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カテゴリ:幼かった頃
疎開していた田舎での暮らしは、母はいつも開墾畑で
一日中働いていたから、 子供達は、いきおい、お婆ちゃんとの生活になっていたが、 夜だけは、母の隣で眠ることができた。 母と一緒に眠れるのは、姉2人と私の、女の子だけの特権だった。 母は、毎晩お話をしてくれた。それは、童話だったり、 母の作ったお話だったりするのだ。その中で、一番の人気は、 母の創作の 「迷子の子ヒバリ」の話だ。 それは、毎晩私たちが、繰り返し繰り返しねだったお話。 ある日子ヒバリは、麦畑をお散歩に行ったの。でもね、 迷子になってしまったの。 おかあさ~~~んおかあさ~~~んと呼んだの。 だけど、お母さんは見つからなかったの。 おかあさ~~~ん、おかあさ~~~んと子ヒバリは 何度も何度も呼んだの。でも、麦畑の麦の穂が、風にゆれて さらさらさらさら言うだけなの。さらさらさらさら言うだけなの。 おかあさ~~~んおかあさ~~~んおか~~~~さ~~~~~ん 子ヒバリは泣いたの。 そして、母は、悲しい悲しい声で ♪ お家忘れた子ヒバリは、広い畑の麦の中、母さんたずねて 鳴いたけど、風に穂麦が鳴るばかり♪ の歌を歌うのでした。 母の声は、少し震えていて、哀しい哀しいふし回しなのでした。 すると、3人の娘たちは、 母に取りすがって泣きじゃくったものです。 私はあんなに悲しい物語は後にも先にも聞いたことがない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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