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想い出は心の宝石箱に。。。

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2023.11.13
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カテゴリ:創作
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                             第十三章 

 

 

  アカデミーでの仕事は、日本文学の紹介と翻訳であった。

  川端康成がノーベル文学賞を受賞して以来、欧米では日本文学への関心が高まって

 いた。
特に、欧州へ留学経験のある、夏目漱石や森鴎外が人気があったが、最近は

 大江健三郎
とか村上春樹が注目を浴びていた。


  黒田は、イギリスのD・H・ロレンスの小説<チャタレー夫人の恋人>の研究に

 没頭して
 いた。戦傷で半身不随になった貴族を夫にもつコンスタンスの、森番

 メラーズとの不倫の恋
の物語である。近松門左衛門の世界になぞらえ、女の情念と

 不倫関係を、比較的に論じて
みたかった。

 

              




  新しい職場での仕事は、それなりに興味深い。

   しかし、異国での生活と孤独感に苛まれていた黒田に、体調と精神の変調が

 訪れていた。


   夕暮れを迎えると、( わんばんこ!! )という冴子の声が聞こえるような

 幻聴に囚われ、
そして激しい頭痛に襲われたのであった。


 特にひとり身で、週末を過ごす事は辛かった。若ければ各地を物見遊山で、観光

 でもするの
だろう。50歳を越えた黒田は、むしろ近くの公園を散歩し、草花に

 触れた方が癒された。



  季節は既に冬を迎え、よどんだ空の色が黒田の心をさらに、暗欝に塗りこめて

 いった。
コートの襟を立て行きかう人々の中で、異邦人としての意識が日増しに、

 閉塞感を
与えていく。周囲からは理解しがたい、黒田の言動が最近は、目につく

 ようになってきた。

 

          

     Kensington Gardens

 

 

  ツアー旅行団体客で、機内は満席。腹のせり出た冴子にとり、エコノミークラスの

 狭い
座席は、ひどく苦痛であった。見かねたキャビンアテンダントが、ビジネス

 クラスの
空いている座席に、二人を特別に移動させてくれた。


 梨華は、初めての飛行機旅行に、大はしゃぎである。騒ぐたびに、周囲のビジネス

 マン
の顰蹙をかい、冴子は道中身の細る思いであった。

 

 

   undefined



  ヒースロー空港からは、リムジンに乗り換え、ロンドンの中心街へと向かう。

  黒田は、はたして、何と言うだろうか?


 ( 黒さん、とうとう来ちゃったよ。)


    と、告げたら。それは、おしかけ女房のようで、よく考えてみればあまりにも

 大胆な
行動であった。

 
 ( ママ~~~!。 見て、見て・・・・事故だよ!! )

             

  車の事故現場で消防士

 


 黒田はヒースロー空港に向けて、高速道路を走っていた。

   ただ、車を無性に運転したいという、衝動にかられて。ジャガーのスピード

 メーターは、
150KMを越え180KMを指していた。浮遊感が黒田をシートから

 押し上げ、カーブを
切るとそのまま外へ、もっていかれそうな気がする。


 直線に入ると、さらにアクセルを踏み込み、200KMまで加速した。

  途端に、車体がスピンした。

 

 

        Car Crashing into Delivery Truck

 


  ( 黒さん、とうとう来ちゃったよ。)


    と、遠くで聞こえたような気がする。
 

 冴子の明るい屈託のない声が、線香花火の如く一瞬の輝きを増し、ぽとりと

 暗闇の中へ落ちて消えた。



 走る犬のgifアニメ走る犬のgifアニメ   ==つづく==   走る犬のgifアニメ走る犬のgifアニメ走る犬のgifアニメ

 

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Last updated  2023.11.13 12:01:56
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