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カテゴリ:幼かった頃
母の実家の前の道路を隔てて、庄屋さんだった家があった。
その家の中は、我が家よりもよほど広く、大きな土間が広がっていて、 家の中に、弟が落っこちた深い池があったり、 子供達が学校ごっこをした、すてきなガラス張りの温室もあった。 そして、そのまた奥に小さな離れがあって、そこが、 この家の長男さんの療養の家だった。 私達子供は、みんな彼が大好きで、「ひろきっちゃん」と呼んでいた。 彼は、お坊ちゃまで育ったからか、昔の戦争の時、出征して、 過酷な軍隊規律に耐えられず、心の病気になったのだった。 彼は、人形を創ることに明け暮れていた。 窓からのぞくと、 作った人形が、所狭しと、天井から釣り下げられているのが見えた。 子供達は、時々ひろきっちゃんに人形をねだった。 「あれ、ほしい~」というと、 「あげられません、あげられません」 と言いながら、かならず、とってくれるのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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