|
カテゴリ:時事
自民党総裁選候補が出揃った直後、テレビの生中継で三人を呼び、公開討論というよりはインタビューをしていたのを見ました。
たまたま改憲問題の話題が出ていて、三人とも、「改憲すべき」と言ってます。 当然ながら、インタビュアーは、理由を尋ねましたが、この答えも三人とも、「もともと現行憲法は国民が制定したものではないので、戦後60年たった今、もともとの党の悲願であった自主憲法制定の道筋をつけるべき。」云々、というもので、さらに現行の改憲要件である「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」は条件がきつ過ぎるという点でも三人の意見が一致しています。 あんまり政治問題は専門からも興味からも外れており、支持政党もないんですが、なんかこう、小泉政権の改革路線から始まって、なんだかすごく不透明な形でいろいろなものが急激に変えられており、現実はさまざまな因果関係が絡まっているので、何かを変えればいいことわるいことたいてい両方あるわけですが、それをすごくわかりやすい看板(たとえば「改革」みたいな響きのよい大義名分ですね)を掲げて、議論を尽くさずにこっちと決めた方向にとにかく強引に進めているような印象が強いです。 もともと、多くの規制が、力を持たない一般大衆を保護する目的で作られており、本来そういうものをはずすためには十分な検討を行わねばならないような気がしますが、そういう話をせずに、ただ規制が多いから国民の自由を尊重するために規制緩和する、あるいは、規制という役人の既得権益打破、みたいなぶちあげ方をして、実は一番不利益を蒙るはずの中流以下の大衆の支持を得てしまっているのは、なんだかすごく怖い構図です。 労働法制ひとつ見ても、2004年の派遣法改正から始まり、現在検討されているホワイトカラーの裁量労働制も、企業側が労働者コストを低く抑えられるものです。余剰人員を抱えなくていいし、量・質ともに無理目の仕事を労働者に積み、なんとか消化できる優秀人材だけ正規雇用にしていけば、企業がわざわざ人を育てる努力などしたなくても、使える人材だけが残っていくので、一方的に企業側にHappyな制度です。 一方、これは、労働者の間に、ある意味ニートより悲惨なワーキングプア層を作り出します。気持ち悪いのは、それがまるで自己責任とか、各自の選択の問題のように見えて、実は彼らがそこから自力で這い上がるのはかなり困難なことです。 組織で一定年数働いてみてわかるのは、特殊な業務でない限り、学校に通うことで得られるスキルや資格などは、仕事をする上で実はまったく本質的ではなくて、組織の中で働き、そこの中の仕組みを覚え、業務フローの中のいくつもの違った段階の仕事を経験し、周囲から育てられ、支えられてはじめて、実質的に役に立つ人材になっていくもので、ほっといても自己学習して勝手に育つほどの逸材はごくわずかです。 これは、若干違和感はあるものの、一番近いのが昨今のビジネス書などでは「コミュニケーションスキル」という形で表現されるものが一番近いと思います。これはビジネススクールでこの講義を取ったからできるようになるという類のものではなく、ある程度歴史のある大きな組織・企業であれば、かなりコスト(と人事的配慮)を払っているはずです。 事務系派遣労働者には、こういう配慮がないし、そもそも「切る」前提の労働力で、代えが利かなくなっちゃ逆に困るので、いくら一生懸命仕事をしても、そこから抜け出すことがとても難しいのです。いくら「再チャレンジ」などと新たなかっこいい看板を掲げようが、根本的な構図を変えない限りこの流れは続くでしょう。 そもそも、先進国で異常な、サービス残業とか過労死とかが普通にある労働環境で、バブル崩壊で企業が大変だからといってこんなことをやってしまったのは失政だと思います。労働者が得られるはずだった有形・無形の利益を、企業側に人件費節約手段を与えることによって付け替え、これがかなりおいしかったから、景気回復してもさらにこれを進めて裁量労働制を、というのは狂気の沙汰です。 だいぶそれた話を総裁候補インタビューでの改憲問題に戻すと、三人とも、「なぜ改憲したいのか」という質問に対して、「自主制定されたものじゃないから」というおかしな答え方をしました。 明確な最終目的(たぶん九条改正でしょうか)があって憲法をいじりたいのに、その目的をはっきり言わずに世間的にとおりのいい「自主憲法じゃないから」という看板を掲げ、なしくずしに目的を達成するつもり、という姿勢が三人とも一緒なわけで、これがすごく気持ち悪くて怖い、という話です。本質的に民衆を愚民扱いしてるわけですが、今のところ小泉さんが取ったこの戦略、うまくいっているのがさらに気持ち悪い・・・。 この三人がアウトなら、じゃあ誰がいいのか、と妄想してみると、小沢さんもなんだか主張がいまいちな印象だし、福島さんに至っては言動がまともじゃないし、すでに引退されたらしいおたかさんにカムバック願いたいところです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.09.15 13:00:15
コメント(0) | コメントを書く
[時事] カテゴリの最新記事
|
|