会計参与について、私も考えた!!
今まで,会社の役員というと,取締役や監査役が一般的でしたが,来年から 会計参与 という制度ができました。会計参与は取締役または執行役の方と一緒に会社の計算書類を作成する任務を負います。この制度の狙いは、中小企業の計算書類の正確性や信頼性を高めようということにあるといわれています。このため、会計参与は,会計の職業的専門家である税理士,税理士法人,公認会計士,監査法人に限られています。いま、会計の業界では,この会計参与をビジネスチャンスととらえるグループと、危険極まりない制度で,会計参与には絶対就任しないというグループに大きく分かれてきています。この大きな原因の一つに会計参与の責任があります。会計参与は,株主代表訴訟に対しては,報酬の2年分を上限とすることができますが,第三者に対しては,上限がないからです。そこでよく取り立たされているのが,たとえば、会計参与が作成した計算書類を信じて融資した銀行が、その会社が,倒産したときに責任を追及してくるのではないかなどといった心配です。 この点について私なりに考えてみました。そもそも、会計の発達の歴史の中に、「責任と解除」の二つの機能がうまく組み入れられてきたといいます。イギリスの荘園時代に、領主は、小作に自分の畑の耕作を任せて,一年の終わりにその年の収穫高を報告させたといいます。このときに、小作がきちんと申告したか,チェック(今でいうところの監査)をしたのが、会計監査の始まりといわれています。こうして、英国では責任を解除してあげる機能としての「監査」が発達していきました。 現在でも、英国・米国の流れをくむ国では、中小企業まで会計士の監査を受けるのがあたりまえとなっています。日本にある外資系企業でも,1年が終わると経理担当者は,「私がきちんと仕事をしてきたことを証明して欲しい」として、積極的に監査を受けています。このようなことと会計参与を比較してみますと、会計参与には「解除」機能がありません。そこで、会計参与はだれの「お墨付き」を得ることなく、計算書類を公開せざるをえません。そうなると自主的に誰かにチェックしてもらわないうちはこわくて計算書類の公開などできないのではないでしょうか。ところが、監査法人や公認会計士は,このよう機能が必要なことを知っていますので,自主的にチェックの機関を作るのではないでしょうか。現在でも、監査法人には、監査意見の表明にあたっては,審査部門がチェックを入れています。これの会計参与版を作れば、すぐにでもチェックができます。 他方、税理士や税理士法人ではどうでしょうか。複数の税理士が集まる税理士法人では,審査部門を作ることは可能でしょう。ところが,一人で開業している税理士ですとなかなかチェックまで、できないのではないでしょうか。そこで、私は税理士会や支部の中に、審査部門を設けてみたらどうかと考えています。そして、たとえば,会計参与の報酬として,毎月の税務顧問報酬の半年分をお願いできるとして、そのうちの2か月分を審査部門に支払って、お墨付きをもらうのはどうでしょうか。英国・米国の監査の世界では,厳格な監査の一段下の監査としてレビューという制度があります。このような制度を参考にして、是非とも、チェック機関を作っていただきたいと思います。個人的には,会計参与の責任を「解除」してくれる制度なくして、一人で開業している税理士が,会計参与に就任するのは・・・・・・・・清水善規