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想い出は心の宝石箱に。。。

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2023.11.22
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カテゴリ:創作
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                                第一章

 

 

  梨華は雪降る、大通り公園を歩いていた。

  毎年2月初めになると、札幌では雪と氷の祭典が開催され、日本全国や海外から

  200万人
を越える、観光客が訪れる。


   通りのあちこちに雪像が倒立し、街角の屋台からはとうもろこし
を焼く香ばしい

   匂いが、冷気の中に漂っていた。

 

           大通会場全景(第58回・2007年2月12日)

 


   梨華は今日の演奏会に、思いをはせていた。
        

   札幌交響曲楽団との共演が、自分の納得のいくものにならなかった事を・・

 指揮者はベテランの尾高だというのに。


  コンサートの演目として、梨華自身がショパンのピアノ協奏曲第一番を選んだ。

   ショパンはその生涯において、ピアノ協奏曲は2作品しか残していない。 第一番は

 ショパンがウイーンへ向けて、旅立つ告別演奏会で彼自身が初演した。


 ロマン
チックな情念と創意に溢れる第二番と比較し、ワルシャワへの告別と

 新たな飛翔が、
その曲に込められていると言われている。

 

     

   第一楽章はオーケストラの壮大な主題提示があり、そして満を持してピアノが

 入る。

     

 

    梨華が情感豊かに表現し、また大胆なテンポで演奏しようとするパートと、尾高の

   指揮とのずれが恒に感じられた。


   リハーサル段階ですでに尾高とは、曲の解釈に根本的な違いがあった。梨華は

 詩的な
第二楽章を、美しい春の月光に照らされた夜のような音楽と解釈した。

 その曲想に基づく
梨華の斬新的な演奏方法に対し、尾高はオーソドックスな

 表現を主張した。

           

  この微妙なずれは、演奏している者だけにしかわからない。

     演奏終了後( ブラボー!!ブラボー!! )という称賛と、聴衆の

 スタンデイング
オベイションによる拍手が、会場の隅々まで響き渡った。しかし、

 梨華にとってそれらは、
虚しい響きにしか聞こえなかった。

    

 

    photo


  赤いネオンに彩られ降る雪が、20数年前のおぞましい記憶を、梨華に蘇らせた。

  父が身重の母を殺害し、そしてその父も、その場で自殺したという。あの晩も

   ロンドン
では、今日のように激しい雪が降っていた。

 

   冴子の叔母夫婦には子供がないこともあり、梨華は彼等に引き取られ、札幌で

   育てられる
ことになった。両親の衝撃的な死を、眼前で見せつけられた梨華は、

   その精神的ショック
から他者とのかかわり合いを一切拒み、無感情・寡黙という

   自閉症のような、幼少期を
過ごした。


   人々との感情的な交流を避け、自分だけの世界に閉じこもり、そして時々被害

   妄想に襲われる。

   


  
Woman playing the piano
   

 そんな孤独な梨華の心を、なんとかして開かせようと・・・・

 ある時叔母は梨華をピアノ教室に通わせ、それ以来鍵盤と梨華の対話が始まった。

   冴子の
遺伝子を引き継いだのか、梨華のピアノに対する才能は、年と共に急速に

    開花していった。


    特に、楽譜から曲想を考え、そしてそれを独自の速さ、強さ、そして音色で

    表現する感性が、
常人とは全く違っていた。

 

    
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  高校生の時、ポーランドワルシャワで開催された、ショパン国際ピアノコンクール

  に応募し、
史上最年少で梨華は優勝の栄誉を得た。同コンクールは、エリザベート

  王妃国際音楽コンクール、チャイコフスキー国際コンクール
と並び、世界三大

  コンクールの一つで、国際的ピアニストへの登竜門である。


 
 走る犬のgifアニメ走る犬のgifアニメ   ==つづく==   走る犬のgifアニメ走る犬のgifアニメ走る犬のgifアニメ

 

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Last updated  2023.11.22 12:16:35
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