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最近、夕暮れ時の街でマスクをつけた女が出没します。
彼女が近付いてこう尋ねます。 「私キレイ?」 訊かれた側が「キレイ」だと答えます。 すると、彼女はマスクをがばっとはぎとり、叫びます。 「これでもか~!!」 なんということでしょう。 彼女の口は、耳元まで裂けていたのです。 彼女は「口裂け女」だったのです。 昨日の日記で、「口裂け女」のパロディチックなことを書いたのだけど(若い世代の人にはわからなかったかも……)、上記のものがオリジナルの「口裂け女」伝説。 いわゆる「都市伝説」のひとつとして名高いですよね。 私が小学生のころ、とても話題になりました。 初めて聞いたのは、大阪にいたころ。 私は小学生の時、一時期父の転勤で大阪に住んでいたことがありました。 ある春の日、学校にいくと、教室では「口裂け女」の話題で盛り上がっていました。 「夕方、○○(近所の地名)のあたりにいるらしいよ」 「『私キレイ?』と訊かれて『キレイ』と答えるとマスクをとって、襲ってくるらしいよ」 「じゃあ、『ブス』って答えればいいの?」 「そう答えても襲ってくるんだって」 「じゃあ、どう答えればいいのよ」 (上記の会話は、大阪弁でなされたはずなのですが、もともと東京育ちの私はもう覚えてません) 口が耳まで裂けている人なんて……、と思いながらもここは子供。 みんなかなり本気で怖がっていました。 私も小さい頃から怖がり。 なので、夕方は一人で外を歩くのはやめよう、とまじめに思ったし、両親が一人で外出しているときに道で出くわしたらどうしよう、特に父が夜遅く会社帰りに会ったらどうしよう、なんて親思いの心配までしてました。 「口裂け女は、整形手術に失敗してあんな顔になった」 「実は3姉妹」 「赤いコートを着ている」 そんなディテールまでまことしやかに囁かれ、学校中がその噂に盛り上がった記憶があります。 でも、実際に会ったという人の話はきかないし、口裂け女がマスクをとって襲ってきたらその後どうなるのか、という話もきかない。 それに、3姉妹が、3人とも整形に失敗するなんてことがあるのか。 まあ子供だったから、そんなことも気にせずに、想像だけで恐怖感を高めていたのですが……。 そして、噂が最高潮にあったころ、私はまた父の転勤で東京に戻ることになりました。 「口裂け女から逃げられてよかったね」なんていう人もいました。 でも、私もひそかにそう思ったんです。 何せ、相当の怖がりだったから。 そして東京に戻った私。 普通に転校生として緊張はするものの、恐怖から逃れて平和に暮らし始めました。 ところが、1週間もしないうちに、教室はある噂で持ちきりになりました。 「ねえねえ、最近●●(近所の地名)あたりで口裂け女が出るんだって」 「えっ?」 私は、また恐怖のどん底に突き落とされました―― なんてことは、ありませんでした。 逆に、一気に冷めてしまったのです。 「口裂け女が、大阪から自分を追って東京までやってきた」 なんて自己中心的な思い込みに陥ることなく、大阪で活躍中の人間がこんなところにいるはずない、と冷静な判断を下すことができたんですね。 話を聞いていると、大阪で出没期間とこちらでの出没期間が重なっている。 いくら3姉妹でもそれはないだろう。 それも、ここは都心からはいくらか離れた東京郊外。 住んでた大阪の土地も、やはり郊外だった。 そんな僻地同士を行ったり来たりする妖怪はありえない。 と、子供ながらに考えたわけで。 でも、せっかく恐怖で楽しく盛り上がっているクラスメート達に水を差すようなまねは、転校生としてはできませんでした。 だから自分だけの秘密にしてました。 子供なりの処世術ですね。 妹だけにはこっそり話して、怖がらないように諭しました。 それから「都市伝説」といわれる噂話が持ち上がるたびに、私が冷静に対応できたかというと、やはりそんなことありませんでした。 いちいち、ちゃんと怖がってました。 大人になってからも、香港旅行に行く前には、会社の上司からかの有名な「香港のブティック試着室の怪」の都市伝説ネタで脅され、まじめに怖がっていました。 一緒に行く友達に、 「こんな話聞いたよ。こわいよ」 と訴えても、鼻であしらわれましたが……。 しかし、こういう伝説って、どこで発祥するんでしょうね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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