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カテゴリ:幼かった頃
終戦で、父が復員して来たとき、お婆ちゃんが、母にこう言ったという。
「男の人はね、妻子が困窮しているのを見るとどんなことをしてでも 養おうと思って、つい、悪いことに手を出してをしてしまうんだよ。 だから夫の前では、あまり窮状をみせないようにね」 いつもは、じゃがいもを細かく刻んでまぜたご飯だったが、 それ以来、父が帰って来る日は常にご馳走だった。父は安心して、 妻子を置い会社再建に走りまわり、はまりこんでいて、 時々帰ってくるだけだった。 しばらくすると、父は、以前の同僚たちを連れて帰ってくるようになった。 それは、非常に生活に窮している人々だったから、食べさせてあげて、 おみやげを持たせるのだった。 そういう暮らしを続けているうちに、ある日父は、 お婆ちゃんと母を前にして、意見したという。 「日本国中の人々が皆、困っているときに、この家だけ、贅沢にしてはならない」 その時、お婆ちゃんは「潮時だ」と思ったそうだ。 その夜、お婆ちゃんは母に 「そろそろ夫と自活したらいいね。」と告げた。 母は父に「貴方と一緒にがんばりたいから、家族を一緒に連れて行って」と。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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