紙とインク
「歴史の追試?」僕が不思議そうに聞くと、転校生の魔法使い少女は、言った。「学校では、2千年くらいしか教えないけど、私は、洪水前の10万年前とか20万年前の、人類の歴史も覚えないといけないの、近代までは手に負えない」「・・・」魔法使いは大変だ。・・・と言うわけで、僕はシャーペンに変身させられ、彼女の代わりに追試を解くことになった。追試のある教室で、彼女は何気に、シャーペンの僕を、指でクルクルと回し始めた。クルクルクルクル、凄い勢いで!「目が廻るよ!」その言葉をきっかけに、回転はさらに速度を上げた。「な・・・な・・・・な」遊園地の過激な乗り物を軽く超えるスリル。「何がしたいんだ!試験前だよ!」追試の教師が入ってくると、スリル体験はすぐに終わった。「今日はね、あなたの為に、特注のシャーペンの芯を作ってきたのよ。あなたがシャーペンな訳だし・・・健康を気遣って、カカオから直接作ったビターチョコレート芯だよ。徹夜で作ったから眠いよ。」「そんな暇があったら勉強しろよ!」彼女は、シャーペンのキャップをとった。そして、じーと芯を入れる穴を見つめた。「そ・・・そんなに見んといて・・・・」彼女はニヤッとすると、ビターチョコレート芯をシャーペンに入れた。「どう?」「ビター、身体の芯からビター」「今回は、あれも入れたからね」「あれって?」「あれよ、あれ(*v.v)。」「あれって、何だよ!」追試用紙が配れて、追試が始まった。追試は、前やった問題だし、そんなに難しくは無かった。僕が追試問題を解き終えると、彼女は指で僕をくるりと回し、ブレザーの内ポケットに仕舞った。「わお!」「ご褒美」内ポケットは、少女の体温と優しい香りに包まれていた。そして、波打つ彼女の心臓音が、僕の身体の芯まで伝わってきた。「生きてる・・・僕も彼女も」その音をじっと聞いていると、僕はだんだんと眠たくなった。変身って意外と精神力と体力を使う。「君をペンにして、歴史の問題を書き込む・・・・君の一部を使って、歴史を書き込む感覚・・・・なにか深い意義と意味があるような気がする」「・・・うん、そうだね」眠りに落ちながら、僕は相槌を打った。気がつくと僕は、彼女の部屋にいた。ふふふっ、初めての彼女の部屋。でも、まだ僕はシャーペンのまま・・・・いや違う、僕はボールペンになっていた。魔法使いの少女は、施錠してある日記の鍵を開けた。「ボールペンのインクと化した君の一部を使って、私の歴史を記す」少女はそう言うと、日記の真っ白なページに、少女の、今日一日の歴史を記した。少女は、日記を書く手を止め、ボールペンを、くるりと回すと言った。「何かを付加する事によって、意義とか意味は、その存在価値が出てくるの。この行為の象徴的な意義と意味が、何か解る?」え?僕の思考回路には何も浮かばなかった。「・・・・・解らない、何?」「教えなーい♪」少女は嬉しそうに答えた。おしまい↓押してくれると、いと嬉。(*^o^*) 短編小説 ブログランキングへ