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カテゴリ:アメリカ文化を考える
「SiCKO」
「シッコ」という響きは誤解を誘うが(笑)、「病人」を意味するスラングである。 マイケル・ムーアがアメリカ医療問題を扱うこの話題作を映画館で観た。 アメリカのビジネススクールでヘルスケアマネジメントを学んだ私は、医療の世界にもマネジメントの概念を導入することに納得する一方で、この国の医療制度が抱える矛盾をさまざまな場面で感じてきた。 だからこそ、マイケル・ムーアがアメリカの医療制度をどのように描写するか、かなり興味を持っていた。 う~~~~む、傑作だ! これから観る方々のために、いや、観てもらいたいからこそ詳細には触れないが、他国の比較を通じて先進国で唯一「国民皆保険制度」を採用していないアメリカの問題点を深く考えさせてくれる映画である。 『華氏911』の時ほどではないにせよ情報に偏りを感じる場面もあったが、医療保険会社が患者を選別する様子がリアルに伝わってきて怖い。。。 ちなみに、私が主に留学中にこのブログで取り上げてきたアメリカ医療制度の問題点は、医療保険を持たない今や5,000万人にのぼる「無保険者」についてであった。(この日記の最後に過去日記のリンク一覧を載せたい) 一方、「SiCKO」で描かれているのは健康保険を持たない人々(uninsured people)ではなく、なんらかの医療保険に加入していながらも充分な医療を受けられない人々(under insured people)である。 つまり、一口に医療保険と言っても医療保険会社(HMO)や掛け金の多寡により多様なメニューが存在し、安い保険であればどこの病院でどんな治療を受けられるかが給付の点でかなり限定されてしまうのだ。 「どこの医療機関でも(Free Access)、質の高い医療を(High quality care)、支払い可能な範囲の料金で(Affordability)受けることができる。」 万国共通のこの願いはどうすれば実現できるのだろうか。 この映画を観れば日本の医療制度も素晴らしいものだと感じるかもしれない。 しかし、少子高齢化が進み医療費が上昇の一途をたどり、診療科や地域による医師の偏在といった問題を抱えている我が国の医療も取り組むべき問題は山積みだということも日本人として意識したい。 このドキュメンタリーを観たアメリカ国民がどのように反応するか、注目したい。 なんて書きながらもすでに反響の大きさを感じる記事を映画鑑賞前に読んでいた。 ( 「MICHAEL MOORE'S "SICKO" BROAD REACH AND IMPACT EVEN WITHOUT THE POPCORN?」Kaiser Family Foundation ) それにしても、「SiCKO」を観たアメリカ人がフランスやキューバに移住したなんてニュースがそろそろ聞こえてきそうだな・・・・(苦笑)。 ---------------- 参考リンク ・ 「シッコ」公式サイト ---------------- マイケル・ムーアの前作、「華氏911」をアメリカで観た時の日記 ・ 2004-07-06- 「華氏911」鑑賞と金魚たち返還の会 ---------------- 過去のブログからアメリカ医療について触れたものをいくつか ・ 2004-06-25- シンプソンズとアメリカ医療 ・ 2004-07-09- 26日間の入院で5百万円以上の請求・・・ ・ 2004-07-16- 救急車はまだ呼べない ・ 2004-09-10- 高騰を続ける医療保険料:NPOの発表を聞いて ・ 2004-09-28- 4470万人の無保険者・・・:アメリカの抱える重要課題 ・ 2004-10-12- 自己破産の原因の二位は医療費・・・:アメリカ市民への脅威 ・ 2004-12-05- あるべきJustice(公平)とは?:アメリカの医療保険を巡る論争 ・ 2005-01-29- 病院のM&Aは患者への脅威なのか:非営利病院でも・・・ ・ 2005-01-31- 「帝王切開の方が儲かるから・・・」:お医者さんはそんな風に考えるのか!? ・ 2005-02-02- 患者は、医者は、そして国は何を望む?:みんな贅沢ばかり言って! ・ 2006-02-27- アメリカも国民皆保険に!?:その逆の現象もあり得るのだ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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