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吉村昭の闘病と最期を全身全霊をかけて小説にした津村節子 妻の目と作家の目で。 文学界の5月号に掲載された「紅梅」 4月沖縄旅行に行く前に買おうとあちこちを探したけれどどこも売り切れで買えず 図書館で借りて読みました。
以前 昨年出版されたこの遍路みちを読み 3年たってもまだ深い哀しみの中にある妻節子の気持ちをを知り 吉村昭の最期も描かれていて大体わかっていたのですが
今回の「紅梅」は更に実に詳しい 2005年元旦の日記に「小説を書く!」と書いた吉村昭が 2006年7月に逝去するまで 覚えていることをすべて書きつくそうとしたのでしょうか。 夫婦ともに作家であることの使命でもあるかのように。
お互いに信頼し合い尊重し合い作家活動を続けている吉村昭と津村節子の関係 同士のようであり恋人のようでありとても好ましい。 この小説でも(遺書にさえも)そのことがよくわかります。
彼女は全てを尽くしてこれ以上できないほどの看病しているにもかかわらず 書かなければならないものがあり行かなければならない講演がある 作家の自分を済まないと思う妻 力尽き今際のときに 「あなたは、世界で最高の作家よ!」 と叫んでしまったことすら後悔している。 「愛している」とか「すぐ行くから待っていて」と言えなかったと。 私は世界で最高の作家の方が素晴らしいと思うし、喜んでくれていると思うのです。
闘病中誰にも会おうとしなかったり 亡くなったらすぐに火葬しお骨で家族だけの密葬をと指示したりするところでは 亡き母のことを思いました。 1月に癌が見つかり2月に手術し3月に53歳で亡くなった母 入院中は誰にも会いたくないと 遠くから来たお見舞いの人まで帰っていただいたものです。 美意識の強い母は闘病中の素顔を見せたくなかったのです。 闘病生活でも衰えることなどなく亡くなっても美しいままの姿だったのですが。
ところで私は紅梅よりも遍路みちの方が 遺された妻としての思いが素直に描かれ好ましく思いました。 紅梅は書き残さなければならないという気持ちが強すぎたからでしょうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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