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テーマ:暮らしを楽しむ(388227)
カテゴリ:プライベート
私の家族は揃いもそろって熱中症である。
とはいっても、健康上の状態のことではない。 母は趣味を数え上げると、芸を相当極めているものだけで、 両手両足を使っても足りないほどもっている。 一部をビジネスにまで発展させているやり手ババア調で、 ついでにいろいろ問題も起こす。 先日、実家からめずらしく電話があり、出ると、沈んだ母の声。 「癌かもしれない」という。 手にシコリが見つかり、掛かりつけの医師に観てもらったが レントゲン等をとるだけとって、検査結果待ちという。 数日後。再度電話。 出ると、今度は、明るくももったいぶった母の声。 すごーくひっぱって、思わせぶりに検査結果を報告する。 「筋肉の塊だった」らしい。 心配した分、その落ちと芝居がかった経過説明にはむかついた。 ここ10年以上、はまりにはまっているパッチワークで 手のひらに筋肉の塊ができてしまい、それが腫瘍と勘違いされたという。 ほんとかよ?という馬鹿馬鹿しい話だが、本当だった。 たしかに、パッチワークに関しては、すごい情熱をもっていて、 もう数年前から、母の作品が有名デパートで販売されるほどになっている。 教室に通って勉強した成果だが、通常の大企業勤務の仕事のほかに、 彼女のライフワークであり夢であるサイドビジネスと、 ボランティアでやっている小学校でのクラブ活動指導という仕事を 同時平行させながらのことであった。 小学校のボランティアも、母のサイドビジネスの成功が マンモス小学校の校長の耳に届き、校長から直々に依頼された という破天荒なものだ。 家事も完ぺき主義だった母が、ようやくすべての用事を済ませて、 深夜何時間でも針をちくちくさせていたのを 子供のころ、なんども見ていた。 で。今回。 母は医者からストップをかけられたのだが、でもやめられず、 隠れてときどきやっているらしい。 しかも、ついやりすぎるらしく、炎症してしまい、 医者に厳しく指導されるのだという。 ちなみに、趣味はこのほかにもスポーツ、茶道、華道、旅行、 料理、ガーデニング・・とたくさんあるわけで、 企業勤めは上がった今となっては、 いくつもの教室に同時に通ってたのしんでいる。 ならば、わたしなどは、ほかのに比重を移行すればいいのに、 と電話を聞きながら思ってしまうが、そううまくはいかないらしい。 思い立ったら吉日らしく、そのまま始めずにはいられないようだ。 さて。弟。 この人も小さなころから、子供らしくいろいろな趣味にはまっていった。 切手、天体観察、鉄道、カード、といった当時小学生で 流行っていたものには、糸目をつけずずいぶん投資していたと思う。 一回はまると、部屋中がそれ一色になっていった。 で、大本命の波が小学生後半にきた。 テレビゲームだ。 彼は家庭崩壊を呼び起こすほど、のめり込み、 毎期の試験勉強はもちろん、受験勉強もそっちのけになっていった。 小・中学生時代の魂を捧げたかのようで、 おかげで子供のころの彼は、成績不良がひどかった。 そのため、中学時代は両親とおそろしいバトルを繰り広げていたし、 わたしも、彼の将来をそれはそれは惨めなものと想像して、 不安にも不憫にも思っていたものだった。 ちなみに、わたしが、念書というものを知ったのはこのころの彼のおかげだ。 彼の部屋には「もう、テレビゲームをしません」という張り紙が 良く張られていた。 彼の高校時代以降については、 私は大学入学とともに一人暮らしを始めたので良くは知らない。 が、似たようなものだろう。 ともかく、食事もせず、夜は一晩中寝ずに、 両親に隠れてゲームをして遊んでいた。 学校もいかずに友人とゲームをしていたりもしていた。 異常、と呼ばれていた。 で。現在。 彼は世界最大の大手コンピューター会社に勤めている。 私などは、彼は現実から逃避して、 ゲームばかりしているものと思っていたので、驚きだ。 いまは、隠れもせずに、いやむしろ、誉められながら コンピューター遊びを楽しんでいる。 思った分だけ、投資できる環境を手に入れ、 それはそれは満足そうだ。 とても美しい女性と大恋愛の末に結婚し、 元気いっぱいの男の子も誕生して、 過去の「駄目人間」のレッテルはどこへやら・・ の暮らしぶりである。 さて。父。 現役のころは趣味らしいものを披露しなかったが、 ここにきて狂ったように絵を描いている。 大学時代、美術部でコンクールに入賞していたとか いなかったとか。 若いころは勤め先のとても大きな組織で、頼まれて、 大部数発行の会報誌表紙を油絵で描いていたらしい。 現在は海外旅行に年3回ほど行き、そのたびに、部屋に篭って かなり大きなキャンバスに風景画を描き続ける。 2週間に一枚のペースで、10枚も20枚も、 ひとつの旅行に対して描き続ける。 贔屓目が入るが、良い絵だと、わたしも思う。 良く、旅行に同行している母の姿を風景画に入れ込んでいるのが、 わたしからすると、いい感じがする。 とはいえ、父も毎日毎日休まずに大きな絵を大量に描き続けるので、 家は絵で埋め尽くされている。 ・・正確には、母の手芸作品と父の絵画で埋め尽くされている。 玄関から始まって、各部屋はもちろん、トイレ、廊下、台所、 縁側まで、まるで展示会のようになっている。 パリの街並み、ベニスの運河、ドイツの森と古城、 スイスのロマンチック街道、アメリカのグランドキャニオン、 オーストラリアの大草原、イギリスの田園風景・・ と世界の名所旧跡に さりげなく母をたたずませた油絵が 鮮やかな筆致で並んでいる。 ともかく、食事のとき以外は、何時間でも夢中で 毎日毎日飽きもせずに描き続けているらしい。 で。 これがまた、父にはそのつもりがなかったそうだが、 人づてに噂になって、売れるらしい。 父の若いころの夢のひとつが画家だったそうで、 それが今、少し形をかえて叶いはじめているらしい。 うーん。 やっぱり、 結果は後からついてくる。 ともかくも熱中せよ、という教訓が聞こえてくる。 だから、わたしは、バランス屋ってのをあまり信用していない。 小賢くて器用なことが尊ばれる世の中では、 全体的に何でもバランス良く、 常時ほどほどに優秀であることが望まれることがあるが、 わたしはバランスってそんなに重要なことではないと思っている。 ともかく。 我が熱中症のひとびとは、みんなすごいパワーだ。 なんか、いつもしたいことがあるらしく、 いい歳をして、延々と夢を語っている。 だから、とても元気で若い。 良く、笑う。 わたしは・・このごろは ボチボチなので、これからがんばるぞ。と。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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