原田マハに 恋をした
TVの対談番組を観ていたら、ある 若い女優さんが 原田マハを 絶賛していた。 原田マハの経歴を見ると 巴里美術館・森美術館創設・ニューヨーク近代美術館等に勤務していたとのこと なぜか 気になり 「楽園のカンヴァス」 購入してみた。 「楽園のカンヴァス」サスペンスではないのだけれど どんどん引き込まれていく。 ダン・ブラウンのような 殺人事件があるわけでもなく、秘宝の争奪戦があるわけでもないけれど美術ミステリーなのである。 画材も買えない画家が,友人が描いたキャンバスの上に絵の具を塗りつける。謎解きの解明は 見事としか言いようがなかった。 私は 本を購入するときには 最後に書かれている参考文献を見るようにしている。 歴史ものや 人物伝・ノンフィクションについては、この参考文献が記載されていないものは、まず読まない。 何故かというと、この一冊を書き上げるために これだけの本を読みこんで書き上げたのですよというメッセージが 込められていると思っているからである。 「リーチ先生」を読んだ。皆さんご存じの通り陶芸家バーナード・リーチの物語である。 ここにもミステリーが隠されていた。 いわゆる 伝記小説なのだが 実在しない人物を織り交ぜているのである。小説なのだから「何でもあり」と思いたいけれど史実を知らない私には実在している人物のように思えた. 「これってありなの」 実在しない人物だけれど とてもリアルに描かれ 日英の懸け橋となっていた。 「太陽の棘」を読んだ。いわゆる沖縄ものだ。参考文献を見てみると沖縄戦の文献が多くあった中で沖縄美術文化に関する本が並んでいる。 今年1月に160回直木賞をとった「宝島」もそうなのだけれど,戦後の沖縄を描いている。 どちらもミステリーものだけれど「宝島」は米軍から物資を盗む「戦果アギャー」たちから見た、沖縄本土復帰の歴史と政治のドラマがあった。 「太陽の棘」は,ニイムラ美術村に居住する美術家達が「生きるために描く絵」と「本当に描きたい絵」との葛藤を米軍医師の目を通じて描いていた。 戦後の沖縄を美化するでもなく理解しようとするでもなく,日本と日本人をオブラートくるんでいた. 「暗幕のゲルニカ」を読んだ.スペインに行ったとき,この絵の前でガイドがとても熱心に説明してくれたことを思い出した。 ピカソの最高傑作のひとつと言われている。すべてがモノトーンで ゲルニカの惨状を描いているらしい。 というのも 私にはピカソはとても理解不可能なのです。 イラクが大量破壊兵器を開発しているとして,パウエル国務長官が国連安保理のロビーで記者会見を開きましたね。 実は その後ろに掲げられていたのが,ピカソのタペストリーの「ゲルニカ」だったのです. しかしその絵には暗幕が掛けられていたのです. 原田マハさんは これに衝撃を覚えたのでした. アートに戦争を阻止する力があるのだろうか・・・・ 参考文献を記載していない本は 基本的には 読まないのだけれど 原田マハさんのフィクションの世界は、文化 芸術の心の豊かさ そして勇気を与えてくれる。 「困難に向かい合ったとき、もう駄目だ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙が止まっている。二十四時間後の君,涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している」 「キネマの神様」「まぐだらのマリア」「本日はお日柄もよく」「異邦人」まだまだ紹介したい本がたくさんあるけれど, お盆の期間中に 私は 原田マハに 恋をした。 安西節雄