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小笠原ダイビングライフ

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2011/03/15
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カテゴリ:今日の海
 報告が遅れましたが、キャンプから無事に帰ってきました。

 メールや携帯に電話くれたかたがた、ありがとうございました。
個別に連絡していない方もいますので少し状況を説明します。

 アホウドリの飼育事業が行われている聟島を漁船で出発したのが3月11日の12時30分
15時ごろ、父島の西を走っているころに無線で地震の情報が入りました。
このときの情報では津波は16時10分に50センチ。
父島入港予定は15時45分。
この時点で心配だったのは係留してあるボートのことでした。
時間は下げいっぱい。50センチだったら問題ないかな・・・
と思っていると再度連絡が入り、大津波警報に変わり父島は4mの津波とのことで、テレビでは東北がすごいことになっている。

湾内に差し掛かると、次々と船が沖へ出てゆきます。
港に向かって走っているのは僕たちのみ。
16時50分に接岸し、急いで荷を降ろすと車に乗り、そのままボートへ向かいました。
もうすでにほとんどの船が非難していました。
車を少しだけ離れた、少しだけ高い場所にとめて、急いでボートを出しました。

 沖へ出てエスコートのドルフィンテールに横付けさせてもらい、ほっと一安心。
スタッフが暖かい紅茶を入れてくれました。
横付けした瞬間、体の力が抜けたのを覚えています。
みんなと海を見ていると、どんどん潮が引き、前浜や青灯台の階段がみるみるうちに姿を現しました。
製氷海岸のエダサンゴも見たことがないくらいの広範囲で顔を出しています。
そして、再び水位が上がると前浜は、砂浜が見えなくなるくらいまで水が上がっていました。
同じような大きさの津波が何度も繰り替えされ、そのまま日没に。
風が上がって横抱きしてもらうのも厳しくなってきたのでボートを離して一人で待機することにしました。
この時点ではもうすぐに終わるだろうと思っていましたが、大きな間違いでした。

 漁港の入り口付近まで見に行ってみると、潮が渦を巻くように動き引いてゆきます。
まだまだ続くと思い、沖へ出てゆくと、
今度は小笠原ダイビングセンターの韋駄天から
 『カップラーメン食べるか~』
 『長くなりそうだから横抱きしろよ~』と声をかけていただき甘えることに。
そしてそのまま一夜を明かしました。
次の日も潮位は動き続けていたのですが、津波の来る間隔は長くなっていたので、森田さんのご好意でボートを預けたまま8時ごろに一時、自宅へと戻りました。
風呂を沸かす間、テレビをつけて愕然としました。
想像していたよりも悲惨な状況に目を疑いました。

39日ぶりの楽しみにしていた風呂でしたが複雑な思いでした。

 もしも、漁船の聟島出発が10分遅れていたら、船は入港せずにそのまま沖で待機したでしょう。
そうしたら、係留していた僕のボートは壊れていたでしょう。
岸壁には20リットル入りの軽油のポリタンク2個を入れたケースを置いていたのですが、20mほど離れた場所まで流されていました。おそらく水位はたいしたことなかったのでしょうが、津波の力に驚きます。

 自分はとても幸運でした。

 一人で非難しても友人たちの好意で食料も暖もとれ、交代で仮眠することもできました。
当初は『やっと父島に戻ってきたのに家に帰してもらえない~』
なんて言っていたのですが、
ちゃんと帰る家がある。
帰ってからも何の不自由もない生活ができる。
離れている家族の無事も確認できた。

こんな幸せなことはないです。

 次の日も津波注意報は解除されずでしたが、ウェザーステーションへ上がると凪の海にクジラが泳いでいました。
凪のやさしい海でした。
本当はこの日からクジラの撮影を始める予定でしたが、津波が起きたのもこの海だと思うと、とても海へ出る気にはなりませんでした。
しかし、のんびりと泳ぐ親子クジラを見ていると、自分ができることを大切にしてゆくしかないなあ・・・
という思いが心の中にじわじわと沸いてきました。

 帰宅してからPCを開くとガイド会のメーリングリストで、みながお互いのことを心配し、励ましていました。
宮城県・南三陸町、志津川のグランドスカルピンのスタッフの無事も確認されました。
川本会長はDeepBlueの田中さんへ連絡し、僕がボートで沖に非難していることを確認にしてくれたとのことでした。
そんな仲間たちの会話を見ていて、やっぱり、自分ができることをするしかないという思いが強くなりました。
 次の日、朝からキャンプの荷物、たまった洗濯物を片付け、パンクしていた船台のタイヤ交換など用事を済ませ、午後遅くなってしまいましたが、一人海へ出ました。
疲れが取れないのか、朝起きて、体が重かったのですが、どうしても今日のうちに海へ出たかったのです。


      _MG_4569.JPG


 こんなにも優しい海がありました。

柔らかな夕焼け空に親子クジラがゆっくりと、そして力強く泳いでいました。

被災地の皆さんが、海を優しく眺める日が来るのを心から祈っております。

僕は自分ができること、今、何ができるのか、何をすべきか、わからないのだけど、

精一杯生きようと思っています。

 福島のゆうこさん!

今回は残念ですが、いつまでもクジラと一緒に小笠原で待ってますから!

希望だけは捨てないでがんばってください!






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Last updated  2011/03/15 09:07:59 PM
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