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カテゴリ:いろいろ
土の匂いと、血の匂いがしていた。
俺はどうやら薄暗い穴の中にいるようだった。 がやがや周りが騒がしい。 蒸し暑い。体があちこち痛い。 あご紐が邪魔だ。擦れて鬱陶しい。 あご紐? 俺はヘルメトを被っている。 そうだ、指揮をとらなきゃ。俺は指揮官なんだ。 俺の部隊はどうした? 体調が悪い時、 よくこんな夢をみる。 南の戦場の夢だ。 俺のじいさんはルソン島で死んだ。 砲兵隊長だったそうだ。 戦争未亡人となり、 ばあさんは戦後まもなく再婚した。 既に死んだじいさんとの間に出来た、 連れ子の娘が一人いた。 その娘の子が俺だ。 俺はばあさんに愛されて育った。 今思えば偏執的ともいえる愛情だった。 とっくに成人していたある日、 ばあさんから見せてもらった 実のじいさんの写真。 こっそり大事に仕舞っていたんだろう。 年月を経て茶色に変色した写真に焼きついていたのは、 軍服を着て口ひげを生やした 俺にそっくりな男の姿だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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