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ロドリゲスとらのこども・超克編

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2007.10.12
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 ≪歴史的に固有な関係の台湾≫

1972年9月30日午後、田中角栄元首相と大平正芳元外相は、日中国交正
常化を果たして北京から帰国した。その同じ日に、佐藤栄作元首相の時
代に内閣官房に組織され、当時は外交一元化ということで外務省に移管
されていた国際関係懇談会が開かれていた。

この懇談会は、日中関係をどう形成すべきかを議論するための一種の諮
問機関であり、亡き高坂正堯教授(京都大学)と私が最年少ということ
で幹事を仰せつかっていた。

この会合に大平外相を羽田空港に迎えたばかりという、法眼晋作外務次
官が出席され、開口一番、「今回の日中国交は100点満点どころか120点
をつけられる」といわれた。私は唖然として大きな違和感を覚えたこと
を思い出す。

私を含む国際関係懇談会の多くのメンバーは、佐藤首相も考えていたよ
うに、日中国交は時代の流れとして不可避だが、日本にとっては中華民
国=台湾との関係という歴史的にも様々に固有な関係があるので、この
点をしっかり考慮して禍根を残さないようにすべきであり、一挙に日中
国交を実現して急旋回することは避けるべきだという方向に議論が進ん
でいた。

それだけに、マスコミに煽(あお)られたかたちでの田中首相主導の拙
速外交に私は異を唱えたのである。

 ≪国威発揚イベント続く中国≫

あれから35年、日中関係は緊密化したが、台湾問題の存在とその重要性
は変わっていない。この35年間を振り返ってみると、日中国交正常化
以来、日本が中国に対してとってきた態度は、日本側が常に低姿勢で中
国側に対応するという、まさに「朝貢外交」ともいうべきスタイルだっ
た。

このような“対中国位負け外交”から脱することが日中関係の長期的展
望においては是非必要だといえようが、安倍前首相の訪中時にも見られ
たように、このところ日本の対中外交のスタイルには印象的な変化が見
えてきている。

なぜそれができたのか。その理由のひとつは、従来、対中関係を一手に
仕切ってきた外務省のいわゆるチャイナスクールによる関与がなくなっ
てきたからだといえよう。

一方、中国側も江沢民時代のように歴史認識の問題や「靖国」の問題で
かたくなに突っ張ってばかりいられない様々な事情を、現在の胡政権は
抱えている。

それは中国国内に噴出する社会問題だ。今、中国で起こっている恐るべ
き貧富の差、農村・農民の問題、環境問題、エネルギー問題、拝金主義
(向銭看)と汚職の問題などは、「改革・開放」体制下の経済成長至上
主義による深刻な負の遺産であり、国内の不満も極限的に高まっている。

これらの不満は、この10月中旬に開かれる中国共産党第17回大会での
「科学的発展観」といった改善策の提示ではとうてい解消しないであろ
う。

当面は2008年の北京オリンピック、09年の三峡ダムと上海-重慶間のス
ーパーハイウェイの完成、10年の上海万博といった国威発揚の大イベン
トを次々に成功させる以外にない。

それには、地理的、金銭的、技術的と3つの面で、日本の協力を是非必
要としているのではないか。だからこそ日中外交は、「靖国」を不問に
付して次の新しいステージに入ったとも言えるのだ。

 ≪日本の主体的行動が必要≫

現在の東アジアの情勢を見るにつけ、北朝鮮問題以上に重要なのが「台
湾問題」である。台湾の次期総統選挙は08年3月に行われる。ここが1
つのポイントだ。

国民党が再び政権を握れば、第3次国共合作ということもありえよう。
民進党が選ばれて、中華民国という国名に固執せず台湾のアイデンティ
ティーをさらに強めれば、中国は反国家分裂法をたてに軍事行動を起こ
すかもしれない。

そのような事態を避けるために、日本はどのような外交展開をすべきか、
これは極めて重要かつ切実な課題である。

最近の中国は、台湾問題についてますます強硬になりつつあり、「台湾
は中国の一部」という主張をさらに強めている。

一方台湾においては、中華民国ではなく台湾の名称で国連に加盟すべき
だという世論も高まっている。

潘基文国連事務総長まで「台湾は中国の一部」と発言したことに関して
は、日本をはじめ米国やオーストラリアの外交当局が国連決議(2758決
議)でさえそんなことは認めていないと国連に申し入れたが、

歴史的に固有な関係ばかりか、日本の国益にとってもきわめて重要な台
湾の問題に関しては、日本こそが米国やアジア諸国に呼びかけて、主体
的な行動をとるべきだと私は考えている。

(なかじま みねお)国際教養大学理事長・学長

産経新聞【正論】日中国交正常化35年
2007.10.8 03:03 より転載





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最終更新日  2007.10.12 16:36:46


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