テーマ:短編小説を書こう!(490)
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せみが鳴いている。クマゼミだろうか、ワンワン鳴いてうるさい。
数を数えてみると、案外少ない。あいつもこっちを見ているようで、見てると鳴き止む。 夏休みも8月を越えると、本番のような。慣れがあるような。 だから、毎日が夏休みなのが普通になっちゃう。 今日は家に誰もいないから、電話をかける。 「よう、今日はなにしてんだよ~。」 「そっちこそ、何してんの。どこにもいかないの?遊びに行こうよ。」 「とりあえず来る?誰もいないからさ。」 数分のやりとりをして、すぐ電話を切る。 長電話なんて、バカのすることで俺は電話なんてしない。会いたいときは会いに行くほう。 昼でも、夜でも、出かけて、あいつの部屋に石を投げる。 あいつが顔を出す。 「あんたさ~、こないだわざと間違って妹の部屋に石投げたでしょ。」 「もう、最低ー。」 「いなかったからいいけど、いたらどうするのさ?」 「そりゃ、同じことするよ。」 「信じられない!バカ!」 あいつが来た。表で待っとけって言ったのに、なんでのこの部屋まで入ってくるんだ? 「来たよ~。なんだ、まだそんな格好でいるの?」 「うるさいなあ、ちょっと待っとけ。」 あいつはベッドに座って待ってる。 「これさあ、どうだったけ。」 「知るかよ、数学なんて自分で解けよ。俺に聞くんじゃあねえ。」 「でな、こうなるだろ。次はこいつをこっちに持ってきて。。。」 「後は、この数式に入れるだけ。なっ、簡単だろ。」 「やっぱり、ちゅーちゃん頭いい~。」 「うるさいの、どおでもいいんだから。そんなの。」 おまえさあ、、、、 黙ってじっと見る。(そんなつもりなかったのに。。。) (朝、自分でしたんだぜ。俺。ばっかみたいじゃん。) 最期にシャワー浴びて、出かける。単純に計画的わなに落ちただけ。(男って。) 面倒だからタクシーで市内の公園に出かけた。 そこは江戸時代からの古い公園で、重要なんとかに指定されているらしい。 夏だから観光客も結構来てる。外人もちらほら歩いてる。でっかい背中。ランニングシャツ。 やっぱり外人は女でもすげーや、と思った。 入場料を払って公園を歩く。松の木があり、塀があり、庭園がある。 宝物館があったから入る。「宝物じゃないじゃん、近所のおっさんの作品だろ、これ。」 「全部、値札ついてるしさ。」「いいじゃん、すっごいきれいだし。」 「違うだろ。俺はさ、むかしむかしの宝物がいいんだよ。」 「鎧とか兜とかあるだろ。身震いするような真剣とかすごいぜ。」 空が急に暗くなってきた。 「雨降るんじゃない、急ごうぜ。」 「だいじょうぶだって。いつもそんなんだから。降らないわよっ。」 すこし降り始めたころ、公園の外に出て、甘味茶屋に入る。 「お汁粉飲んでたら、雨も止むと思うから。」 「そうね。わたし白玉にしようっと。」 「おばちゃん、ビールと灰皿。」 「わたし。取ってきてあげる。」 ビールを飲む。汁粉を飲む。タバコを吸う。外を見る。大雨になってきた。 外は暗くて、まだ夕方なのに夜みたいだ。 旅館の建物が雨にけぶる。明かりがついて、木造3階建ての建屋がうかぶ。 これって、宮崎駿のお父さん、お母さんがブタになる映画あったじゃん。 あの風呂屋みたい。。。そうひとりで思った。 甘味茶屋の窓を開けてみる。 雨が降っている。池の水面をいっぱいたたいている。 少し明るくなった。でもまだダメだ。 この店に入ってくる人も、濡れて入ってくるひとが多い。みんな傘を持っている。 さっきまで、誰も傘なんて持ってなかったと思ったら、結構みんな持ってる。 店を出ようとしたら、兄ちゃんが手に傘を3本持って飛び込んできた。 「お姉ちゃん、傘要らない?1本200円だから、買いなよ。」 「買おうか。」「買おう。」 「じゃあ、1本ちょうだい。」 「2本じゃないの?」 「いいの、一緒でいいでしょ?」 (別に、2本買えばいいのに。高いもんじゃないのに、、、女ってなあ。) 雨は未だ降っている。 向かいの商店街に向かって歩く。このあたりはアーケードは無い。 通りには、水たまりがところどころにある。それを避けながら二人で歩く。 小さい衣料スーパーに飛び込む。2階建てになっていて、やたらポスターが貼ってある。 1Fを見回す。Tシャツいくらだ?げえっ、高いじゃん。 2Fに上がる。一回りして、もう降りる。 外の通りに出てタクシーを待つ。 みんな待ってる。観光地だからぼちぼちタクシーが入ってくる。でも客が乗ってる。 雨のなか、傘を差して待つ。そのうち来るだろうと思う。 気長に待つ。タクシー待ちの人たちが来ては、いなくなる。通りを歩いていく。 あいつを後ろから抱きかかえて傘を持つ。 これって「あすなろ抱っこ」って言うんだよな、と思いだす。 別に俺。このまま待っているので、十分しあわせかもと思う。 こいつ、もう一度、俺んち来ないかな?と思ったりする。 結局、30分ほど待ってもダメ。 バス停で、適当に乗り込む。市内を家の方向にさえ行けば、後は、タクシーでいい。 バスはどのみち、俺んちの方面はないから。 バスに揺られる。道ばたには傘を差して歩いてる人。 カッパ着て、自転車で走ってる高校生。 もうネオンが光ってる。 夜になったんだ。 夏の雨の雨宿り。公園に遊びにきたのか、雨宿りに来たのか。 どっちでもいいや。 「じゃあね。ちゅうちゃん、わたしバイトあるから。」 おいおい、勝手に来て、勝手に行っちゃうのかよ。と心の中で少し思った。 あの傘は俺の手にある。 あいつは要らないって言ってた。 どうすんだ。家にはいっぱいあるんだぜ。 おわり。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.08.11 18:45:20
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