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昨年末、豪雨災害にあったケソン州。現地の状況を伝えるレポート第二弾です!
倒壊したリゾートビル。ここでは28人が亡くなった。 2.ケソン州レアル町の被災状況 インファンタ町からトライシクルで北上すること15分。人口29000人のレアル町は東側を海、西側を山に囲まれ、ビーチリゾートがあることでも有名な町だった。だが、今はその面影はない。国道を挟み、急な山の斜面沿いにあったビーチは土砂や流木で埋まり、黒く染まっている。海水も未だに濁ったままだ。 この豪雨で同町の被害は死者241人、行方不明者22人、怪我人150人、全壊した民家1054件にのぼっている。(1月27日現在 同町役場調べ) <‘奇跡’と呼ばれた子どもに出会う> 「11日間ずっと望みを失っていた。でも娘の無事を知った時は本当に幸せだった。神に感謝したよ」。 3歳の少女ら4人が、全壊した3階建てリゾートビルの中から11日ぶりに救出され、世間を騒がせた事は記憶に新しい。現場だったティグノアン地区に立ち寄った際、偶然にも少女の父親メルビンさん(30)と話すことが出来た。災害にあった状況をこう話す。 「バランガイ(最小行政区)から知らせがあり、午後6時くらいに家族でビルへ非難したんだ。その時点ですでに胸の辺りまで水がきていた。私は偶然にも7時45分すぎに外の様子を確かめるためビルから離れていて助かったんだよ。逆にビルに非難していた妻と子ども両親は生き埋めにあってしまったんだ・・・」。 土砂で倒壊した三階建てビーチリゾートは一時非難場所になっていたため、被災当時150人以上の人が中にいたという。全壊した結果、108人が犠牲になった。その中にはメルビンさんの両親と23歳の妻、そして9ヶ月だったもう一人の子も含まれている。 漁師だったメルビンさんは舟が壊れてしまい失業中だという。山中にあった家も流され、今は親戚の家に身を寄せている状況だ。 これほど大きな被害を受けた彼だが、政府からの補償はないようだ。その理由は「補償をもらうためにはIDや婚姻届など様々な証明書が必要だが、すべて流されてしまい申請できない」とのこと。国の社会福祉制度、緊急事態の対応の悪さに呆れてしまう。 「政府は600万ペソを住宅建設にまわすと豪語しているが無理だろう。せいぜい100万ペソくらいかな」。メルビンさんは皮肉そうに語っていた。 奇跡的に生還した娘のステラマリーちゃんはというと、すっかり元気になり、オママゴトで遊ぶ姿があった。だが僕たちが近づくと大泣きしてしまう。フィリピン人の子供にしては珍しい。 長く閉じ込められていた恐怖、その後の執拗な取材、そして母を失ったこと・・・。この3歳の小さな女の子が受けた精神的ショックの大きさを改めて感じた。奇跡的に助かったとはいえ、心の傷が簡単に癒えることは無いだろう。僕はマニラから持ってきたお菓子を父親に託して現場を後にした。 メルビンさんが手にするのは「奇跡の救出劇」の写真。国軍のカレンダーになっていた。(でも発見したのは民間人) 100人以上が亡くなったリゾートビルのあった場所。 山の木陰に葬られた犠牲者。未だに発見されない遺体も多い。 <自然災害ではなく人災?> 「違法森林伐採が被害拡大の要因だとされ‘森林伐採の全面禁止’が主張されている。だが、それでは山でもともと木を切り生活の糧にしていた人が収入源を失うだけだ。防災のため住民の居住地を変えられたらいいが、町内で比較的安全な場所は少なく難しい。すべての地域に川があり、今回のような豪雨の場合、洪水などの影響は避けられない」。 地域の開発計画を担当するレアル町役場のエドガルドさん(52)はこう話す。自然に囲まれた地域の防災対策の難しさに頭を悩ませていた。 彼の話しにもあるように、‘違法森林伐採’が災害を引き起こした原因として、強く非難されている。だが、単にこれを禁止するだけでは解決できない複雑な事情が絡んでいるようだ。この問題について少しレポートしたい。 ケソン州は住民の半分以上が何らかの形で違法伐採に関わっているといわれており、また地元の有力政治家などが関与しているため、摘発も長く難航してきた。 アロヨ大統領は被災直後、「今回の大災害の責任を負うべきは違法伐採業者。彼らを徹底追及する」と表明、「全国的な森林伐採の全面禁止」と「ケソン州全域での伐採許可取り消し」を命じた。 そして先日、環境天然資源省は‘森林再生後に優先伐採を住民に許可すること’を条件に地元住民に協力を要請。ついにケソン州の違法伐採業者の告発にまで踏み切った。大統領は強い権限を使って一気に問題の解決に踏み切ろうとしている。 だが、JICA(日本国際協力機構)から天然環境資源省に政策アドバイザイーとして赴任しているHさんはこの方針に反論する。 「大統領の主張する‘何も切ってはダメ’という処置では効果がない。当分の間、伐採できない木を誰が植えるのか。植えた木には伐採許可を与えたりするなどの選択的な禁止でなければ、住民から反発が大きく実現は難しい」。 そしてこうも付け加える。 「ケソン州は森林の減少が急速に進むフィリピンにおいては緑が多い地域。はげ山になっている山はほとんどない。今回は局地的な豪雨だったという自然災害の側面も大きい。これまで土砂災害がある度に政府は全面禁止を主張してきたが、細かい事情を考慮しないで、極端に政策を決めていたことが、災害を防止できなかった原因でもあるのでは?」 ところどころ崩れ、地肌が見える山。被災2週間後の様子。 <援助資金は届いているのか?> 前述のレアル町役場に勤めるエドガルドさんが、復興に必要な資金を計算していたので教えてもらった。 「インフラ整備5000万ペソ」・「農家や漁師に対する産業補助8000万ペソ」・「自然回復のための環境整備500万ペソ」・「孤児や被災者に対する援助150万ペソ」で、総計は約1億3650万ペソ(約2億7000万円)だということだ。 だが、現時点での公式な資金援助は、政府(大統領災害基金)からの200万ペソ(約400万円)のみ。不十分なことは明白だ。 「キリスト教団体などからも援助を約束されたが、突然中止してきたところもある。あては政府が海外から受けている救援物資や資金提供だが、今のところ我々は資金を直接受け取っていない」と彼は不満をもらしていた。 しかも政府は支援物資の供給を1月14日を最後に止めてしまい、今は近隣の自治体から食料を援助してもらっている状態だとも話してくれた。 慢性的な財政難で海外からの援助に頼るほかないようだが、これらの援助が被災地のために有効に活用されるかどうかも彼の話を聞いて疑問にる。インフラ整備のためにJBIC(国際協力銀行)などから受け取る資金を水増し請求するなどの疑惑もあるフィリピン。緊急時に単に資金を提供するだけではなく、使用用途の明示を条件にした援助も必要に思える。 <テントの中を覗いてみる> 「一つのテントで家族8人が暮らしている。食料も少ないけれど、最も問題なのは仕事、家の援助がないこと。5ヵ月後には長屋が立つ予定だといわれたが、どうなるかわからないわ・・」。 レアル町のセントラルスクールでは、校庭の片隅に数個のテントが張られ、豪雨被害により家を失った被災者たちが暮らしていた。テント内の4畳ほどのスペースには生活用品が並ぶ。ほとんどの家族に小さな子供がいる様子だった。 被災後の住宅事情は地域によって大きく異なるようだ。土砂で埋まってしまったが、早くも建て直しが進む光景を町の中心部ではよく見かけた。だが山間部や被害の大きい地域になると、手がつけられない状態だ。新たな居住場所を探さなければならないが、やはり資金などの面で難しい。 先日、社会福祉庁、赤十字や非政府組織などが協力して住宅支援を進めるという報道を目にした。具体的な政策がようやく動き出したようにみえる。 だがその内容は、「被害のひどかった地域に今年6月までに2500戸、年末までに4万戸建設をする」という極めて限定的なもの。しかも遅い。 これから迎える乾季を前に、テント生活者が過酷な生活を強いられることは避けられないように思える。<続く> テント生活を余儀なくされる被災者たち。それでも笑顔を見せてくれた。 12月中旬は落ちていた橋(上)。1月末には仮設の橋が出来ていた(下)。急ピッチで進む町の復興。 次回はケソン州の中では貧しい地域とされる、ジェネラルナカール町です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Feb 11, 2005 02:15:36 PM
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