聖帝たる所以(ゆえん)
漢。 漢と書いて「おとこ」。漢には戦わねばならない時がある。それは聖帝たる私とて同じだ。先日、私が下々の暮らしを見ようと視察に出ていた時のことだった。「こんにぃちぃわぁぁ!」甲高い声で私に声を掛けてくる者がいる。振り向いてみると、日焼けしたずいぶんと小柄な者だった。私の敷いた圧政のせいだろうか。「何だ?」と私が聞き返すと、その者は「こんにぃちぃわぁぁ!」としか言わぬ。身なりの良い私を見て、金品を強奪しようとしている暴漢であろう。その者がまた「こんにぃ~」と言った刹那(せつな)!!私はその者を渾身の力で投げ飛ばした!しかし、暴漢は一人ではなかった。民家の塀に隠れてわからなかったが、まだ二人いたのだ!私は焦りを抑えながら、聖帝である誇りを胸に「まとめてかかってこい!!」と小気味の良い口調で啖呵を切った。すると素手の私に対して、彼らは警棒ほどの長さの棒を振り回して襲ってくるではないか!?さすがの私も獲物を持った暴漢三人を相手に苦戦を強いられた。彼らの獲物のひと振りをかわしてもすぐ次のひと振りが来る!聖帝の夢もここで潰(つい)えるのか?そう思った瞬間、私の中で別の力が働き、知らぬ間に三人は地に伏していたのだ!!おお神よ!! 私には死ぬことも許されぬのか!?そして私は地に伏した三人を前に「縦笛を持った女子小学生三人ごときで私に勝てるわけがあるまい!!」そううそぶいて傷ついた体を引きずりながら帰路に着くのであった・・・(いかなる小さき者の反逆も許さず、全力を持って排除する聖帝様!! しかし、小学生相手にも全力とは考えものだ!!!)