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ネタを仕込み中なので、今回と次回は今年8月に訪れたフィリピンの刑務所について書いてみます。
1.モンテンルパ刑務所の実態 黒い鉄の扉をくぐるとすぐ、炎天下の中庭でバスケットボールの試合をする光景が目に飛び込んできた。多くの観客が白熱した試合を見ようと周りを取り囲んでいる。野次を飛ばす者もおり、かなりの熱気だ。 少し歩くと、今度はビリヤードで遊ぶ男たちの姿があった。真剣だ。私が興味深そうにゲームを見ていると、物売りがよってきた。売っていたのは、ファーストフード店で出るプラスチックごみを加工して作ったという、動物の形をした置物。面白いので1つ買ってみた。10ペソ(約20円)。 さらに歩くと、市場やサリサリストア(小売店)があり、食料品から日用品まで自由に売られていた。 一見すると、そこは一般的なフィリピンの町と何も変わらなかった。ただ一つ、町の周りが‘高い壁で囲まれている’ということを除いては・・・。 モンテンルパ刑務所。マニラから南方にバス、ジープニーを乗り継いで約40分ほどの所にある。 山下奉文・フィリピン派遣軍総司令官ら、日本軍の将校や民間人がフィリピンでの虐殺行為の罪を問われ、戦後この刑務所に収監されたことで日本でも有名だ。「東京裁判」と同じ時期に、米軍総司令官による軍事裁判「マニラ法廷」が開かれ、197人が有罪判決をうけ、80人が処刑されている。 フィリピンで最大規模の刑務所とされ、現在は無期懲役、死刑判決などの重い罪を言い渡された男性囚人約5000人が収容されているそうだ。 刑務所というより、「一つの町」という印象を受けた。前述したように内部は「何でもあり」の状況だ。日本の刑務所のような厳しい規則はなく、義務的な労働などもない。町中を歩くように、囚人たちは所内をブラブラしており、お喋りを楽しんでいる。携帯電話をもっている囚人も多く、外部とのコンタクトは自由に取れるようだ。 持ち物検査はあるものの、面会を希望する家族は比較的簡単に出入りできる。実際、私も見学者として容易に中に入ることが出来た。 このように、刑務所とはいっても、外の社会との隔絶はあまり感じられない。そのためか、凶悪犯罪の囚人たちが、まわりにウロウロしているというのに、あまり不安を感じなかった。 中を案内してくれたのは日本人教会のMさん。面会するためによく刑務所には訪れるという。キリストの教えを囚人たちに説き、更生を促しているそうだ。 その彼の話を聞いて驚いた。所内は上下関係のある社会で、全てお金次第だということだった。 囚人たちはいくつかのグループに分かれており、それぞれボスが仕切っている。ボスは囚人達を子分にしており、上納金を取っているのだ。 そして大金を持っている権力のあるボスの中には看守を買収している者もいるらしく、売春もクスリも存在する。逆に上納金の払えない貧しい囚人は働かされるそうだ。 さらに刑務所に関する面白いエピソードを本で見つけた。 レイプ事件で終身刑を受けた下院議員が、刑務所内にクラブハウスつきのテニスクラブ、商店街を開設。所内に特別居宅を建てて住んでいるというのだ。多くの囚人を子分として使っている。彼は所内の建物を修復したり、道路を舗装したりして、受刑者のためにベッドまで寄付。所内の市長のような存在になっているということだ。(「現代フィリピンを知るための60章」明石書店) 「金=権力」という構図が所内にはしっかりと定着している。「富めるものはひたすら富み、貧しきものはひたすら貧しい」という、フィリピン社会の縮図のような場所だ。 日本では最近、看守が囚人に対して拷問のようなことをして死亡させた事件があり問題になった。悪人だからといって、人権を無視したような罰を課すことは確かに問題だ。それに厳しい規律を課すことのみが更生だとは、必ずしも言えない。 しかし被害者側にしてみれば、あまりにも自由なこの刑務所の状況は許せないのではないか。私は、「更生とは何か?囚人にとって必要なのことは何か?刑務所とはどうあるべきか?」ひたすら考え込んでしまった・・。 その後、所内の教会へ。 そこで囚人として収容されている、日本人の高島さんに会った。彼から刑務所内の規律の問題だけではなく、フィリピンの警察や司法の腐敗という問題を聞くことができた。 ウワサ以上にそれは、人権侵害ともいえるひどいものだった。 さて、次回は続編「2.賄賂社会~フィリピンの警察と司法~」を書いてみます! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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