長男、親知らずの穴に泣く
10日に埋状智歯の切開抜歯手術をした長男。「麻酔が残ってぼ~っとしてた」と言い訳していたが、実の所、医師が指定した抜糸の日を勘違いしていた。(麻酔でぼ~っとしていると頭の日付変更線にも狂いがでるものか?!)長男は何故かこの時再来週20日の火曜日だと思い込んでいた。本当は13日の火曜日だったのだ。これが長男には親不知手術後悲劇の頂点の原因となる。外見の腫れは思ったよりは目立たなかったけれど完璧に忘れていた抜糸予定の日になると腫れも痛みもピークで熱が出て来た、オマケに気の毒なのは「今まで口の中は血の味だったけど、膿ではない別の異常なほどのドブ臭い味とヘンな臭いに変わった!!」(私にはドブ臭い味というのが理解できない味だが)と、訴えてきた。痛みと以前より倍増した臭い。手術前よりも状態が酷くなっている事は確かだ。「いくら傷口を縫っていても隙間から食べかすだの入れば、 歯磨きが届かないんだから多少は臭ってきてもしょうがないよ、 だって抜糸は来週なんでしょ」(私も詳細は知らなかったのでそう応えていた)しかし、さすがにこの暑さで回す扇風機の向こう側でおしゃべり男の長男が言葉を発すると私の鼻先まで異臭が届くので多少の苦情が口からこぼれてしまう。「私はなったことがないからわかんないけど、歯槽膿漏のニオイだと 思っていた臭いがする~、スーパーのレジのオバちゃんとか すれ違ったオジサンとかからたまにする臭いだよ」(ホントは何の臭いなんだろう・・・)長男曰くその臭さの原因は浸出液とかいうのも関わっているそうだ。親不知が病に陥ってからというもの、長男は親不知専門家にでもなったかのように専門用語を用いては自分の最悪な状況を事細かに説明する。ネットで調べれば親知らずで苦労している人のブログやらその相談を無料で受けてくれる太っ腹のお医者もおられる。処方された薬だってどんなだかわかるし、コチラはそれを見て自己判断し易くなる。。。便利な世の中だ。で、浸出液とは、傷の表面からにじみ出る透明あるいはやや黄色の液体で中には傷が治るために重要な物質がたくさん含まれている。様々な種類のサイトカイン、細胞成長因子が含まれ、傷の治癒段階に合わせて血小板や線維芽細胞、表皮細胞などが順序良く増殖・遊走するようにコントロールする重要な役割を果たしている。白血球やマクロファージなどの免疫細胞が含まれ感染の防御をしている。浸出液が分泌される事で創傷面の湿潤環境が保たれ、傷の修復に必要な細胞がスムーズに移動する事が出来るので、傷の治癒が早まる。傷が正常に治るためには浸出液の分泌が必要不可欠だ。浸出液はある程度臭うが、腐敗臭はしない。(と、タマタマ見た「ぢ」のHPにも書いてあった)抜歯の穴からは傷を治そうとする浸出液が出ているのは当然だ。ある程度臭う浸出液と、縫い合わせた隙間から穴に詰りに詰った食べかすのせいか?まだ腫れているのか?見せてもらうとプックリ膨らんでいる。奥歯を噛みしめるようにすると生ごみ味?!(腐敗臭)のするヘドロ状のものが出てくると言う。あまりの術後の経過の酷さに嘆きつつ、ふと思い立って、病院から渡された次回の診察日時の紙を見て驚愕した長男である・・・抜糸予定でもある診察日を3日も過ぎていた。(たまにココゾという時にポカをしでかす長男だ)で、本日6日遅れの抜糸となった。医師の手により抜歯穴は糸から解放、清掃洗浄されて吐き出したヘドロの中に肉塊らしき異臭物がいくつか転がっている。手術した時の歯肉の残りか?!とも思ったが心当たりがある長男だった。手術の当日「朝食は必ず食べてくるように」という支持があったにもかかわらず人生初の手術前の緊張からか?!睡眠不足の上、食欲不振でおにぎり1個しか食べず、術後に病院で出された昼食はお粥と海苔の佃煮で、さすがに夕食に家族が食べるミートドリアを横目で見ながらお粥をすするのが嫌な長男は「俺、意地でもミートドリア食べるから。だって嫌だよ 今日ロクなもん食べてないんだからっ!」術跡に沁みるはずであろうトマトソースの酸味に必死に耐えながらも痛みより食欲が勝って食べてしまった。その時のミートドリアの挽き肉が抜歯穴の奥底にあったのだ。臭くならないワケがない!なにしろタンパク質はウ〇コで出ても臭かったりするじゃない、動物性タンパクである、ドリアの挽き肉が縫った穴の隙間からもぐり込み悪さをしていたのは確かだったのだ。酷い臭いと生ゴミ味の苦痛から解放された長男は清々として帰宅。医師からは今後、親不知の穴と戦う武器を拝領(レンタル)された。 曲がった針のついた注射器である。コレで食後に親不知のブラックホールに水を注入して食べかすを追い出すのである。そうした後、歯磨き及びリステリン等で口内洗浄すればあ~ら不思議!爽やかな口腔内となって今までの苦しみは何処に?!となるわけである。長男がいい年こいた在宅学生で良かったと思ったのはこの時で。お客商売や営業なんて他人と対面する仕事に就いていたら迷惑を振りまきながら、苦痛を抱えつつ仕事をしなければならない。口臭を気にしながらの日々はストレスとなり挙句の果てに待ち構えるものを想像すると悪寒走りがする。今は1日も早く親不知のアトに肉が形成されてくれることを望む長男。たまに口に出すのは、「あ゛~!!もう親不知の手術なんて絶対やらないッ」である。しかし、長男の口腔内には静かに眠る親不知がまだ3本ある・・・