交わらないレール
ライブドアの事件は、宮内氏が税理士だったことから、関心を持ってニュースを見ていた方も多かったことでしょう。私もこの事件で、あらためて、合法と違法の境目、節税と脱税の境目を考えさせられました。皆さんは、合法と違法の境目、節税と脱税の境目をどのようにとらえているでしょうか?私は、次のようにとらえています。合法や節税の世界の端には一本のレールが走っています。このレールと併行して,違法や脱税のレールが走っています。この2本のレールの間には隙間があって、この2本のレールはどこまで走っても近づくこともなければ,遠ざかることもありません。あたかも電車のレールが二つの世界を分けているような世界です。合法や節税の世界のレールの内側で、経済活動をしている限りは,何ら問題は発生しません。ところが、法令・政令や通達を勉強している人ほどこのレールの上に乗ってみたくなるのです。このレールの上に乗ったとたん、悪魔のささやきが聞こえるのです。「 君は見ただろう!!違法や脱税の世界との間には隙間があって、その隙間までなら誰にも逮捕はされないぞ!! 一般の人はレールの内側にいるからこの2本のレールの隙間は見えっこないよ!!この隙間はレールの上に乗ったものだけが見れる特別な世界なのさ!!だから、グレーゾーンまで進みたまえ!!」こうして、ライブドアの幹部は、限りなく違法のレールに近づいていったのだと思います。バブル以降、我々の業界では、組合方式による航空機のリース、ワンルームマンションによる節税策、上場株式の額面現物出資とクロス取引による節税策、などなど、2本のレールの間で行われた手法は数限りありません。けっしてライブドアの事件が特殊なわけではありません。海外法人まで使った某出版社の事件などは,まだ、裁判で争われています。今後、増税の論議が高まるにつれて、クライアントからの節税の要求に、どう答えていくか?頭の痛い問題となっていくでしょう。無理な節税を頼まれたとき、私は、行為計算の否認を念頭に「 一つ一つの経済行為が合法的でも、取引全体を見たら明らかに無理な節税策になっているような案には賛成しません。それが仮にナスカの地上絵のように空の上のかなたから見ないとわからないような案であって私は賛成しません。なぜなら、取り締まる側はロケットを飛ばしてでもその絵を見るからです。」と、答えています。以前、ある弁護士の方が言っていました。 「法の淵を歩くものは許さない。」と。上記の例でいうならば,レールの内側まではよいが、レールの上に乗ってはいけないということだそうです。増税論議の高まる中,品格あふれる節税に取り組みたいものです。清水善規