18話 君は宇宙(そら)かける海賊♪
宇宙空間の演習空域を飛ぶミサイルは、イクの操る鋼鉄のドローンカジキによって迎撃された。「おお!」ルナメルのブリッジは歓声に沸いた。しかし、迎撃実験の管制機の反応はイマイチだった。5次元人の貴重性と、それに対する期待値の高さに対して、迎撃率50%は低すぎるらしい。ゼムの操縦はともかく、ドローウィンシステムに関してはトップクラスのイクの結果は、今後の研究に影響を与える。まだあどけない少女に、何を期待してるんだか!「最初はそんなもんだよ」エイミアはイクに声を掛けた。カステラーニさんは、説明口調で話した。「最終的には、ビーム攻撃の無効化も可能です。あのカジキの角の部分にビームが当たると拡散されます・・・・・・とは言え、五次元人の貴重性を考慮しますと、1つの艦を守るためだけに、1人を専属させるわけには行きません。あくまでドローンカジキは、ゼムに装備を前提としてます」あれ、わたしに説明してるの?わたし艦長補佐だよ、補佐!そう言う事は艦長に説明して欲しい。艦長はどこ行ってんだろう?ヒメネスもいない。あいつらまたイチャついている?「演習は、これで終了です」管制官は告げた。艦長がいないので、エイミアは仕方なく「お疲れ様でした」と敬礼をした。艦長ではなく少尉に過ぎないエイミアの敬礼に、納得がいかない様子があからさまに解った。アホ艦長め!ルナメルは、そのまま月面都市ネクタールに向かう為、月面上空を飛んだ。6分の1程度の重力なら、問題ないらしい。イクが、「毎日シェイクが飲みたい」と言ったので、食堂にカフェが設置された。さすが5次元人だ。簡単に予算がおりる。「やっぱ天然の重力は良いよね、安心する」イクが、チョコレートシェイクを飲みながら言った。その時、ブリッジの前に、何かがふわっと浮いてきた。イクは驚き、エイミアに抱き着いた。陸戦機動浮遊機バロックの群に囲まれてしまった。白兵戦部隊だろう。やはりごっついモノノフが多い。30人ほどの隊員がみんな敬礼 ( •̀∀•́ )b していた。( •̀∀•́ )b ( •̀∀•́ )b ( •̀∀•́ )b ( •̀∀•́ )b「なんなの?」みんな、めっちゃ鬼軍曹感を出してて怖いんだけど。「軍曹と上手く行かない少尉は早死にする」エイミアは、誰かの言葉を思い出した。作戦の成功を祝って?あれは上院議員案件だし、極秘扱いのはず。みんな揃って、若さゆえの過ちごっこ?トキトウは、モノノフ感に感動して自分も敬礼 ( •̀∀•́ )b ココは、トキトウのテンションに合わせて敬礼 ( •̀∀•́ )bカイムは、テンションが合わないのか目を逸らし、苺シェイクを飲んだ。エイミアは「やれやれ」と仕方なく敬礼をした。そして、自分から抱き着いたのではなく、イクの方から抱き着いてきた価値を感じながらにやけた。鬼軍曹より可愛い五次元人の少女の方が断然良いし!イクに抱き着かれると五次元人が見ている世界を、ちょっとだけ感じた。自分が見ている世界とは違う世界。陸戦機動浮遊機バロックの群れは、満足したのか、月面の彼方へと走り去って行った。なんなの?☆彡月面都市ネクタールにつくと、シェーラー家に、ココが呼ばれた。きっとルキ家案件だ。のでエイミアも一緒に行くことにした。シェーラー家は、月面都市連合の盟主と言っても良い存在だ。シェーラー家は、まるで宮殿だった。柔らかな絨毯の上を歩いていると、マリアナシスターズらしき一団が現れて、ココを拉致っていった。エイミア助けてー口を塞がれココの言葉にならない声の残影が、エイミアの脳裏に残ったが、「まあいいや」とエイミアは1人で、シェーラー公に謁見した。シェーラー公の秘書官が、1人のエイミアを案内してくれた。一応メインのルキ家のココがいない事は、気にしていないらしい。少しは気にしてあげて。謁見場所は、シェーラー公の執務室。机の上に初孫の写真があった。初孫の前では、ただの老人だった。側近は誰もおらず、シェーラー公1人だった。1人だと予想以上に老いが目立っていた。それでも老人の目は鋭かった。「月の遠い未来の話をしよう」「はい」「どこまで把握しておる?」「ほぼ把握しております」「地球連邦から奪った資材は、すべてルキ家に払い下げる事を許可する」「了解しました」「それをどうするかは貴公らの自由だ」地球侵攻作戦が失敗した以上、外交の交渉条件は厳しくなったはず。ここに来て国力の差が、重く圧し掛かる。連邦との和平交渉の詳細は不明だが、条件によっては、幾つかの資産の差し押さえの可能性もある。今のうちに資産を連邦の手の届かない所へ隠しておけ、カードをすべて晒す必要はない。って事か。ルキ家なら、その後の月の為に資産を使うだろうと、信頼はされているらしい。「新しき時代のために」エイミアは敬礼した。「貴公には我が親衛隊を預けよう」シェーラー家直属の親衛隊は、最強の白兵戦部隊と言われる。「もう必要ないからですか?」エイミアは、そんな視線を送った。シェーラー公の視線は否定しなかった。あの陸戦機動浮遊機バロックの群れは、そう言う事か。退出し、柔らかい赤い絨毯の上を歩いていると、ココが現れた。「エイミアー、仮面をした知らない人に、おむつ履かされそうになったよ。めっちゃ怖かった」「そう大変だったね」エイミアはココの頭を撫でた。仮面をした知らない人・・・色々順調に進んでいるようだ。エイミアは、ココがベルトをしてなかったので、自分のベルトを渡した。「いいの?」「いいよ」「ふふ、エイミアのベルトだ♪」まだルキ家には利用価値があるらしい事が解った。それは信頼。そのルキ家の少年が、ベルトを付けていないなんて、かなりはしたない。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【イク】五次元人【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。