長男、17年目にしてわかった病名【後編】
● ● ● ● ● ● ● 前日の続き● ● ● ● ● ● ● ●20日、横浜のアパートから行きつけの病院まではなんとか自力で行くと言う長男。「膝が曲がらないから階段があると大変なんだ。 杖ついたお年寄りの方が道歩くのが早いんだよ」なんて、移動の途中に携帯に電話が入った。診察して貰うのは以前、巨大親不知の抜歯手術をした病院だが、そこの形成外科に行く事にした。最寄り駅からは歩いて700m程でさほど遠くはないのだがそれは健常者の足で言えばなのでちょっと心配になる。数時間して初診が済んだとの連絡があったので車で迎えに行った。「やっぱりレントゲン撮られただけで、専門外らしくて ろくに診て貰えなかったんだけど、 滅多に見られない足みたいだから医者から看護師まで凄く珍しがってた。 22日なら専門の先生がいるから再診して貰うことになった」そして22日、朝9時から専門医の診察が始まった。検査の合間に電話連絡が入り長くかかりそうなのと既に病名が検査をする前にわかった事が長男の口から告げられた。最終的に終わったと連絡が入ったのは午後4時だった。血液採取・CTによる血管造影検査等が行われた様で17年前は入院しなければならなかった血管造影だったのに今回は大腿部の付根ではなく、腕から投薬して日帰りとのことで驚きだった。おまけにアレルギーが起きて湿疹が出たので点滴をして、2時間睡眠を取ってきたという。たまたま行ったこの病院には非常勤ながら血管外科の専門医がいてたいがい他の病院から紹介されて受診する人が多い中、偶然にもその先生に自ら遭遇できたというのも、他先生達に驚かれたという。で、その専門医が検査をする前から分かったという長男の病名は、クリッペル・トレノニー症候群(Klippel-Trenaunay Syndrome)=KTS ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●どんな病気なのか長男が病院で検査している間、ネットで調べてみた。クリッペル症候群には2種類あってもうひとつはクリッペル・ウェーバー症候群というのがある。2種を合わせてクリッペル・トレノニー・ウェーバー症候群とも呼ぶ様だ。トレノニーは静脈の異常で主に下肢に、ウェーバーは動静脈奇形があり主に上肢に多いとされている。その症状は○生まれつき四肢の広い範囲に血管腫がある○その側の四肢の肥大や長さの延長がみられる○そのため成長とともに脚の長さが徐々に違ってきて歩行障害などが起きる○骨や軟骨の肥大、血管の異常○まれに血管腫のできた側の手、足の先天異常(多指・合指等)を伴うクリッペル・トレノニー・ウェーバー症候群は混合型血管奇形と呼ばれる動脈、静脈、毛細血管、リンパ管のうちの複数の血管の先天性形成不全に含まれるカテゴリのひとつ混合型血管奇形とは体の広い範囲に腫れやアザが現れたり、激しい痛みを感じたり患部に衝撃が加わると、大量出血につながる可能性もあり異常な血管の組み合わせと発生部位によって色々な症状が発生する為、個別に対策も立てなければならない完治することはなく、障害も多いのに国が指定する小児難治疾患にも難病指定にもなっていない。ただ唯一、東京都のみがクリッペル・トレノニー・ウェーバー症候群においては難病指定されているだけだという。 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●長男の症状は○生まれつき片足の広い範囲に血管腫及びアザがある○成長とともに脚の左右の長さに違いが現れる(左足の方が細く長い)○特に膝に異常が起き易く、歩行困難・激痛が伴う 長男の場合はこれまで激しい運動・膝の無理な曲げ伸ばし長時間の同じ姿勢や足への圧迫を避けたりすれば痛みは最小限に抑えることができてきた。ただ、何故か冬場になると症状が悪化する傾向になった為十数年ぶりに医者に診て貰う気になったのだ。親子共に足の手術はできないものと、この17年間諦めていたがそれでもいつかは医療技術も進んで、厄介な病巣も無くしてくれる日が来るなんていう秘めた希望も多少は残っていた。でも、17年後の今分かったのは、自分の足が抱えていた病が難病指定もして貰えていない難病で完治する方法もないという現実「今更病名が分かったって、気に病んでもいられないよ。 俺にはそんな時間無いんだから」長男はそんな言葉を吐く。『例え、足が無くなって車椅子になったって 弁護士になる夢は諦めない!』病名がわかるずっと前から言っていた。だから勉強やその資金を稼ぐ為のバイトの邪魔を左足にいつも邪魔されるのが一番辛く、悔しい事だった。せめて痛みだけでも無くなって欲しいといつも、いつも思っていることなのだと思う。で、検査の後に処方されたのは、むくみを改善する漢方薬痛みを和らげる薬と、その薬で胃を痛めない為の改善薬それに、アメリカ製の弾力ストッキングセラフィットこれの太腿までのストッキング(4,000円)とハイソックス(3,700円)を渡された。四肢に病巣が存在するものは、弾性ストッキングなどで圧迫することにより血液の貯留が減少し、症状が軽くなる傾向にあるそうだ。で、コレがまた医療用っていうけど、こんなにキッツいのはいたら血が止まるんじゃないかと思うくらい圧縮したストッキングで、膝が曲げられない長男がはくのには手助けが要るし手助けする私も、どうやってつま先を入れてあげるの?!ってくらい力が必要だったけれど、何とか装着。と、装着して1時間もしないで現れたその効果に驚き、感動してしまった!それまで丸々膨れて膝頭が見えなかった左足だったのに見る見るうちに浮腫みが取れて、膝が曲がるようになった。歩くのは無論、階段の上り下りも見違えるほど楽になったという。このストッキングの存在を知ることができただけでも長男にはひとまずありがたい結果だった様だ。3月に病院での検査が再びある。横浜での生活が、問題なく過ごせることを願うくろすけ母である。