|
カテゴリ:おススメ!!
2回にわけてレポートしてきた‘じゃぱゆきさん’規制の問題。今回がラストです。
<じゃぱゆきさんの現実> 「フィリピンで働いても月1万ペソ(約2万円)程度。就職口が見つかるとも限らない。でも日本なら月10万円は稼げる。家族は安心して暮らせるわ」と話すのはベイビーさん(36)。日本に15回の渡航歴を持つ。今はプロダクション側で人材の育成を手がけるというベテランの彼女だが、それでも前回は渡航申請が却下され、再度許可を申請している最中だという。彼女はこうも言っていた。 「今は家族への送金で精一杯。お金を貯めてビジネスをしたいんだけどね」。 じゃぱゆきさんたちの多くは、後にビジネスを起こすことを目標としている。実際に日本やフィリピンでお店を構え、成功する人もいる。彼女たちにとって、自立するための資金稼ぎでもあるのだ。 こう書くと「日本は稼げるから来る」ように思ってしまうだろう。だが、それだけでもないようだ。 「日本以外の国では働けないの?」と聞いてみると、「エンターテイナーが稼げるのは日本ぐらいしかない。この道が絶たれると、もう職につけないわ」と真剣な表情で訴えかえてきた。 アメリカや中東、東南アジアに‘メイド’や‘船員’として働きにいくことの多いフィリピン人たちだが、‘芸能人’としての働き先のほとんどは日本である。逆に言えば、「‘フィリピンパブ’を望んでいるのは、日本人男性の方」ということもできるだろう。 今まで需要があると思って、芸能人としての道を選んできた彼女たち。日本が芸能人受け入れを制限してしまうと、彼らの就職先はほとんど無くなってしまうのだ。 他の職につけばいいと考えるかもしれない。だが日本に来る芸能人は地方の貧しい家の出身者が多い。そんな彼女たちにとって手に職をつけるのも楽ではない。「ダンススクールに通うのも金銭的に大変」と話す子もいた。せっかく磨いた歌やダンスの才能が職に結びつかなくなるということは、彼女たちにとって自立して生活する道を困難にしてしまう。ITエンジニアや医療従事者、経営スタッフとして出稼ぎに行くフィリピン人もいるが、彼らは恵まれた家庭で育ち高等教育を受けた、ごくごく限られた人々なのだ。 「ODA(政府開発援助)によりインフラ整備を進めても、多くの国民は恩恵を実感できない。だが日本で働く芸能人による送金は社会の底辺にまで直接届くODAのようなものだ」。こう指摘するのは比芸能人業界団体の副代表だ。(「まにら新聞」より) 確かにフィリピン人と話していて驚くのは‘じゃぱゆきさん’の多さ。「私の親戚・娘も日本でエンターテイナーをやってるよ」という言葉をこれまで何回もきいた。 これほどまでフィリピンに強い影響力をもつ‘じゃぱゆきさん’。ずっと道を開いてきた日本が、急に方針転換をすることは、‘草の根の経済援助’を断ち切るのと同じことだろう。 <彼女たちの人権を侵しているのは誰か?> 「あなた結婚してるの?私を奥さんにしてよ!そうすれば日本に行けるから!」 そう言い寄ってきたのはピンキー(21)。日本を夢見て、ダンススクールに通っている最中に今回の問題に直面した。もちろん冗談半分の言葉だが、それほど彼女たちの訴えは切実だった。 これまで芸能人受け入れ制限に関しレポートしてきたが、多くのフィリピン人エンターテイナーの生の声をきいて、僕はこんな疑問を感じずにはいられなかった。 それは「彼女たちを追い込んでるのは誰?」ということだ。 日本政府は一部の悪質な人々による‘売春’や‘不透明な入国制度’を日本社会から根絶しようとするあまり、「すべての芸能人たちの生活を脅かす」という選択をしていた。 芸能人業界団体も然りだ。業界内の不正な部分をなくすべきだと主張するものの、「5年間の猶予」を求めるなど、「出来る限り現状を維持しよう」という感は否めない。 両者とも、‘じゃぱゆきさんとその家族’の生活を、一番に考えてるようには感じないのだ。 そしてもう一つ大きな疑問がある。それは、僕たちのじゃぱゆきさんたちに対する一種の偏見だ。 ‘じゃぱゆきさん’を養成するお店のオーナーに話を聞きに行こうとした時の事。興味があるだろうと思い、同じ留学生友達の女の子を誘った。だが、彼女は行くことを怖がった。 どうやら「じゃぱゆきさんは夜の商売をする汚れた人」という印象を持っていたようだ。 しかし迷った挙句、同行した彼女はお店のじゃぱゆきさんと一番話しこんでいた。そして「思っていたのとぜんぜん違う。いい人たちね」と一言。 一緒にデモに参加した女の子も、「自分たちの生活が懸かっているのはわかるが、やっぱり風俗産業。そこで働きたいと訴えるなんて、日本人では考えられない」。こう話していた。 日本ではフィリピンパブは風俗産業・水商売と思われている。でも彼女たちはホステスではなく芸能人として働きにきているのだ。(法律では、一緒に食事に行く「同伴」はもとより、「接客」も禁止されている。) この誤解・偏見が、彼女たちの立場を一層困難なものにしているのではないだろうか。「風俗で稼ごうとする外国人は規制されて当たり前」というように。 今のままの方針で最も打撃をうけるのは紛れもなく‘じゃぱゆきさん’自身だ。彼らの生活も立ち行かなくなる。「売春という人権侵害」を廃絶する名目でことは進められているように見えるが、逆に彼女たちの「基本的な生活を送る権利」が軽視されている気がしてならない。 「大事なひとは誰?」と問うと、例外なく「家族」を真っ先にあげるフィリピン人たち。家族の幸せのために必死の‘じゃぱゆきさん’は、そんな心優しいフィリピン人の典型だ。 希望を抱いているだけで、まだ何もしてはいない彼女たちの将来を制限するのではなく、「違反者を厳しく取り締まる」という対策へ。そして私たちも日比交流において重要な役割を果たしてきた彼女たちを改めて見直すという姿勢を持つことが必要だと思う。 彼女たちの人権を第一に考えた政策を、日比双方がもっと模索していくべきではないだろうか。<終> キャンドルに灯をともし祈る‘じゃぱゆきさん’たち お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[おススメ!!] カテゴリの最新記事
|
|