832318 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

バベルの図書館-或る物書きの狂恋夢

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Profile

快筆紳士

快筆紳士

Calendar

Recent Posts

Category

Archives

2024/09
2024/08
2024/07
2024/06
2024/05
2024/04
2024/03
2024/02
2024/01
2023/12
2011/10/11
XML
テーマ:お勧めの本(7334)
***********************************************************
塩野七生著『ローマ人の物語』(43)
       ローマ世界の終焉(下)(新潮文庫)

読破ゲージ:
読破ゲージ:
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■


***********************************************************
西ローマ帝国の歴史に幕を引いたオドアケル。誰も皇帝に就けず、自分も皇帝にならず。ただし、時の東ローマ皇帝ゼノに“宰相の意味を含む”パトリキウス(貴族)の称号承認要請。なぜなら、他の蛮族出身リーダーと違い部族を率いていないオドアケル、傀儡を通じた権力者になるには、一匹狼ではいられなかったから。
この要請にゼノ、完全に曖昧な態度。ゼノ、国内紛争で帝位を追われ、ようやく復位した年でもあったため。やはり、東ローマ帝国、もはや西に愛想を尽かしたのだ。業を煮やしたオドアケル、ネポス排除し、あくまで「イタリア王」になることを決意。
さて、“滅亡した帝国”に放置された諸州。ブリタニア、ケルト系ブリタニア人が定住。「イングランド」の時代に。ここに、アーサー王伝説のルーツあり。
ガリア、フランク族の治める「フランス」の時代へ。さらに、クロードヴィック王が改宗してカトリックの国へ。ヒスパニア、複雑な地の利を生かして蛮族の侵攻なき時代へ。北アフリカ、ヴァンダル族の支配の苦杯以降、民族浄化と難民の地に。世は、「パクス・バルバリカ=蛮族による平和」を求める時代になっていた。
ゲルマン人オドアケル、既存のシステムを温存することで、反目しあう教会勢力を御し、都市計画も、行政組織も旧態を保護。当然、ネックとなる元老院階級の掌握も抜かりなし。その成果は、17年間のイタリア支配に結実。ただし、カトリック派とアリウス派のにらみ合いの下、「同化」不可能、よくて「共生」では、17年が限界であったのだ。
一方で、東ゴート族、新たなるリーダーを得ていた。名をテオドリック。ゼノの帝位奪回に助力し、はや二十歳で、父が果たせなかった「同盟者」以上、つまり帝国の「貴族」に就任。東ローマ帝国の、有力な忠臣にまで上り詰める。公式な立場を留保してきたオドアケルを討伐するというテオドリックの提案にゼノ、ゴーサイン。
テオドリック三戦三勝。有能なリーダーぶりを実証し続ける。膨れ上がった軍勢を抱えて巧みに戦略転換。一転、イタリア全土の共同統治を持ちかけオドアケルと講和。その下の根も乾かぬうちにオドアケルを殺害。心に野望を秘めた気鋭のリーダー、ここから、東ゴート王国支配をスタートする。その治世、実に33年。
基本路線はオドアケルを継承。つまり、政策は温存。さらに、東ローマ帝国との関係は、刺激せずに良好な状態維持に徹底。
パクス・バルバリカの下での敗者、つまりローマ人を伝えるカシオドロス。高学歴・上流階級出身。テオドリックに送った“ファンレター”で、貴族に抜擢。以降、貴族に加えられ、その治世でありとあらゆる要職を歴任。その手腕は主に、テオドリックの敏腕スポークスマンとしての活躍。同時代人に後の聖人ベネディクトゥス。それまでの、瞑想オンリーの世界に労働を持ち込み、後の修道院のモデルを作る。
テオドリックの統治は、内容のならずそのプレゼンも巧みだったことが長命の要因に。事実、オドアケル+テオドリックで、荒廃し放題の、かつての西ローマ帝国は半世紀の平和を得ることに。国も豊かになった。平和こそが、究極のインフラストラクチャーとは筆者の弁。スティリコ源流の「三分の一システム(筆者命名)」。ローマの同盟者となった蛮族の定住地に住むローマ人は、所有する資産(つまり農地)の三分の一を蛮族に分与。その代わり、ローマ人は、いやいや傭兵料を払わず、侵攻する蛮族への防衛要員を得る仕組みも健在だった。
敵方たる東ローマ帝国の官僚で、カトリック教徒でもあったプロコピウスですら「東ローマ帝国から与えられた称号は専制君主(王)でも、やったことなら皇帝同等」と讃えた。晩年は、宿老・ボエティウスが、イタリア進攻を企てたというアルビヌスの陰謀を弁護するなど、煮え湯を飲まされる思いもしつつ、惜しまれて、七十二年の生涯を閉じる。加えて、息子のなかったテオドリック、後継者は孫のアタラリック、実権は娘のアマラスンタ。サポートにカシオドロス。
東ローマ帝国、その時代はユスティヌス皇帝から、その甥、後の大帝・ユスティニアヌスの時代へ。軍務経験ゼロ、政務経験ゼロ。コンスタンティノープルに引きこもりっぱなしながら、重要な案件への決断はいつも的確、という不思議ちゃん。コンスタンティヌス、テオドシウスと並んで、史上三人だけの大帝の一人となる。
その功績は、何といっても『ローマ法大全』の編纂。後代の近代国家の法律の範となる大業なれど、これまたなぜこの無教養な男がなし得たのか、歴史の不思議也。
女性のリーダーを望まぬゴート族の反発を抑えるため、テオダトゥスと再婚したアラマスンタ、夫を最後まで信用できずに東ローマ帝国皇帝に接近。これに、ゴート族重臣が憤慨、カシオドロスの対応も空しく、これが東ローマ帝国のイタリア進攻への口実を与える結果に。
皇帝ユスティニアヌスの傍に、東ローマ帝国史上最高の将軍・ベリサリウスあり。ところで、セレブ志向のオリエント色が濃くなる東ローマ帝国=ビザンチン帝国で、“一応、お嬢様”ならいくらでもいた社会で、暴徒に囲まれてパニくった皇帝を叱り飛ばし、“王者の振る舞い”を思い出させた踊り子・テオドラを妻とし、添い遂げた皇帝と、時には一隊を率いて夫の援護射撃すら行う生まれも低い子連れの未亡人・アントニアを妻としたベリサリウス。アントニア、水不足の際も、夫に内緒で船底に積み込んだ水の壷で兵士を救うなど内助の功。それぞれ、妻も偉かった。
コンスタンティヌスの業績の今ひとつは、西ローマ帝国の旧支配地奪回。小競り合ったペルシアと講和を結び、ヴァンダル族がのさばる北アフリカ王国打倒を敢行。もちろん、率いるはベリサリウス。まさかの食料腐敗に悩まされるも、500隻の大船団を率い、略奪を禁じて士気を高めたその威風堂々たる姿に、都市も港も門を開く。無血開城で本拠地はカルタゴに到達。百年を夢の中で過ごしたヴァンダル王国、ここに壊滅。
次なる目標は東ゴートの支配するイタリア半島の奪回。ベリサリウス、またも出陣。しかし、イタリアは賢明なる王たちによって、平和を享受していたから、あえて“寝た子を起こす”様な形に。やがて、ローマ人の間で、ビザンチン軍が迷惑な存在に。軍務経験ない皇帝に振り回され、ベリサリウスも、援助要請。送られたのは、異色の宦官将軍・ナルセス。
官僚的でなく、私腹も肥やさず、陰謀も巡らさない。あらゆる問題も決着してみせる、ミスター・解決。信頼も厚い、デキる宦官を送られて、その指揮下に入るを潔しとせず。時間と兵力を空費し、ナルセス召還。これで、ようやく奮い立ったベリサリウス猛攻開始、牙城ラヴェンナ落城。
が、その功績で、今度はペルシア攻略にまわされる。危惧した通り、ベリサリウスが去った、まだ平定ならぬイタリア半島で、ゴート軍が再起。やっぱりゴートの支配でオッケー。そう思われても仕方なし。この感情を利用してゴート王、トティラ。清廉と寛容を旗印に、待遇に不満を持つビザンチン側の駐留軍をも迎え入れ、聖ペテロ教会に参拝すらして、テオドリック時代の「共生」路線に戻ることを宣誓したが、事態を重く見た皇帝に呼び戻されたベリサリウスが、疲弊し切った、食料も兵士もない軍団を率いて向かってきた時には、豹変し、「支配者」と「被支配者」のけじめとばかり、ローマに残る元老院議員およびその家族全員を捕虜に。ここに、建国以来続いてきたローマ元老院、壊滅。
過ぎること17年。一向に決着しない闘いに、ユスティニアヌス、ベリサリウスを閑職に追いやって、ふたたびナルセスを立てて事態の収拾に乗り出す。御歳七十歳、ますます知力は冴え渡るナルセス、軍人ベリサリウスとの違いは、準備にあり。ロンゴバルド族を雇い、ゴート族を野戦に誘い出し、とにかくトップを叩いて一気に決着に持っていく戦略。本来、ローマ軍が得意とした作戦。連勝に驕るトティラの心理を突いて会戦に誘い出したが、一週間も偽った宣戦布告に先手を打たれる。しかしロンゴバルド族の奮闘もあって、ティトラ戦死。見事勝利を得るナルセス。が、このロンゴバルド族こそが、次にイタリアに居座る蛮族となろうとは流石のナルセスの想像も及ばず。
東ゴート王国最後の王・ティアを討死させて、アルプスの北への退去を命じると、ゴート兵の多くはこれに従う。
功績あったナルセス、ついに「皇帝代官」となって、イタリア統治へ。ゴート戦役に費やした費用を回収したいユスティニアヌスの意を汲んで、戦役の英雄、一転して“重税取り立て代官”に。以降、ナルセスの圧政、15年に及ぶ。
寂しいベリサリウス、ブルガリ族相手に人生最後の戦働き。「皇帝ユスティニアヌス死す」の虚報に、思わず公然とユスティニアヌス批判。どっこい皇帝は生きていた。それが、陰謀と見られて入牢させられるも、最後は赦されて自由と資産を取り戻す。しかし、その数ヶ月後、ベリサリウス、逝去。追うように、ユスティニアヌスも逝く。ナルセスもまた。
甥のユスティヌス二世が即位。その最初の言葉が「金がない。だから、軍事力もない」。ゴート戦役の後だから仕方のない話でもあるが、もはや英雄なき東ローマ帝国に、ロンゴバルド族が侵攻開始しても、なす術がなかったのだ。その支配は、ゴート族のそれとは違い苛烈を極める。
紀元六一三年、マホメッド、布教開始。イスラム勢が力をつけて、ビザンチン帝国の領土を瞬く間に削る。地中海の北側を残して皆イスラム化。この版図のまま、中世まで時は過ぎる。地中海は、もはや「マーレ・インテルヌム=内海」ではなく、境界の海に変わっていた。ローマ世界は、実に、地中海が「内海」でなくなったときに、消滅したと筆者。これにて、ローマ人の物語はお終い。読者は、ここに帝国を看取り、見送った。(完)


【送料無料】ローマ人の物語(43)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011/10/11 07:02:59 PM
コメント(0) | コメントを書く


Comments

プラダ バッグ@ gpzqtt@gmail.com 匿名なのに、私には誰だか分かる・・・(^_…
バーバリーブルーレーベル@ uqafrzt@gmail.com お世話になります。とても良い記事ですね…
バーバリー マフラー アウトレット@ maercjodi@gmail.com はじめまして。突然のコメント。失礼しま…

Favorite Blog

ペンギンの革人形を… New! 革人形の夢工房さん

新・さすらいのもの… さすらいのもの書きさん
価格・商品・性能比較 MOMO0623さん
抱きしめて 愛の姫.さん
天使と悪魔 ♡ り ん ご♡さん

Keyword Search

▼キーワード検索


© Rakuten Group, Inc.
X