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カテゴリ:フィリピンを知る
<もう一つの公用語、英語>
突然ですが、英語を話す人が多い国を挙げてみて下さい。 「アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・・・」 たぶん多くの方はこのように連想されたのではないでしょうか? でも実は世界で3番目に英語を話す人が多い国はここ、フィリピンなんです! 街を歩いてみるとわかりますが、店の看板や道路標識など至る所に英語が見受けられます。政府文書を初め、出版物なども英語がほとんど。高等教育機関では英語で授業を行うことも少なくありません。僕の通うフィリピン大学でも政治・経済などの講義は英語が一般的です。 僕が最も驚いたのは映画館。フィリピン人たちは字幕無しのハリウッド映画の中のジョークを理解し笑っていました。 確かに英語とはいってもフィリピン独特の訛りはあります。(現地語のタガログ語と英語が混ざっているため、しばしば「タグリッシュ」とも言われます。)それでもコミュニケーションにそれほどの支障はありません。他のアジアの国々に比べたら、英語力は相当にハイレベル。フィリピンはアジア有数、いや、世界有数の英語国といってよいでしょう。 <なぜ英語がはなせるのか> ではなぜ英語がこれほどまでに普及しているのでしょうか?これはフィリピンの歴史と大きく関係しています。 フィリピンは約40年間アメリカの統治下にありました。この時代アメリカは多くの英語教師を派遣し、英語の普及にかなりの努力を払ったといいます。 それもそのはず。前回書きましたが、多言語社会であるというフィリピンの事情があり、共通語が必要だったことにあるようです。また現地語の教師でさえも不足していたという事情も影響していました。 戦後になっても英語は重要視されます。 一つはアメリカとの経済的な関係が強いこと。一つはグローバリゼーションが進む現代への対応。そしてまた、フィリピンは国内の雇用機会の不足から海外で働く人が多く、そのためにも国際語としての英語は不可欠とされてきたためです。 さて、英語が一般的に通じるとはいいいますが、もちろん個人差、地域差はあります。 中でも一番通じるのはインテリ層、富裕層。 高級レストランに行けば、英語で会話しあう家族が一家団らんを楽しんでいる光景をよく見かけます。 大学教授のような知識階級の英語力も相当なものです。僕はs政治の授業を履修していましたが、担当の教授はアメリカでの実務の経験もあり英語はペラペラ。速すぎて聞き取れず、かなり苦い思いしました。特に若い教授よりベテランのほうが一般的に格式の高い英語を話します。 逆に最も通じないのは、低所得者、あるいは地方に住んでいるフィリピン人でしょう。 貧しい人、例えばストリートチルドレン(家のない子供)などは、十分な教育機会が与えられていないので、もちろん英語は話せません。(これがまた彼らの将来に対する障害になるのですが・・。) また田舎の方に行けばいくほど、英語通用度が下がっていきます。これは英語の必要性の問題でしょう。(日本の地方では方言が使えれば、標準語が使えなくても事がすむのと同じようなものでしょうか。) 一般的に「英語が話せる=インテリの証明」のような考えが強いように感じます。ビジネスや政府機関では英語が喋れて当たり前。社会で成功するために英語が欠かせないフィリピンでは、高い英語力が保持されるのも当然といえるでしょう。 <英語の危機> しかし最近はこの英語に異変が起きているようです。フィリピン人の「英語力の低下」の問題が大きく取り上げられています。 86年の政変以降、教育においてフィリピノ語重視の傾向が強くなったことは前回書きましたが、どうやらそれが若者の英語力の低下に拍車をかけてしまう結果になったようです。 NGOで働く知人が話すには「以前はニュースなどの多くは英語で放送されていたが、最近はフィリピノ語がほとんどになってしまった。ちょっと問題だね」とメディアの影響も指摘していました。 確かに大学の講義では「英語のみ」と言われていても、特に感情的な時や、ユーモアを交えてこたえたい時など、生徒の多くはフィリピノ語を使ってしまいます。 フィリピノ語重視が問題ではなく、財政難が教育に影響を及ぼしているとも聞きます。 公立学校教師の給与は低く、優秀な人材は私立などに流れていってしまうため、多くの子供たちによい教育の機会を与えられていないようなのです。 最近こんなデータが明らかになりました。フィリピン教育省が全国の高校教師7000人を対象に英語力評価試験を実施した結果、合格ラインを突破できたのはわずか30%だったということ。 フィリピンでは最近の人口増加と教師不足で、午前・午後の2部制を採る学校も多く、子供が理解するだけの教育がなされてるかも疑問です。 国を担う次世代を育てる教育という現場にも、フィリピンの財政難の問題が大きく影を落としてしまっている様子。 日本もそうだが、英語が出来るからフィリピンに投資する外国企業も多い。なかなか貧困から抜け出せないフィリピンから、「英語」という強力な武器が無くなっていくことは将来に大きな影響を及ぼしてしまいかねない。問題は深刻です。 <柔軟な学生たち> フィリピンの英語事情について書いてきたが、「フィリピノ語の浸透」と「英語の衰退」というジレンマがありました。どちらを切れるわけでもなく、かなり問題は複雑。でも僕は友人のこの言葉からヒントを得たように思います。 「英語とフィリピノ語を両方使うのは大変だよね?」と尋ねると、彼女は「外国から来たアイデアや技術を学ぶのは英語の方が合っている。でもフィリピンの文化にはフィリピノ語で考えてるよ」。さらりと言っていた。 国や社会はどちらが衰退しても問題視するが、若い人たちはどうやら上手くそれぞれを使い分けているようです。フィリピン人というアイデンティティーを強く持った国際人へ。今の学生は現代に柔軟に対応した考え方をもっているように感じました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 22, 2005 02:24:00 PM
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