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きまじめ読書案内
「さらば、在日日本人 祖国を忘れし者に告ぐ」 (展転社、2001年、2000円)山下正仁著 今の日本人に欠けているものを総合的に診断 この本の著者は、21世紀初頭、日本人が一億総痴呆ブタ状況とな ってしまった元凶は、占領軍が日本人から魂を奪い取るべく占領政 策を行ったこと、また日本人が敗戦による精神的ショックから立ち 直っていないため、その状況を正していないことにあると見ている。 敗戦以来、「命あってのものだねだ」というブタの思想とも呼べ ない思想がまかり通るようになってしまった。自分の信念も思想も なく、ひたすら経済的利益のみを求め、アメリカを怒らせないこと だけに気を使い、自分の考えというものを持たないゾンビになって しまった。 腑抜けになってしまった日本人には、神を畏れ敬う信仰心が欠け ている。また、親戚や近隣や職場の人との人間関係を築く意欲や能 力も失ってしまった。さらに、地理上の発見以来、西洋が他地域を 植民地化した歴史認識や、その中で明治維新から大東亜戦争敗北ま での日本人が独立を保ってがんばったという歴史観も欠けている。 要するに感性にも知識にも欠損がある重症なのだ。 著者は、「戦後」、「近代主義」、「国益」、「歴史観」、「国際 社会と戦争」を論じ、さらに「憲法」と「教育」にも論及する。 日本国憲法と大日本帝国憲法を比較して、憲法典としては日本国 憲法に不備が多くあることを指摘した後に、憲法をどう変えるか、 どのような条項を付加するかではなく、今の日本国憲法には何が足 りないかを考えてみようという現実的な提案をしている。憲法論議 は、概念的で地に足のつかない議論が多いなかで、注目すべき提言 ではないか。戦後民主主義という思想の、欠落するファンクション やバグを認識し、それにパッチをあてる作業こそ、第一に行われな くてはならないのだ。 また、今の教育は、あれはダメこれもダメと否定することばかり で、子供たちにニヒリズムを教えていると指摘する。そうではなく て、自分を取り戻し、生きがいを実感すること、偉人の生き様を学 ぶことなどを通じて美を感じる感受性を育み、人生においては感動 を求めなければならないのだと主張する。やはり日本人を取り戻す ためには、教育から改めるしかないのだろう。 こういう本を待ち望んでいた。日本人を回復するためには、まず 日本人が何を失ったかを知らなくてはならない。本書はそれを実に わかりやすく提示してくれる。議論の対象が多岐にわたっているに もかかわらず、引き込まれて読んでしまうのは著者の日本への思い の深さゆえであろう。「素人であるがゆえに大局を素直に見渡した 」と著者のいうとおりの本である。 ちなみに「在日日本人」とは、日本に住んではいるがまだ日本 人になっていない我々のことを指す。(得丸久文、2002.02.03) http://www.asahi-net.or.jp/~VB7Y-TD/k4/1402142.htm お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.04.25 20:42:30
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