日本の桜のルーツ?!秋の桜出逢いを求めて熱海行【ヒマラヤ桜】
事の発端は、群馬に住む妹に四季桜(シキザクラ)の写真をラインしたことから始まった。妹からの返信の言葉に「何で寒いのに(桜の)花が咲くのか不思議ですね」とあった。日本人であれば普通、「当然桜が咲くのは春」と、思っているわけで。それが時期外れに咲くものがあれば「狂い咲き」とか「季節外れ」と言われたり。我が故郷群馬県、鬼石町には上毛かるたでも詠われ国の名勝・天然記念物の指定を受けた「三波石と共に名高い冬桜」が存在する。20年ばかり近隣に住んではいたものの、残念なことに一度たりとも出かけたことはない。この冬桜、1908年(明治41年)日露戦争の戦勝記念として当時の村長と村民が植樹。春に咲く桜と期待されていたものが、二割程が11月に開花、当時は、冬桜がほとんど知られていなかったので、冬桜を増やし冬桜の山にした・・・とか花の約3分の1が秋から冬、残りが春に咲く二度咲きの桜だという。因みに、秋から冬にかけて咲く桜には四季桜(シキザクラ)、冬桜(フユザクラ)の他に十月桜(ジュウガツザクラ)、子福桜(コブクザクラ)、不断桜(フダンザクラ)、アーコレード等がある。で、私がたまたま読み始めていた本「桜の来た道-ネパールの桜と日本の桜ー」染郷正孝著信山社出版(2000/03発売)の中で、遥か異国ネパールにも秋咲きの野生種ヒマラヤ桜、(標高1400メートル付近の首都カトマンズ)春咲きのヒマラヤヒ桜、ヒマラヤタカネ桜が存在することを知り、(高所2800メートルの寒冷地)何故桜には春咲きと秋咲きが存在するのだろう?なんて疑問に変わってしまったわけで。春咲きと秋咲きの桜の違いが桜(サクラ)そのものの進化に、また日本に咲く桜のルーツにも繋がっている?!なんて話で・・・何やら壮大な桜の世界に足を踏み入れてしまったことに驚いた季節外れの秋や冬に桜が開花する理由には、桜の進化の過程が関係していると考えられ日本に自生する桜たちの共通の祖先は、ヒマラヤにあった・・・ヒマラヤから分布を広げる過程で、日本の様に冷涼乾燥な冬がある地域で桜が開花する為に冬は休眠し、春に咲くという性質を取得し秋咲きから春咲きへと変化していった・・・日本で秋咲きのサクラが見られるのはそのルーツであるヒマラヤザクラがもともともっていたものが何かのきっかけで出てきた<先祖返り>?!・・・なんてことにつながって行ってしまった。しかし、私は肝心のヒマラヤ桜が咲くという、ネパールがどんな場所だか位置情報すら理解しておらず、せいぜい「日本より高い山があって、日本より寒くて、 桜なんて咲くようなイメージが全く無い」それこそ妹の言う「何で寒いのに花が咲くのか不思議」な場所だった。(で・・・ネットで拾ったネパール情報によると・・)そもそもネパールとは、インド(東・西・南)と中国(北)に接する西北から東南方向に細長い小さな内陸国。北部にヒマラヤ連山、南部にタライ平原と南北に大きな高度差(8,800m弱)がある。緯度は亜熱帯に属し、山岳地帯を除けば標高は1400~2000m程ネパールの気候は大きく6月~9月の雨期と10月~5月の乾期に分けられそれぞれの地点で気候が大きく違うヒマラヤのある北部・・・夏はとても涼しく、冬は極めて厳しい寒さ標高の低い南部タライ地区・・・夏は温帯~熱帯の気候、冬は比較的過ごしやすい盆地の首都カトマンズ・・・最暖月の平均気温は24℃、最寒月の平均気温は10℃ 一年を通して温度差は少なく、とても穏やかな気候これに対して日本は、春夏秋冬がはっきりしていて、一年でも最高と最低気温の差が30度以上ネパールと比べると、日本の方こそとても厳しい気候といえる・・・ラシイひとつでも知識が増えるのは有り難いことだけど私は、単に【桜の花が好き】ってなだけなので、サクラの専門家や研究者の世界に足を踏み入れ、サクラのルーツ、挙句DNA解析までした奥深~い情報を知りたいワケではない。遥か昔にロマンあるサクラの旅があった、野鳥が種を運び、落とした地に育ったサクラがまた・・・なんて思うくらいが丁度良い。で、単にヒマラヤ桜に興味をもった私なのだけれど染郷氏の著書にはヒマラヤ桜の写真が殆どと言いたいくらい無い!(カラーのアップは表紙の1枚、後は遠目の白黒数枚のみ)満開の桜を眺めるよりは、一枝に咲いた桜をじっくり見たい私としたら表紙のカラー写真1枚ではかなりの欲求不満状態だった。ネットで調べれば花の画像は見ることはできたが、「咲いてるヒマラヤ桜がこの目で見たい!!」ってな衝動が湧き上がる。染郷氏の著書によれば、熱海市の海を見渡す斜頚地にヒマラヤ桜の親木があるという。調べてみれば熱海に存在するヒマラヤ桜は(2019年11月現在)で本数全49本 ・熱海高校付近傾斜地(親木1本):熱海市上多賀 ・月見ガ丘公園(1本):熱海市下多賀 ・親水公園(2本):熱海市渚町親水公園第一駐車場脇 ・多賀中学校体育館脇(2本):熱海市下多賀 ・さくらの名所散策路(14本):熱海市上多賀 ・長浜海浜公園(29本):熱海市上多賀 (熱海市観光協会HPより抜粋)なぁ~んと!熱海に行けばヒマラヤ桜を見ることができる場所がこ~んなにあるのだ。因みに、熱海以外にも豊橋市普門寺、品川区立弁天通公園(荏原町)大阪府吹田市南高浜町の川園緑道、戸越公園東大(本郷キャンパス)、小石川植物園、新宿御苑、東京駅の北口付近、京都府立植物園、桂川堤防(鳥羽の大石付近)因島等などそれぞれ由縁あって存在するヒマラヤ桜達。早速、得意の思いつきで、欲求不満の解消と二つの確認をしたいが為、ヒマラヤ桜に逢いに熱海に行くことに決めた私であった(1泊2日の旅行記は別記とす)ヒマラヤザクラ posted by (C)くろすけcat【ヒマラヤザクラ】(Prunus cerasoides)とは東アジアに見られる落葉性高木桜の野生種のひとつ。インドのヒマーチャル・プラデーシュから中国南西部、ビルマ北部にかけての亜高山(1200m~2400m)に分布 花期:11月下旬~12月上旬花 :雌雄両性、濃紅色~桃色~白色 花径2.8~3.4cm 長く突き出る雌しべで蜜が多い 5~12輪ほどがまとまって咲く 花びらは散らず、花ごと落ちる。葉 :長さ8~12センチほどの細長い楕円形、互生、鋸歯実 :直径1~1.5センチで3~5月に熟し食用可能樹 :5メートル~30メートルの高木(原産地) 樹皮は艶が有り、凸凹が目立つ 材は緻密で丈夫、上質な芳香有(建材・工芸品・アクセサリーに利用)長浜海浜公園に咲くヒマラヤ桜 posted by (C)くろすけcat小田原駅から東海道本線で熱海駅へ伊東線伊豆急下田行きに乗り換え伊豆多賀駅で下車当初、熱海高校付近にあるという親木を目指すつもりだったのだけれど目の前に広がる真っ青な海と共に季節外れのピンク色が目に入り、思わず心躍って足早に向ったのは長浜海浜公園長浜海浜公園に咲くヒマラヤ桜 posted by (C)くろすけcat長浜海浜公園には30本近いヒマラヤ桜が植樹、しかし、ソメイヨシノの様に一斉に咲いている様子ではなかった。ほぼ満開に近いのが2本ばかりあったのでそれで十分満足。熱海高校のヒマラヤ桜は親木ゆえに高木であろうから至近距離での花の撮影は無理だと思っていたのでこんな近距離で見ることができるのは本当にありがたき幸せだ。ヒマラヤ桜は《開花後、不思議と花びらが散らない》著書にある確かめたいことのひとつだ。この日、この辺り、青空いっぱいのお天気なのに風速10m以上の風が吹き荒れて、桜の枝々が上下左右乱れ動いて落ち着かない。これだけ揺れ動いているのに花びらが一枚も散り行く光景を見ることがなかったのに感動した《開花後も全く散らないでドライフラワー状態になる》ココまでは確認できなかったけど・・・ヒマラヤザクラ posted by (C)くろすけcat染郷氏曰く、《ヒマラヤザクラの花はポタポタ多くの蜜を出す》著書にある確かめたいことのふたつめ氏がヒマラヤザクラの受粉作業をされた際に「頬やメガネにポタポタ落ちてきた」と記述されている。日本の桜で蜜を垂らす程の桜は無いそうだからこんな珍しいことを実体験できたらと、期待して行ったもののこのポタポタ現象は、叶わず。(染郷氏は小鳥飛び交う早朝の6時半からの作業だったらしい)やっぱ、早起きしなきゃダメか~??(私の来た時間は午前11時頃) しかし、雌しべからつながる子房を包み込む花托筒は別名花コップとも呼ばれ、蜜の溜まりどころだ。蜜を求めてやってくる鳥や虫たちに思う存分与えられそうなその花コップのぽっかり開いた大きな口からは子房まで見えてしまう。「頬やメガネにポタポタ落ちて」きそうな感じはじゅ~ぶんある。いつか体感できたらいいなぁ~(食いしん坊は桜の蜜に憧れる)あと目指すは3~5月に熟し食用可能だというヒマラヤ桜の実を食すことだな♪またいつか来なくちゃ~(本命はココだったり?!)(参考文献:近田文弘(2016)『桜の樹木学』技術評論社、79頁より)さて、この後静岡県立高校グラウンド下、網代の海を見渡せる小高い斜頚地にあるというヒマラヤ桜の親木にあう為、長浜海浜公園をあとする。(運動不足の軟弱化した身体にはちょいときついがせっかくのヒマラヤ桜の親木を目前に、花だけで満足して帰るワケにはいかない)ヒマラヤザクラ posted by (C)くろすけcatネット情報で植樹されている場所はおおよそ把握できたが立ち仕事ばかりで軟弱化した足のうえに若干、方向音痴も兼ね備えているので余計な歩数を歩いた挙句、ようやく辿り着いたヒマラヤ桜の親木は見頃もぼちぼち終りごろであった。おまけに逆光、高木、傾斜地帯に根を張っているので接触禁止の様子花は仰ぎ見ることしかできなかったがこのヒマラヤ桜の存在は貴重で、それを確かめることで私は十分満足だった。ヒマラヤザクラ親木 posted by (C)くろすけcat熱海のヒマラヤ桜の由縁1967年8月親日家であったネパールのビレンドラ皇太子が東京大学に留学した際、熱海植物友の会が桜と梅の種を献上し、翌年5月その返礼としてヒマラヤザクラの種子約900粒が贈られ、7月に熱海市下多賀の市営熱海農場で播種、育成した後約300本発芽、うち開花したのは60本。現存する原木は、県立熱海高等学校門前下に1本のみこの親木を主として、ヒマラヤに行かずしてヒマラヤに咲く桜を熱海各所でこうして見る事ができることに当時の熱海植物友の会の方々やビレンドラ皇太子、そして農場でヒマラヤ桜を育成した方達に桜好きとして感謝しかない。因みに東大(本郷キャンパス)にあるヒマラヤ桜は東京大学第一次インド植物調査隊が、キッシム王国のガントクにて1960年6月18日に採集した種子から育てられたそうである。因みに、因みに販売もされている♪【桜苗木】 ヒマラヤ桜(5寸鉢植え)ヒマラヤザクラ【庭木花木・桜・サクラ・さくら】価格:3080円(税込、送料別) (2022/1/4時点)ヒマラヤザクラ posted by (C)くろすけcat遠い異国ネパールにも咲くというヒマラヤ桜に思いを馳せる時・・・あんなにまで悲しく不幸な出来事が無かったら、もしかしたら親日家で桜が好きだったというビレンドラ国王は再びこの地に訪れることがあっただろうか?たまたま出逢った仲睦まじそうなご夫婦もヒマラヤ桜をわざわざ車で見に来たご贔屓さんの様だった。「今年の桜はどうですか?」なんて聞かれたり。国王ご夫妻もご健在であったらこんな風にされていたのかもしれない。ヒマラヤ桜を眺める posted by (C)くろすけcat