シェールガス革命
米国で開発したシェールガスがいろいろなところに影響し始めている。もちろん、米国のエネルギー政策は大きく変更する方向である。中東の石油の重要性が減り、米が外交の自由度が増したが、財政問題で軍事費削減をせざるを得ない。中東から撤退して、アジアに重点を置くことになる。シェールガス、シェールオイルは世界の政治を変えるインパクトがある。 0.はじめにシェールガスというのは、頁岩(シェール)層から採取される天然ガス。従来のガス田ではない場所から生産されることから、非在来型天然ガス資源と呼ばれる。アメリカ合衆国では1990年代から新しい天然ガス資源として重要視されるようになった。また、カナダ、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアの潜在的シェールガス資源も注目され、2020年までに北米の天然ガス生産量のおよそ半分はシェールガスになると予想する研究者もいる。2000年代に入ってから水圧破砕によって坑井に人工的に大きな割れ目をつくってガスを採取する技術が確立し、更に頁岩層に接している坑井の表面積を最大にするために水平坑井掘削技術という技法で10,000 フィート (3,000 m)もの長さの横穴を掘ることが可能となった。これらの技術進歩の結果シェールガス生産量が飛躍的に増加しシェールガスブームが起きた。このため、米国は2009年、世界最大のガス生産国となり、ガス相場は下落し、現行のガス価格4.18ドルは原油では1バレル当たり約24ドルに相当することになる。原油が100ドルであることを考えると石油の1/4である。このシェールガス技術である水圧破砕で、シェールオイルという石油も採掘ができる。この開発も始まっている。その内、石油でも生産量が米国トップになる可能性がある。というように、シェールガス革命は、石油にも反映されることになる。その中心的な技術が、水圧破砕である。米国やカナダが当分、開発の中心になるため、米国・カナダが石油輸出国のトップになる可能性が高い。ロシアを抜いてLNG生産量1位になっているが、石油でもLNGと同じように世界的な位置が変化することになる。これができると、バイオエタノールや海底油田からの石油は採算が合わなくなるし、石油価格が下落することになる。この頁岩(シェール)層は、日本にはないので、今までどおりにシェールガス・石油も輸入するしかないが、輸入先として米国、カナダ、オーストラリアなど太平洋シーレーン諸国になり、中国海軍増強での競合やソマリア海やマラッカ海峡の海賊などの問題がないことで、シーレーン防衛が出来安いなど安全保障上の問題が少ないことになる。また、太平洋のシーレーン防衛を日米豪で分担できる。1.米国の中東政策変更今までは、石油などエネルギー資源の枯渇が21世紀の大きな問題であり、そのため米国は自国資源を温存して、中東の石油の安定的な確保を目指してきた。しかし、自国で今までとは違う資源が利用できることで、中東の位置づけが変化している。中東戦略の変更が、この数年を見ると出ている。今までは石油安定供給を優先して、非民主的な王政独裁体制を容認してきたが、石油という資源の安定を必要としなくなることで、民衆が求める民主化を推進できることになる。国が混乱して石油が生産できなくとも、米国への影響は少ない。国際戦略コラムより転載http://www.asahi-net.or.jp/~VB7Y-TD/230522.htm