿のための映画でしかないのですが、ブラックユーモア溢れるB級映画と青春映画をうまくミックスさせた『キック・アス』もまた、爽快な映画でした(ま、ニコラス・“ゴーストライダー”ケイジの悪ノリ出演自体、とんでもないアメコミ馬鹿な映画なんですけど)ので、比較的ダークでシリアスな描き方をして評価されたブライアンと、もっとキッチュでスピード感ある描き方で頭角を顕わしたマシューがどんな作品を作るのか、と思っていたら、こう来たか…。
 とにかく、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』は様々な映画へのオマージュに溢れた、スタイリッシュなアメコミ映画です。別に解説など読まなくともすぐにそれと分かる、ショーン・コネリー版ジェームス・ボンドへのオマージュ、作品自体の時代背景に合わせた60年代のアメリカの文化を多分に感じさせるファッションやライフスタイルへのオマージュ、同じスパイものでも、007ではなくむしろ『スパイ大作戦』的な、レトロ・ゴージャスなニュアンス。あるいは、冷戦時代を描いた米ソ対決をモチーフにした戦争映画のスキームの援用。
 やりたいことやったなぁ、というのが正直な感想。オタクっぽいのにオシャレなのは、やっぱりマシュー・ボーンの力量によるところが大きいですね。
 キャスティングについては、『ウォンテッド』も印象的だったジェームス・マカヴォイに期待大だったのですが、イアン御大の知的で、哲学的で、色気あるダンディズムでキャラクター造形されたマグニートー(好き嫌いがあるだろうことは措くとして)の若き日を演じたマイケル・ファスベンダー(なんか、スタイルがあんまりよくなくて、それこそ40年前の体型なんですけど)のやんちゃでワイルドな男っぷりがめちゃくちゃ格好いいんですよ。また、過去のW-MEN関連作品では、どうしても脇キャラクターの描き方が、チラ見せレベルで厚みがなかったのに対し、少なくともジェームス・マカヴォイ演じるチャールズ・エグゼビア側のキャラクターは、皆丁寧に描かれていましたし、魅力が出ていました。
 敵対勢力はですね…これは、脇キャラが印象薄くても仕方ないよなぁ。だってボスが…主人公のトラウマの陰にこの人あり、ミスター・トラウマ(苦笑)ことケビン・ベーコンだもん。ケビンにゃ勝てない!!これがまたいやなヤツなんだ(あ、演じた役のことですけど)。個人的には、アザゼル(ちなみにアザゼルには、ビーストとの対決シーンがありまして、空中で両者が絡み合う様は、赤膚と青膚=「米ソの直接対決」を暗示していて洒落てますね)やリップタイドにももうちょっと活躍の場を与えて欲しかったですけど、まぁ、ケビン様の濃厚粘着悪質演技でお腹いっぱいというのも事実(白いタキシード着て海上でパーティ開いちゃう感じもまた、スカ―フェイス(?)なアル・パチーノへのオマージュ風なんですよね)。
 今後、MARVEL作品が次々と映画化される(探偵小説のラジオドラマ直系DCに比べて、国威発揚的なスタンスで人気を博してきたMRAVELが、今勢いをつけているというのも、なんとなく頷ける気がします)わけですが、その圧倒的なお祭り感に、ファンはもう、キャラクター登場の時系列の乱れや設定の改編、クロニクルの辻褄合わせに異議申し立てをする暇もない有様ですが、映画はあくまで映画、でいいんじゃないでしょうか。。。そういう意味で、意外なあの方が意外なシーンでカメオ出演していたりするのもチェックです。
 ストーリーの設定もまた巧妙。キューバ危機をクライマックスの軸に据えて、そこに虚構のヒーローが絡む。歴史的事実とコミックのキャラクターを上手にドッキングしました。でも、虚実綯い交ぜのストーリーの中で、最大のヒーローはやっぱり…今もケネディ大統領なんでしょうか???少なくとも、当時は全世界、反共産主義の世界において、ケネディはスーパーヒーローに見えていたんですよね(もともと、公民権運動とX-MENのミュータントという発想は親密な関係にあり、しばしば共存主義のチャールズはキング牧師、分離主義のマグニートーはマルコムXに喩えられて来ましたよね。その前触れとしてのケネディ登場は、コアなファンにも歓迎されたのではないでしょうか)。
 そういう甘酸っぱさも含めて、やがて敵対し合う親友と、まだ行き場を見つけられない超能力を持って生まれた若者たちの希望と苦悩が、鮮やかに描かれた、意外なほど健全で爽やかな映画となっておりました。。。(了)


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Last updated  2011/07/06 06:38:54 PM
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バーバリーブルーレーベル@ uqafrzt@gmail.com お世話になります。とても良い記事ですね…
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