葉室 麟
大河ドラマ「晴天を衝け」 22日は 「飯能戦争」でした。 残念だったのは 史実は まったく語られず ただ 成一郎がかっこいい殺陣を演じていました。 平九郎は夜襲部隊を率いて智観寺に布陣を置いていましたので 本体とは戦場が別れていました。 開戦後 5時間ぐらいで総崩れとなり 渋沢成一郎と尾高淳忠は、領民に道案内をしてもらい、囲いを抜け、秩父は目指さず、上州の伊香保に逃げ延びますが 平九郎は、皆と逸れて、一人で逃亡していました。 NHKは なぜか平九郎の死については 多くの時間を割き ドラマ仕立てとして盛り上げていましたね。 ドラマとして 絵になるからでしょうか・・・・ さて 成一郎は 函館戦争では 土方歳三と かっこよく会話していましたが 明日 総攻撃という 前日に 脱走して 湯の川で 投降しています。 多くの若者たちを 死に追いやった成一郎は どうしても 好きにはなれません。 高良健吾さんは いい役者さんですよ 『花燃ゆ』の時の 高杉晋作は よかったですからね。 NHKは 年末までの放送時間が 限られているのでしょうが もう少し 丁寧な 時代考証をしてほしいものです。 だって この時代は しっかりとした 資料が 残っているのですから ところで 慶喜はなぜ謹慎の場所に寛永寺を選んだのか 寛永寺の門跡が、天皇の親王「輪王寺宮」だった事が大きかったのではないのか と 考えるけれど。 京の天皇に 何かが有った場合のバックアップとして天皇の身内を寛永寺置いていたとも言われています。 「輪王寺宮」と 皇女「和宮」が 明治維新以降 歴史から遠ざけられているように思えてなりません。 「歴史は勝者がつくる」といいますが 何が 真実なのか 知りたいところです。 葉室麟の最後の作品となった「蝶のゆくえ」を読んで いて あることに気づきました. 「自分が 自分らしく生きる」をテーマに 精神的自立を 明治時代の近代的女性の生き方を託しています。 話は変わりますが 1986年に放送されたNHK連続テレビ小説「はね駒」ヒロインで主人公 りんを演じたのは、斉藤由貴さんでした。 平均視聴率は41.7%と 驚異的数字を 出しています なので観て記憶にある方も おられると思いますが そのストーリーに似た描写が この本の中に 出てくるのです。 「はね駒」の りんさんは 仙台の宮城女学校を卒業して 日本で最初の女性新聞記者(磯村春子)となった人です。 「蝶のゆくえ」の主人公 星良さんは 同じく仙台の宮城女学校を卒業して東京の明治女学校に入ります。 本のなかに 明治女学校で教鞭をとっていた 島崎藤村の あの 有名な「初恋」の詩が出てきます まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき前にさしたる花櫛の花ある君と思ひけり 教え子に恋をしてはいけません・・・笑い 主人公の 星りょうさんはのちに 相馬愛蔵と結婚して相馬黒光と名乗り のちの新宿中村屋の創業者です 中村屋サロンといわれるように 美術、演劇、文学、その他広い分野にわたる多彩な顔ぶれが集まるようになりました。 葉室麟は 幕末・明治で欠けていた部分 そこには必ず女性がいたことを書きたかったのかもしれません。 勝林太郎も 渋沢栄一も 妻妾同居を していますが 明治時代にも 島崎藤村や有島武郎 北村透谷のような 純粋な 恋の物語もありました。 残念なのは 葉室麟の作品を 今後読めなくなったことです(悲しい)。私と 同じ年なのです。 安西節雄