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カテゴリ:詩、散文 創作物語
まだ明るいうちから酒瓶を抱えた男達がそこに向かう 山間に畑を作り麦や薩摩芋、川から水を引いて田を作り米も作った。 山の前方は海が広がつている 農業の傍ら漁にも出る。 酒瓶を抱え向かっている先の村長は朝から忙しい下男に言いつけ 川に出て鰻を獲って蒲焼をせっせと焼き酒宴が始まるまでに作らせる事にしていた。 何故か空が機嫌が悪い 「ごろごろ」と鳴つている。 村のおかん達も何がそこで行われるか当然知っている おかん達は家にある野菜や魚で酒の肴を作って持たせたりもする。 大広間が障子で分けられている。 村の男の殆ど全員が集まると 村長の挨拶で宴が始まった。 『今日は寝ずにずぅーと此処で飲み明かそう寝る者が出たらひっぱたいて 起こしたれよ』 障子を外し男達が車座になるとちようど納まる広さ 持ち寄った魚や野菜の煮ころがしがに箸が進むと 外で焼く鰻の匂いが漂い始めていた。 『おーい、はよう持つてこんかいな』『何を言つてんだ』 「朝まで起きてなきゃーいかんのに。あわてんな馬鹿たれめ』と軽口をたたく下男 酒が廻り始めると 作物の出来 漁の自慢話それぞれ 話が盛り上がる 勿論男達の女房の話は当然のように 『お前の女房はよう働き 夜の仕事も立派なもんよのー』「ほれぼれする尻しとる」村長が ある男に言う 男は笑って答える「村一番は言いすぎだわい」 まわりの男も皆声を立てて笑う、エロ話が酒盛りでは華やかだ 酒の肴が無くなる頃には焼き立ての鰻が運ばれ 事前に用意された花札が出て来る。 酒の弱い何人かは小銭を出し始めて 村の隅から隅まで家の中の出来事が話題にされ公開される 夜中を過ぎると『ごろごろ鳴っていた』空から 音を伴う大粒雨が降り出していた。 花札賭博をしていた連中に酒癖の悪い源平(げんべい)と言う男が声をあげて怒鳴りだした。 男達も馴れたもので気にもかけない 村長が声をかけた「今日は何の日か知つとるじやろが」 村長の一言で源平は気まずそうに下を向いた。 「夜明けまでもう少しだ」 「仲良せにゃーなー」 鶏が鳴いて 外は白々と明け始め夜中の雨も止んでいた。 男達は満足そうに 「今年も良い報告が届いたろう」と」 一年に一度 天の神様に各個人の善悪を報告される日 寝てしまうと其のまま天の神様に報告が(特に悪い報告) 行つてしまうので 寄り集まって寝ないで朝を迎える というのだ。 それぞれが帰路に向かう頃 田のあぜ道で大きな声で 「源平が頭から田に落ちたぞー」と 声がする。 そのころ女房達はとっくに起きている。 「源平」はどうなつたのかって? 源平の墓はあるが 田に転落したのが原因でなくなったのかは わからずじまいだ。 著自然の狩人 mamhayato 再記載 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012年11月07日 18時03分22秒
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