「お母さん、どうしたいですか?」
修平君のお母さんに聞かれ
「連れて帰りたい・・・」
そう答えるのがやっとでした。
「じゃあ、瑛美ちゃん仙台に帰りましょう」
本来であれば、嫁ぎ先である福島に帰らなければならない娘を
彼のご両親は私達の気持ちを尊重し仙台に帰ることを許してくれました。
私と夫である修平くんと一緒に娘は仙台へと向かいました。
家には私の友達や、旦那の部下が娘を待っていてくれました。
リビングに続いた小上がりの和室に娘は浴衣姿で横になりました。
顔の絆創膏も頭の頭巾も痛々しかったけど、穏やかに眠っているような娘でした。
泣いていたのか、笑っていたのか、自分がどういう状態であったのか
覚えてはいません。
そんな状態の中で、葬儀屋との打ち合わせが苦痛で・・・ほとんど参加していなかったと思います。
彼のご両親が娘のために結婚式で着るはずだったウェディングドレスを
買い取って来てくれました。
納棺師の方が着せてくれて、娘は棺に入りました。
顔の傷も綺麗にしてくれました。
娘の幼馴染みが美容師で、ウィックを付けてヘアメイクをしてくれました。
「綺麗だね・・最高にお姉ちゃん綺麗だね」
静かに寝息を立てているように穏やかな顔です。
「良かったねぇ・・ウェディングドレス着れて・・・」
だけど、娘は答えてはくれません。
修平君はただ、愛おしそうに娘の顔を撫でていました。